こんにちは、こぱんです!
リベ大では、正しい節約と節税で支出のバランスをコントロールする「貯める力」に関する情報も発信しています。
▼図解:貯める力
日本は社会保険制度が充実しています。
会社員の場合、社会保険の健康保険や雇用保険にある傷病手当金や失業給付といった制度によって、ケガや病気による失業のリスクへ備えることが可能です。
そこで今回の記事では、会社員における失業リスクに対する備えとして役立つ制度を解説します。
- 失業リスクに備えられる制度
- 失業保険を受け取るための具体的な手順
失業した際に使える制度を知っておけば、いざという時でも慌てることなく冷静に次の行動に移れます。
目次
解説動画:失業保険を2年6ヶ月もらう方法【お金を"貯める"】
このブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
失業リスクに備えられる社会保険の制度
まずは、社会保険にどんな保険が含まれているかを確認しておきましょう。
社会保険には、狭い意味(狭義の社会保険)と広い意味(広義の社会保険)があります。
→ 医療保険 + 年金保険 + 介護保険
→ 狭義の意味での社会保険 + 労働保険(雇用保険 + 労災保険)
冒頭でも紹介したように、失業リスクに対しては、健康保険の「傷病手当金」や雇用保険の「失業給付」が役立ちます。
傷病手当金
傷病手当金は、ケガや病気などで長期間働けなくなった場合に支給されます。
▼図解:長期間働けない時の補償制度
- もらえる金額:月給の約6割
- もらえる期間:最大で1年6カ月
例えば給与が30万円の人であれば、月給の約6割を最大1年6カ月もらえるため、約324万円が受け取れます。(30万円 × 0.6 × 18カ月 = 324万円)
さらに、1年6カ月後もケガや病気で働けない状態で、障害が残っていると判断されれば、障害年金を引き続き受け取れます。
障害年金に関しては、以下の記事で解説しているので参考にしてください。
失業給付
雇用保険の被保険者が失業した場合にもらえるお金が失業給付です。
▼図解:失業リスクを見直そう
失業給付は、以下の条件を満たすことで受給できます。
- ハローワークで求職の申し込みを行い、働く意思があるにもかかわらず、職業に就けない状態であること。
- 原則として、離職日以前の2年間に、雇用保険の加入期間が通算12カ月以上あること。
受給額は「①賃金日額 × ②給付率 × ③所定給付日数」で計算されます。
具体例で確認してみましょう。
想定条件
- 年齢:35歳
- 就業年数:13年間
- 退職前6カ月の賃金総額:216万円(賞与は含めない)
受給額
- ①賃金日額 = 216万円 ÷ 180日 = 1.2万円/日
- ②給付率:50%
- ③所定給付日数:120日
→ 1.2万円 × 50% × 120日 = 72万円
上記はあくまでも計算例であり、給付率や所定給付日数は非常に細かく設定されています。
大まかな特徴は以下の通りですが、詳細を知りたい場合は厚生労働省やハローワークのホームページを確認しましょう。
給付率
- 賃金日額や年齢によって変わる
- 賃金が低いほど高い給付率
- 45~80%
所定給付日数
- 手当てをもらえる日数のこと
- 90~360日
- 受給できる期間は「離職時の満年齢・雇用保険の被保険者であった期間・離職の理由」で決まる
また、人によっては受給期間や金額だけでなく、受給開始時期も異なるので注意が必要です。
失業給付の受給開始時期は、退職理由が「会社都合」か「自己都合」かで異なります。
会社都合だと1回目の受給まで約5週間、自己都合の場合は約3カ月の時間がかかります。
そのため自己都合で会社をやめる場合、失業給付をもらえるまでの期間は、貯金を切り崩して生活する必要があるのです。
傷病手当金と失業給付でどのくらい備えられるのか
傷病手当金と失業給付の両方を最大期間受け取ると、2年6カ月(30カ月)になります。
- 傷病手当金:最大18カ月
- 失業給付:最大12カ月
傷病手当金は名前の通り、ケガや病気で働けない人のための制度であるため、失業したからと言って誰でも利用できるワケではありません。
また、失業給付を受け取れるのは、通常3カ月程度です。
しかし、後ほど詳しく解説する「就職困難者」と認定された場合、45歳未満は最大10カ月間、45歳以上なら最大12カ月間もらえます。
つまり、ケガや病気で働けないのであれば、傷病手当金と失業給付を合わせて最大2年6カ月の間、公的な保障が受けられるのです。
あくまでも、2年6カ月は最大の期間であり、ケガや病気の症状次第では当然短くなることもあります。
ここで大切なのは、2年6カ月もの間、社会保険による保障が受けられるということです。
ケガや病気を治療したくても、生活するお金に余裕がなければ仕事をやめられず、体を酷使してしまうこともあるでしょう。
その結果、体調はいつまでたっても万全にはならず、仕事もやめられないといった負の連鎖に陥ってしまうのです。
