![【愛称:まるっと米国】SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型)について解説!](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/04/2022040701.png)
2022年3月22日、SBI証券に新しいファンド「SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型)」が登場し、運用開始されたのをご存知でしょうか?
どんなファンドなんだろう?
ファンドの愛称は「まるっと米国」と言い、資産を米国株式と米国総合債券に50%ずつ投資できるバランスファンドです。
登場したばかりのファンドなので、詳しく知らない人も多いでしょう。
そこで今回の記事では、SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型)(以下、まるっと米国)について以下の3点を解説します。
- 「まるっと米国」はどのようなファンドなのか?
- 「まるっと米国」3つの魅力と3つの懸念点
- 「まるっと米国」をおすすめできる人・おすすめできない人
米国株式(S&P500)や、全世界株式だけに投資しておけば大丈夫だと考えている人こそ、今回の記事をぜひ最後まで読んでみてください。
なぜなら、そのままの考え方で本当に良いのか、あらためて自分が行っている資産運用について見直すキッカケになるからです。
なお、「まるっと米国は魅力的なファンドだが、万人におすすめはできない。」というのがリベ大の結論になります。
目次
解説動画:【使える?使えない?】「SBI・iシェアーズ・米国バランス(2資産均等型)(愛称:まるっと米国)」について解説
このブログの内容は以下の動画でも解説しています!
「まるっと米国」はどのようなファンドなのか?
まず、「まるっと米国」がどのような特徴を持つファンドなのか、見ていきましょう。
- 「まるっと米国」の投資対象
- カウチポテトポートフォリオとは?
「まるっと米国」の投資対象
「まるっと米国」は実質的に、以下の2つのETF(上場投資信託)に50%ずつ投資するファンドです。
- IVV:iシェアーズ・コア S&P 500 ETF(株式)
- AGG:iシェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF(債券)
IVV(iシェアーズ・コア S&P 500 ETF)
IVVは、世界最大級の資産運用会社ブラックロックが運用する、S&P500に連動するインデックスファンドです。
IVVの経費率と運用総額は以下になります。
- 年間の経費率:0.03%
- 運用総額:約38兆円
過去5年のIVVのチャートは以下の通りです。
![IVVの過去5年のチャート](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/04/27_image_02.png)
(出典:ブルームバーグ「IVV 銘柄」より)
世界トップレベルの優良投資商品で、日本のファンドにはIVVと肩を並べられる規模のETFは見当たりません。
なお、IVVの5年トータルリターンは約16%です。
AGG(iシェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF)
AGGは、資産運用会社ブラックロックによって運用されている債券ファンドで、「米国投資適格債券市場」を表す指数に連動した成果を目指しています。
簡単に伝えると、アメリカの手堅い債券を投資対象にしているとイメージしてください。
AGGの経費率と運用総額は以下になります。
- 年間の経費率:0.04%
- 運用総額:約10兆円
AGGの経費率もIVV同様に低く、債券のカテゴリーでは非常に存在感があるファンドです。
ここで、AGGの過去5年のチャートを確認してみましょう。
![AGGの過去5年のチャート](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/04/27_image_04-1.png)
(出典:ブルームバーグ「AGG 銘柄」より)
2022年4月時点では、金利上昇を受けてAGGの価格が下落しているため、上記のチャートだけを見ると、あひるくんのように感じる人もいるでしょう。
しかし、AGGは利息(インカムゲイン)の割合が大きいという特徴を持っています。
利息を含めたAGGの5年トータルリターンは約2.1%で、しっかり債券らしい成績を出しているファンドです。
カウチポテトポートフォリオとは?
