
フリーランスの社会保障の基礎を頭に入れましょう!
サラリーマンと比べたときのポイントは4つ。
- 「健康保険」は保障が薄い
- 「年金」は保障が薄い
- 「雇用保険」がない
- 「労災保険」がない
つまり、フリーランスの社会保障はサラリーマンよりも弱いのです。
※この記事では、社会保障の内容を、できるだけわかりやすく紹介しています。概要をイメージしやすくお伝えするため、細かな部分で正確性や網羅性を欠くことがありますが、ご了承ください。
目次
フリーランスの社会保障
国民健康保険(国保)
フリーランスの、ケガや病気を保障してくれるのが国民健康保険です。基本的に強制加入で、フリーランス自身が保険料を全額負担する必要があります。
①国民健康保険の保障内容
フリーランスが国民健康保険から受けられる保障は、
- 病気・ケガなどの保障
病院での診察・投薬・処置代などの負担額が2~3割に軽減される - 入院時の保障
入院中の食事代などが軽減される(1食数百円程度の負担) - 医療費が高額になったときの保障
医療費のうち、一定額を超えた部分が払い戻される - お葬式代の保障
亡くなったとき、喪主に葬祭費が支給される(数万円程度) - 出産育児の保障
出産したとき、出産育児一時金が支給される(40万円程度)
などです。
※制度上は、運営する市区町村の任意となっています。しかし、実際に支給のあるケースは少ないようです。フリーランスの出産に関する社会保障に関しては、厚生労働省に対する署名が14,000名分も集まっています。
②国民健康保険に関する負担の内容
負担(保険料)に関して、ポイントは3つです。
- 保険料は全額フリーランス本人の負担
- 専業主婦も子どももそれぞれ保険料が必要
- 基本的に市区町村ごとに運営されているので、保険料・保障内容(金額など)が市区町村ごとに違う
サラリーマンが独立してまずビックリするのが国保の保険料の高さ。国民健康保険計算機というサイトがあるので、試しにシミュレーションしてみて下さい。
ざっくり、年収500万円/妻・子どもの3人家族で、年間保険料は40万円です。なんと、稼ぎの1割弱...
国民年金
フリーランスの、老後の生活を保障してくれるのが国民年金です。日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は強制加入で、フリーランス自身が保険料を全額負担する必要があります。
①国民年金の保障内容
フリーランスが国民年金から受けられる保障は、
- 歳をとったときの保障
保険料を納めた期間+特別に免除されていた期間などが10年以上だと、年金が支給されます - 障害の状態になったときの保障
障害等級1級・2級であるとき、年金が支給されます - 稼ぎ手である親が亡くなったときの保障
要件を満たした人が亡くなったとき、その子どもや子どものいる配偶者に、年金が支給されます
などです。
②国民年金に関する負担の内容
負担(保険料)に関して、ポイントは5つです。
- 保険料は全額フリーランス本人の負担
- 専業主婦にも保険料が必要
- 保険料は月額16,490円(平成29年度以降)
- 早めに納付したり、まとめて前納したりすると割引がある
- 保険料が払えない人に対する免除制度あり
※日経新聞「平均寿命、男女とも過去最高更新 女性87.14歳 男性80.98歳」より
とはいえ、今後は①給付額の減少、②支給開始年齢の繰り下げが見込まれています。70歳支給開始で82~83歳でモトがとれるようになるとの試算もあります。状況は悪くなっています。
介護保険(40歳以降)
フリーランスが、介護を必要としたときの保障してくれるのが介護保険です。40歳以上の人は強制加入で、フリーランス自身が保険料を全額負担する必要があります。
①介護保険の保障内容
フリーランスが介護保険から受けられる保障には、
- 40歳以上で、一定の病気によって要介護・要支援状態になったときの保障
- 65歳以上で、要介護・要支援状態になったときの保障
があります。
具体的には、要件を満たした人が
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 訪問介護
- 通所介護
- 短期入所生活介護
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 車いすのレンタル
- 家に手すりを取り付ける費用の補助
などを、1~2割の自己負担で利用することができます。
②介護保険に関する負担の内容
負担(保険料)に関して、ポイントは5つです。
- 保険料は全額フリーランス本人の負担
- 40歳以上が加入
- 専業主婦にも保険料が必要
- 市区町村ごとに運営されているので、保険料が市区町村ごとに違う
- 65歳までは国保と一緒に納める。65歳からは年金から天引きされる。
違いを知って理解を深める!サラリーマンの社会保障
健康保険
サラリーマンの、ケガや病気を保障してくれるのが、健康保険です。フリーランスでいう、国保にあたる役割です。
フリーランスの国保との違いは、大きく4つ。
- 保険料の半分は、会社が負担してくれる。納付の手続きも、会社がやってくれる
- 配偶者・子ども・親・兄弟などでサラリーマンに扶養されている人は保険料無料
- 病気・ケガ・出産で仕事を休んだときの収入減が、傷病手当金・出産手当金で保障される
- 健康保険組合(会社ごとに決まる。運営元。)によっては、高額な医療費をさらに支給するオトクな制度もある(付加給付といいます)
厚生年金保険
サラリーマンの、老後の生活を保障してくれるのが、厚生年金保険です。フリーランスでいう、国民年金にあたる役割です。
フリーランスの国民年金との違いは、大きく3つ。
- 保険料の半分は、会社が負担してくれる。納付の手続きも、会社がやってくれる
- サラリーマンに扶養されている配偶者は保険料無料
- 厚生年金に加入すると、国民年金+厚生年金保険の保険料を払っていることになる
→保険料も受け取る年金も、国民年金より多い!