ただし、長期間の保障を受けるには、自分から申請しなければなりません。
もし正しく申請しないと通常の失業給付3カ月程度しかもらえず、金額にすると数百万円の差が生まれます。
もちろん、金額の損や得といった話でもありませんが、知っておくだけで安心感が大きく違うでしょう。
そこで、次からは具体的な申請手順を解説していきます。
傷病手当金・失業給付を申請するための具体的な手順
傷病手当金や失業給付の申請は手順が大切です。
一つひとつ丁寧に解説しますので、参考にしてください。
- Step⓪:申請するための前提条件
- Step①:退職前にやっておくこと
- Step②:健康保険(傷病手当金)の手続き
- Step③:雇用保険(失業給付)の手続き
- Step④:任意で職業訓練校にも通える
Step⓪:申請するための前提条件
まず前提条件として、退職後も傷病手当金を受給する場合、健康保険に1年以上加入していることが必要です。
ただし「健康保険に1年以上加入」は、退職後も傷病手当金を受給することを想定した場合となります。
退職後の受給を考えていない場合には、1年以上加入していなくとも、傷病手当金の受給が可能ですので、受給要件については加入している健康保険組合に確認してみましょう。
一方、国民健康保険には傷病手当金の制度がないので、自営業者やフリーランスの人は受け取れません。
自営業者やフリーランスの人で働けないリスクに備えたい場合は、就業不能保険を検討するのもありでしょう。
また、傷病手当金と失業給付は同時に受け取れません。
そのため、傷病手当金を受け取りながら治療に専念し、働ける状態になったら、失業給付を受けながら就職活動をする流れとなります。
ちなみに、公務員は雇用保険の対象外となっており、失業給付を受け取れないので、注意しましょう。
Step①:退職前にやっておくこと
退職前にやっておくことは、大きく4つです。
- 在職中に連続で3日以上会社を休む
- 医師に働けない状態だと証明してもらう
- 退職を打診 → 退職願を提出
- 退職日は欠勤する
在職中に連続で3日以上会社を休む
傷病手当金を受け取とるためには、「在職中連続3日以上働けなかった日がある」という条件があります。
大切なのは連続3日以上であり、具体例を紹介します。
OKのケース
- 土日祝日を含めてOK(金土日や土日月など)
- 土日祝の3連休
- GWなど
→ とにかく3日以上連続していればOK
NGのケース
- 水木休みで金曜出勤して土日休み
→ 連続3日以上ではないためNG
連続3日以上には土日祝日だけでなく、有給休暇や公休を使っても大丈夫です。
ちなみに、今回のように「退職後も傷病手当金を受け取る」場合、後ほど紹介しますが退職日も欠勤する必要があります。
そのため、3日以上休み続けて退職日も欠勤して退職することになるでしょう。
医師に働けない状態だと証明してもらう
会社を休む日が決まったら、病院で医師に働けない状態だと証明してもらいましょう。
傷病手当金は、ケガや病気で働けない状態であることが条件なため、医師による判断が必要となります。
そのため、症状に合わせて、以下のような科がある病院やクリニックに行けば問題ありません。
- 心療内科
- 精神科
- 内科
- 外科
病院やクリニックによっては、予約が必要な場合もあるので、確認しておきましょう。
病院に行ったら、医師に自身の気持ちや状態を素直に伝えてください。
ただし、1つ注意点があります。
それは、「職場のストレスが原因による鬱の診断書」だと労災扱いになり、傷病手当金の対象外となってしまうことです。
さらに、鬱での労災は認定されにくいケースが多いです。
そのため、医師に相談して原因を「不詳」として診断書を出してもらえないか確認してみましょう。
理解のある医師が多いので、柔軟に対応してくれるはずです。
医師も人間なので、相性が合わなかったり、診断を渋ったりする人もいます。
そういった時は、違う病院で診察を受けてみましょう。
退職を打診 → 退職願を提出
体調が良くならなかった場合、会社に退職する旨を伝えて退職願を提出しましょう。
退職願の提出は基本的に約1カ月前にすれば問題ありません。
もし余裕があるなら、2カ月前には提出しておくと、ゆとりを持って次の行動に移せます。
退職日は欠勤する
退職日に欠勤することも傷病手当金を受け取る条件の一つです。
もし退職日に出勤すると、「就労できる人」と認定されてしまいます。
退職日に休むと、就労できないまま退職し、退職後も給付金が必要な人として判断されるのです。
退職日に荷物を取りに行くことも認められていないので、必ず退職日を過ぎてから、荷物の整理や受け取りに行きましょう。
ちなみに、退職日が公休の場合は休んだと判断されます。
Step②:健康保険(傷病手当金)の手続き
退職したら健康保険(傷病手当金)の手続きに移ります。
- 健康保険を切り替える
- 年金は免除申請ができる
- 傷病手当金の申請準備