「まるっと米国」のように、株式50%と無リスク資産50%の比率で資産運用することを、カウチポテトポートフォリオと言います。
カウチ(ソファー)でくつろぎ、ポテトチップスを食べていられるほど気持ちに余裕が持てるという意味から、カウチポテトと名付けられました。
なお、無リスク資産とは以下を指します。
- 現預金
- 格付けや安全性が非常に高い国債
例えば、アメリカで暮らす人にとって、米国債券は無リスク資産と言えます。
しかし、日本で暮らす人にとっては為替リスクがあるため、米国債券は無リスク資産とは言いにくいでしょう。
なぜなら、AGGといったETFは直接取引する生の債券とは異なり、リアルタイムな値動きが発生するからです。
とはいえ、株式と比較すると、債券の方がはるかに低リスクなのは事実です。
安心感を「暴落に対する強さ=頑丈さ」の視点で考えた場合、以下のイメージくらい差があります。
- 株式:不安定な木製の吊り橋
- 債券:石橋
ここ数年で、以下のような米国株式だけに投資するファンドが次々に誕生しました。
- S&P500に連動したインデックスファンド
- 米国株式指数に連動したインデックスファンド
- NASDAQ100に連動したインデックスファンド
上記の他に、NASDAQ(ナスダック)にレバレッジをかけたファンド「レバナス」も登場しています。
しかし、レバレッジ商品は、いずれもリスクは高めです。
相場の値動きが激しくなった時、カウチでくつろぎ、ポテトチップスを食べられるような余裕を持てなくなる人も多いでしょう。
ここまでの話を踏まえると、最近の投資環境は、リスクを取って積極的に収益を狙いたい人には良い環境と言えます。
しかし言い換えれば、もう少しリスクを抑えながら資産運用を行いたい人にとって、選択肢が少ない状況でした。
そこで、株式100%でも債券100%でもない、中間のリスクバランスで登場したのが「まるっと米国」というワケです。
SBI証券は「まるっと米国」を登場させることで、投資家に多様性を持たせようとしてくれているのかもしれません。
「まるっと米国」3つの魅力
「まるっと米国」の魅力は以下の通りです。
- ①王道的な投資戦略
- ②投資対象が株式100%のファンドよりも低リスク
- ③ETFを自分で購入して調整するより資産管理がラク
魅力①:王道的な投資戦略
「まるっと米国」は、資産運用の軸に株式と債券を据える王道的な投資戦略を採用しています。
投資の本や投資セミナーでも、「株式50%:債券50%」で長期運用シミュレーションを出しているケースは少なくありません。
ここで、王道的な投資戦略の特徴を伝える前に、新しい投資戦略の特徴について確認しましょう。
新しい投資戦略には、上手くいった時の爆発力があります。
しかし、長い歴史の中において戦争や災害、不況といった試練に耐えてきた実績がないため、以下のようなデメリットがあります。
災害や危機的状況が起きると、収益を一気に失うリスクが高い。
取引参加者が少ないため市場が薄く、好きなタイミングで売買できない可能性がある。
どのような商品やサービスも、普及するまでは高コストになりがち。
つまり、新しい投資戦略とは、一握りの勝者と、数多くの敗北者が生まれやすいと言えるのです。
一方、「まるっと米国」で採用されている王道的な投資戦略は、新しい投資戦略とは真逆の特徴を持っています。
なぜなら、王道的な投資戦略は、長い歴史の中で戦争や災害、不況といった試練に耐えてきた実績があるからです。
リターンは地味になりがちですが、王道的な投資戦略のメリットは非常に多いと言えるでしょう。
信頼や実績、安心感がある。
市場が厚く、好きなタイミングで売買できる。
ムダなコストが省かれ、最適化されている。
魅力②:投資対象が株式100%のファンドよりも低リスク
「まるっと米国」は、投資対象が全て株式となっているファンドより圧倒的に低リスクです。
2022年現在、日本の個人投資家に人気のあるファンドは以下になります。
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):投資対象は米国株式に100%
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド:投資対象は米国株式に100%
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):投資対象は全世界株式に100%
つみたてNISAやiDeCoの非課税枠を活用し、上記のファンドを主軸に投資している人もいるでしょう。