会社は、サラリーマンを雇うのに必要なお金として、社会保険の会社負担額も計算しています。つまり、会社負担の社会保険料は、もし厚生年金の制度が無ければサラリーマン自身が受け取れるはずのお金だとも考えることができます。
厚生年金は「保険料の半分を会社が負担してくれる」ことになっていますが、会社負担分も含めて全額自己負担と考えるとトータルでは払い損になる可能性が高いです。
介護保険
サラリーマンが、介護を必要としたときの保障してくれるのが介護保険です。これについては、サラリーマンもフリーランスも同じ社会保障が適用されます。違いは主に1つ。
- サラリーマンの介護保険料の半分は、会社が負担してくれる。納付の手続きも、会社がやってくれる
雇用保険
サラリーマンが、失業したときの保障をしてくれるのが雇用保険です。フリーランスには、これにあたる社会保障はありません!
雇用保険に加入していると
- 失業したとき
- 育児休業したとき
- 介護休業したとき
などに手当を受け取ることができます。
労災保険
サラリーマンが、業務上の出来事や通勤などでケガ・病気・死亡したときの保障をしてくれるのが労災保険です。
フリーランスのケガ・病気・死亡は、(業務との関係にかかわらず)基本的には国民健康保険や国民年金でカバーされます。
サラリーマンだけが受けられる保障には
- 休業の保障
ケガ・病気で会社を休んだとき、給料の8割程度が支給される - 障害が残ったときの保障
障害の程度に応じて、年金や一時金が支給される - 介護が必要になったときの保障
介護の費用の一部(または全部)が支給される - 遺族への保障
配偶者・子ども・父母などに対し、年金や一時金が支給される
などがあります。
主要な違いの比較
※参考:Rhytmoon「【フリーランスと社会保障①】なぜフリーランスの社会保障は手薄いのか」
結局、年収500万円で妻子がいるフリーランスさんは、
- 国民健康保険で年間40万円
- 国民年金で年間40万円
- 介護保険で年間数万円
- さらに所得税・住民税
がかかります(概算です)。手取の割合は70%後半なので、実はサラリーマンの負担額と見た目的には変わりません。それなのに保障が少ないですから、だいぶ不利に感じますね...
参考:フリーランスには社会保険料/税金をコントロールする余地がある
何もかも不利に見えてしまうフリーランスの社会保障ですが、フリーランスは「経費」をうまくコントロールすることで保険料や税金を下げることが可能です。
- 国民健康保険
- 介護保険
- 所得税
- 住民税
いずれも、「所得」をベースにして保険料/税金が決まります(※所得とは収入から経費を差し引いたものです。)。つまり、経費を計上して所得を減らせば、社会保険料や税金を下げることができるのです。
- 経費のコントロールを上手にできるフリーランス
- 経費のコントロールが下手なフリーランス
この2者では、お金の苦労で「天と地の差がつく」ということは認識しておくべきことだと思います。例えば、経営セーフティ共済という制度を利用した場合、掛金は経費になります。貯蓄しつつ節税が可能です(取引先の倒産に備えられる)。
まとめ:フリーランスの保障は薄い!自分で対策しよう
今の社会保険制度は、サラリーマンに比べ、フリーランスの保障は薄い仕組みになっています。
フリーランスは、社会保障の薄い部分を、自分で対策する必要があります。具体的な方法は、以下の3点。
- 少ない年金&退職金を、iDeCoと小規模企業共済でカバー
- 休業/業務上のケガや病気/配偶者への保障の無さを、厚めの貯金でカバー
- 失業時や収入減に対する保障の無さを、コミュニティでカバー
iDeCoに関する詳細は、後日別記事で改めて説明したいと思いますが、結論から言うと、手数料最安クラスの楽天証券で着実に積立ていくのが良いでしょう。
節税しながら資産運用することができ、効果大です。
自身の社会保障の内容はよく理解したうえで、「足りない分」をどう補うか、考えていきたいところです。以上、「【フリーランスの社会保障】サラリーマンと比べて違いをチェック!」でした。
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