こんにちは、こぱんです!
リベ大では、経済的自由に一歩でも近づくための、「お金にまつわる5つの力」について発信しています。
▼図解:お金にまつわる5つの力
2021年2月8日、朝日新聞で「年金の事務処理ミス問題」に関する記事を見つけました。
加入者の配偶者に支給される年金の一部が支給対象外とされた7人が訴訟を起こしたところ、いずれも国側が判決を待たずに全額を支給していたことがわかった。
支給要件の有無の確認があいまいだったのが原因とみられる。
支給対象外とされた人は約4万5千人いるとされ、原告弁護団は「ほかにも支給を受けられる人がいる」と指摘するが、国側は再通知や調査はしないという。
「ややこしすぎて、何を言いたいのか分からない」と思った人もいるかもしれません。
しかし、経済的自由を目指す上で、非常に重要な事例なのできちんと理解しましょう。
上記の「年金の事務処理ミス問題」の記事概要を簡単にまとめると、以下の通りです。
国の事務処理ミスにより年金が減額される
自分から金額の修正を国に言わない限り訂正してもらえない
ひどいな…。
お金の世界は「知らないと損する」残酷な世界です。
そこで今回は、「年金の事務処理ミス問題」に関わる3つのことについて解説します。
- 年金の「振替加算」とは
- 厚生労働省の「事務処理ミス問題」とは
- どうやって自分の年金を守るべきか
目次
解説動画:【救済は訴えた人だけ?】年金の「事務処理ミス問題」について解説
このブログの内容は下記の動画でも解説しています!
年金の「振替加算」とは
今回のニュースを理解するための大前提として、「振替加算」という制度について解説しておきます。
皆さんも、会社員の手当の1つとして、家族手当という言葉を聞いたことがあるでしょう。
- 企業が一定金額を支給する制度
- 配偶者や子を養う世帯主に対して支払われる
- 福利厚生のひとつ
実は、公的年金にも「加給年金(かきゅうねんきん)」と呼ばれる、家族手当のような制度があります。
支給要件には細かいルールがありますが、簡単にまとめると以下のような制度です。
- 厚生年金の加入期間が原則20年以上ある夫・妻に支給
- 生計を共にする配偶者(65歳未満)がいれば、年額約40万円
- 生計を共にする子がいれば、約23万円(3人目以降は7.5万円)
配偶者1人、子1人で合計60万円、月額にすると5万円が追加されるため、かなり大きな金額です。
加給年金は国民年金にはない制度で、会社員や公務員には非常に有利な制度と言えるでしょう。
ところが、配偶者が65歳以上、子が原則18歳以上になれば、加給年金は打ち切られてしまいます。
減った受給金額を補うため、振替加算は活用されるのです。
加給年金とは、厚生年金の受給者にプラスされる家族手当でした。
配偶者が65歳以上になると加入年金は打ち切られますが、配偶者は「自分自身の年金を貰える年齢」になっています。
そこで、加給年金の打ち切り後、配偶者の年金を上乗せしてあげるのが振替加算なのです。
今でこそ国民年金は全員加入ですが、昔は任意加入でした。
国民年金の加入期間が短い配偶者は自分の年金がかなり少ないため、救済措置として振替加算が設けられたのです。
これまでの説明を、会社員や公務員の夫と専業主婦の妻を前提にした場合は、以下の通りとなります。
- 夫は65歳以降から年金+加給年金を受給する
- 妻が65歳になった時点で、夫の加給年金は打ち切り
- 妻は65歳から年金+振替加算分を受給する
振替加算の受給額は生年月日によって異なり、1966年4月2日以降に生まれた人には振替加算はありません。
以上が、今回の「年金の事務処理ミス問題」を理解するための基礎知識です。
- 加給年金:厚生年金における家族手当
- 振替加算:1966年以前に生まれた人のお得な制度
厚生労働省の「年金の事務処理ミス問題」とは
約598億円の振替加算支給漏れ
2017年9月、厚生労働省が発表した「年金の事務処理ミス問題」は大きな話題となりました。
なんと、10万6千人に対して約598億円もの振替加算が支給漏れしていたのです。
厚生労働省は13日、システムの不備や事務処理ミスによって、10万6千人に対して約598億円の公的年金の支給漏れがあったと発表した。
1人当たり平均で約56万円。
「振替加算」という上乗せ年金部分が未払いになっていた。
ちなみに2018年、大手仮想通貨取引所コインチェックの不正アクセスによる仮想通貨流出も、約580億円という金額で当時大きなニュースとなりました。
(出典:BBC NEWS「コインチェック、460億円の返金を約束 不正アクセス受け」より)
つまり、数百億円という金額は世論・行政を巻き込み社会を揺るがすほどの金額だということです。
そんな「年金の事務処理ミス問題」を、厚生労働省は以下のように決着させました。
振替加算の支給漏れ約598億円を、2017年11月に未払い分を一括支給
- 1人当たりの未払い額は最高で590万円
- 対象者が死亡しているケースが約4,000件
(出典:日本経済新聞「年金支給漏れ、計600億円、公務員ら10.6万人に」より)
支給漏れのあった対象者の96%は夫婦どちらか一方が公務員で、共済年金に加入しているケースだったようです。