また、非課税枠を超える資金の投資先を、株式に絞っている人も多いかもしれません。
なぜなら、ここ数年は投資対象として株式が最強だったからです。
しかし、株式とは時にマイナス30%〜50%ほどのレベルで暴落する可能性があります。
一方、米国総合債券は為替影響を除くドルベースの値動きで見ると、リーマンショック時でさえ最大マイナス5%ほどでした。
為替が一定だと仮定した場合、100万円を投資している時に暴落が起きても、95万円も残るイメージになります。
そのため、ポートフォリオに債券を入れると、暴落時のリスクを低下させられるのです。
魅力③:ETFを自分で購入して調整するより資産管理がラク
「まるっと米国」は、ETFを自分で購入して調整するより資産管理がラクなのも魅力の一つです。
ポートフォリオは、運用していると資産配分の割合がズレていきます。
例えば、当初は株式と債券を50%ずつで運用していたのに、1年経つと「株式60%:債券40%」になるといったイメージです。
資産配分が変わり、株式の割合が増えるほどリスクは高まり、自分に合う適度なリスクバランスをキープできなくなります。
その結果、暴落や不況に対する備えの不足が懸念されるのです。
一方、債券の割合が増えるほどリターンを得られるチャンスが減るので、長期的に見て効率的に資産を増やすことは難しくなるでしょう。
したがって、当初とズレてしまった資産のバランスを、もとの割合に戻す必要があります。
非常に大切なメンテナンスですが、リバランスを行っていない人もいるのではないでしょうか。
なぜなら、リバランスは意外と大変で面倒だと感じることが多いからです。
また、リバランスの重要性を理解していないため、資産配分を気まぐれに変えているケースも考えられます。
人は重要なことだと認識しつつも、面倒なことは避ける傾向にあり、後で痛い目を見ることになりがちです。
しかし、「まるっと米国」は面倒なリバランスを自動で行ってくれます。
「まるっと米国」3つの懸念点
「まるっと米国」の懸念点は以下の通りです。
- ①指数との乖離(かいり)
- ②債券の必要性
- ③常に株式50%と債券50%を維持することの合理性
懸念点①:指数との乖離(かいり)
インデックスファンドとは、指数と同じ成績を目指すファンドです。
例えば、指数のS&P500が3%値上がりした場合、S&P500に連動するインデックスファンドも3%値上がりするように運用を行う必要があります。
ここで、例を挙げて見ていきましょう。
現在、基準となる指数が300円の場合、指数に連動するファンドなら以下のように価格が動きます。
基準となる指数が300円の場合
- 平均価格が3%値上がりした → 309円(300円 + 300円 × 3%)
- 平均価格が3%値下がりした → 291円(300円 − 300円 × 3%)
上記のように、インデックスファンドは指数と正確に連動することが大切です。
そのため、以下のような状態は良いファンドとは言えません。
指数は上がったのに、指数に連動するファンドは上がっていない。
→ 例:指数は330円に上がったのに、指数に連動するファンドは310円の状態。
指数は下がったのに、指数に連動するファンドは下がっていない。
→ 例:指数が270円に下がったのに、指数に連動するファンドが290円の状態。
「まるっと米国」は、実質的に以下2つの指数への連動を目指したファンドです。
- S&P500
- 米国総合債券
つまり、「まるっと米国」の成績は、上記の指数に近いほど良いことになります。
ここで、ブラックロックに掲載されている、S&P500への連動を目指しているIVVのデータを見てみましょう。
過去10年のIVVのトータルリターンと、インデックス(S&P500)の運用実績は以下の通りです。
- IVVのトータルリターン:年利14.59%(①)
- インデックス(S&P500):年利14.64%(②)
→ 運用実績の差:0.05%(② - ①)
IVVは指数の成績に非常に近いので、良いインデックスファンドだと言えるでしょう。
乖離は運用にコストがかかるほど、差が開いていきます。
最近は、アメリカの資産運用会社が作った優良ETFをそのまま購入するタイプのファンドが、いくつか登場しています。
ただ、米国ETFを個人で直接購入するより、日本の投資信託を通じて間接的に米国ETFを買う方がコストがかかるため、指数との乖離は大きくなりがちです。
なぜなら、様々なところで中間マージンをとられてしまうからです。
懸念点②:債券の必要性
債券の必要性について、主要な論点は以下の2つです。
- 長期の成長性
- リスクリターンに見合うかどうか?