- 2回目の通院&傷病手当金の申請書記入依頼
- 会社に申請書の記入依頼
- 申請書を送付
- 雇用保険の受給期間を延長する申請をする
- その後1ヶ月に1回は通院する
健康保険を切り替える
会社を退職したら、まずは健康保険から国民健康保険に切り替えましょう。
もしくは、会社で加入していた健康保険の任意継続(最大2年間)もできます。
国民健康保険に切り替えるなら14日以内に、任意継続するなら20日以内に判断する必要があります。
年金は免除申請ができる
退職したら国民年金保険料の免除申請が可能です。
もし退職後に金銭面で不安がある場合は、市役所や区役所などの年金窓口で相談してみましょう。
もちろん、国民年金保険料を払い続けられる場合は、免除申請の必要はありません。
傷病手当金の申請準備
次に傷病手当金の申請準備のため、申請書を入手しましょう。
申請書の入手方法は、在職中に加入していた健康保険組合によって異なります。
ほとんどの人が協会けんぽですが、協会けんぽ以外の人は「けんぽれんの健保組合検索」で調べるか、もしくは健康保険組合に直接問い合わせましょう。
協会けんぽの場合は、ホームページから申請書をダウンロードできます。
申請書には以下の3つのページがあります。
- 自分が記入するページ
- 医師が記入するページ
- 勤務先の会社が記入するページ
自分が記入するページは、申請書を入手したら記入しておきましょう。
2回目の通院&傷病手当金の申請書記入依頼
退職して1週間ほど経ったら、再度病院で診察を受けて、医師に現在の症状を伝えましょう。
その際に、申請書を医師に渡して記入してもらいます。
傷病手当金を継続して受け取るためには、毎月病院を受診することが必要です。
そのため、1カ月以内を目安に次の予約を取って帰りましょう。
会社に申請書の記入依頼
傷病手当金の申請書には、勤務先の会社が記入するページがあります。
直接会社に行って書いてもらうのもありですが、会社の人と会うことに抵抗のある人もいるでしょう。
その場合は、郵送で申請書を会社に送付して記入依頼でも問題ありません。
郵送して記入してもらう場合は、返送用の封筒や切手も忘れずに同封しておきましょう。
後日、会社から記入された申請書の返送があります。
申請書を送付
申請用紙全ての記入が終わったら、まとめて封筒に入れて、健康保険組合または協会けんぽに送付しましょう。
申請して1カ月ほどで、支給決定通知書または不支給通知決定書が返送されます。
雇用保険の受給期間を延長する申請をする
次は、雇用保険の受給期間を延長する申請をします。
傷病手当金は「医師が働けると判断する」、もしくは「申請初日から18カ月経過するまで」はもらえます。
しかし、失業給付は退職後1年を過ぎるともらえなくなるため、傷病手当金を受給している間に失業給付をもらえる期間は過ぎてしまう可能性があるのです。
延長の申請は、ハローワークで「病気治療のため受給期間延長申請書を出したい」と伝えましょう。
ただし、申請は退職後32日以降でなければ、受け付けてもらえません。
傷病手当金の支給決定までに約1カ月はかかるので、この記事の順番通りにやれば大丈夫です。
1カ月に1回は通院する
傷病手当金の受給が始まったら、1カ月に1回は通院しましょう。
なぜなら、継続的に傷病手当金を受け取るためには、毎月、傷病手当受給申請書を健康保険組合または協会けんぽに提出する必要があるからです。
申請書を送らないと治療の意思がないと判断されてしまい、傷病手当金を受け取れなくなってしまいます。
当然ですが、病気が治ったら傷病手当金の給付は止まります。
繰り返しになりますが、傷病手当金の支給は最大で18カ月です。
一度治って再発した場合は、人によって「受け取れる・受け取れない」の意見が異なるため、明確なことは言えません。
再発の可能性なども含めて、本当に治っているかどうかは医師に判断してもらいましょう。
Step③:雇用保険(失業給付)の手続き
傷病手当金を最大18カ月受け取った、または病気が治って働ける状態になったら、失業給付の手続きを行いましょう。
失業給付は働ける状態の人が就職活動期間中にもらえるものであり、ケガや病気の治療で働けない状態では受け取れないので注意が必要です。
病気の治療が終わり働ける状態になったら、医師から働ける証明をもらう必要があります。
失業給付の申請手順は以下の通りです。
- 雇用保険の受給期間延長申請の解除準備をする
- 病院で就労可能証明書を記入してもらう
- 受給期間延長申請の解除をする
- 求職活動をする
- 就職が決まったら再就職手当がもらえることもある
雇用保険の受給期間延長申請の解除準備をする
失業給付をもらうために、まずは雇用保険の受給期間延長申請を解除する準備を行います。
そのためには、医師から就労可能証明書(就労可否証明書)をもらう必要があります。
詳しくはハローワークで教えてくれるため、雇用保険の受給延長の解除に必要なモノを確認しておきましょう。