論点1:長期の成長性
長期で見ると、成長力があるのは圧倒的に株式です。
S&P500に投資するIVVと、米国総合債券に投資するAGGの設定来のトータルリターンを見てみましょう。
- IVV(約22年):年7.32%
- AGG(約18年):年3.52%
※2022年3月31日付け
※設定来とはファンドの運用がスタートした(設定された)時点からという意味
上記の通り、ポートフォリオの守備力を高めるには債券も悪くありませんが、長期的に見れば株式の方が圧倒的に成長性が高いのは過去のデータに基づく事実です。
すでに億レベル資産を保有しており「守るフェーズ」に入っている人なら、債券への投資を検討する余地があるかもしれません。
しかし、長い時間をかけてこれからコツコツ資産を築こうとしている人が「わざわざ成長力の低い債券に投資する必要性はあるのか?」ということです。
論点2:リスクリターンに見合うかどうか?
リスクリターンに見合うかどうかの点でも懸念があります。
なぜなら、以下のように為替リスクが影響するからです。
ドルで日常生活をしている人:米国債券の為替リスクがない
円で日常生活をしている人:米国債券の為替リスクがある
債券は株式に比べるとリターンが控えめなため、為替が影響するとリターンが全てなくなるリスクもあるのです。
ここで、為替リスクのイメージを見てみましょう。
1ドル100円の時に、Aさんは債券に投資を始め、年2%の利息を5年間受け取りました。
利益は合計10%(年2% × 5年間)で、債券の元本価格は5年間ほとんど変わっていません。
しかし、為替は5年間で1ドル100円から90円に変動し、円高の影響で元本が10%毀損(きそん)してしまいました。
受け取った10%分の利息と、10%の評価損が相殺され、利益が差し引きゼロとなってしまったのです。
債券は為替変動の影響を受けやすいため、為替リスクを含めて考えると、米国債券のコスパが気になる人はいるでしょう。
そのため、「資産を長期運用するなら株式にしよう!」と考える人も少なくありません。
懸念点③:常に株式と債券を50%ずつで維持することの合理性
常に株式と債券を50%ずつで維持することが合理的かどうかは、懸念点の一つになります。
なぜなら、年齢や職業、年収、保有資産状況、家族構成などは人それぞれであり、投資に対するリスク許容度にも違いがあるからです。
例えば、以下の2人が同じリスク許容度とは言えません。
- 大企業勤務の年収1,000万円のエリートサラリーマン(30歳)
- 中小企業で働き始めたばかりの年収300万円の会社員(20歳)
いくらまでなら投資にお金を使え、お金がどのくらいまで減っても大丈夫なのかは人それぞれです。
そのため、以下のように「株式50%:債券50%」で維持することが、自分にとっての最適解ではないケースも考えられます。
- リスク許容度に余裕がある:本当はもっとリスクを取れるのに、株式と債券を50%ずつで維持している。
- リスク許容度を超えている:本当はリスクを抑える必要があるのに、株式と債券を50%ずつで維持している。
株式50%と債券50%の配分が最適な人は、どのくらいいるのかを考えると「まるっと米国」の使いどころは、なかなか難しいと言えるでしょう。
なお、リスク許容度については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
「まるっと米国」をおすすめできる人
「まるっと米国」をおすすめできる人は、以下になります。
- ①自分で分配金の再投資やリバランスを行うのが面倒な人
- ②米国株式100%の投資にリスクを感じる人
- ③円をできるだけ持ちたくない人
①自分で分配金の再投資やリバランスを行うのが面倒な人
以下のいずれかに当てはまる人は、「まるっと米国」を検討する余地があるでしょう。