公務員が、公務員のミスにより不利益を被ることになった、まさかの事例でした。
約598億円もの振替加算漏れだけでも大問題ですが、実はさらなる問題が発生したのです。
厚生労働省の対応で「残酷な世界」が浮き彫りに
当時、厚生労働省は約45,000人に対して、未払い対象ではないと公表しました。
その理由として、生計維持関係を主張したのです。
「夫や妻との同居を示す生計維持関係がない」と申告した人は対象外なので払いません。
また、「生計維持関係がありました!」と訂正されても、時効なので払いません。
ところが、上記の厚生労働省の対応に納得できない未払い対象の人もいました。
彼らのうち7人は、以下のような反論と共に、振替加算の全額払いを求めて東京地裁に提訴したのです。
「そもそも『生計維持関係がない』と申告してない!」
「国が勝手に『ない』と判断したんだ!」
当初国側は、裁判所に対して「彼らの主張には正当性がないから相手にしないで!」と請求棄却を求めていました。
しかし突如として、原告の主張を受け入れるかたちで「再度精査したところ、生計維持関係があると申し立てた可能性がある」と説明をし始めたのです。
詳しい理由も言わず、判決が出る前に、訴えを起こした7人に対して支給していなかった振替加算額の全額を支給しました。
約990万円(1人あたり約85~264万円)という支給金額以上に注目すべきなのは、国側の二転三転した説明でしょう。
「生計維持関係がないと言われた」
→ 「生計維持関係があると言われたかも」
→ 「時効なので払いません」
→ 「やっぱり払います」
原告の弁護団は「ほかにも支給が受けられる人がいる」と言っていますが、国側はこれ以上の調査はしない方針です。
- 支給漏れの人たちがどれだけいるかは不明
- 当人から年金事務所に相談があれば、対応を検討する
- 関連資料は廃棄済みで、保有していない
もし、民間企業が上記のような誠意のない対応をしていたら大炎上することでしょう。
結局、理不尽を訴えた人だけがお金を取り返せて、事態に気づかなかった人や、声をあげなかった人は損していたとしても放置されるという、残念な幕引きになりました。
リベ大でいつも言っているような「残酷な世界」が浮き彫りになった事例です。
知らない人は損をする
主張しない人は損をする
どうやって自分の年金を守るべきか
皆さんもご存知の通り、厚生労働省や社会保険事務所の年金に関する不祥事は、これだけではありません。
2007年に約5,000万件の「消えた年金問題」が発覚し、第一次安倍内閣が参院選で惨敗するきっかけになった
2015年には、約125万件の年金個人情報が流出するトラブルが発生
(出典:産経新聞「年金不祥事、根強い不信感」より)
それに加えて、2017年に発覚した約598億円の支給漏れと、今回声をあげた人以外は救済しない姿勢も明らかになりました。
数々の不祥事を起こしておきながら「日本の年金制度を信用しろ」と言われても「いやいや、それはムリ」と思うのが正直なところでしょう。
不祥事が起きた時に、皆さんがとれる「極端」な選択肢は以下の2つです。
- ①年金制度から脱退する(保険料を未納にする)
- ②国のやることに間違いはないと信頼し、言われた通りにする
選択肢①:年金制度から脱退する(保険料を未納にする)
1つ目の選択肢は、極論、「年金制度=国家的詐欺」と考えて保険料を未納にするスタンスです。
数々の不祥事はもちろん、「少子高齢化に伴い、年金制度は維持できないだろう」と考慮した上での判断になるでしょう。
この選択をした場合の問題点は、大きく3つあります。
→ もとより逃げ道がない
→ 未納のままにすると、財産を差し押さえられるリスクがある
→ 国民年金は「保険」のため、未納だと以下3つの保障が受けられない
- 病気やケガで働けなくなったときの障害年金
- 大黒柱を亡くしてしまったときの遺族年金
- 老後を迎えたときの老齢年金
選択肢②:国のやることに間違いはないと信頼し、言われた通りにする
2つ目の選択肢は、「国のやることに間違いはないと信頼し、言われた通りにする」です。
要するに「よく分からないけど、何もしなくても大丈夫だろう」という考え方ですが、黙っていられるのは、極端な話「自分は損しないだろう」と国を信じていることと同義になります。
問題点①:不平・不満を伝えないと、行政の事務効率が上がらない
監視の目が行き届かないと、不祥事が起きることは歴史が証明しています。
行政をしっかりと監視しながら言うべきことを言わないと、最後にツケを払うのは国民自身です。
SNSを通じて、世論を動かす
投票を通じて、政治に自らの意志を反映させる
上記のようなアクションを通じて、行政にはきちんと意見していくべきでしょう。
問題点②:申請主義の世の中では、黙っていると損をする
そもそも加給年金は、自分から申請しないと受け取れない、つまり申請主義です。
申請主義は、市民が行政サービスを活用するためには自主的な申請が必要だという考え方です。
たとえお得な制度があったとしても、行政側が「あなたはこれを申請した方が良いですよ」とは教えてくれません。
以上の解説から、気づいている人もいるかもしれませんが、リベ大は極端な選択肢のどちらも選びません。
なぜなら、どちらも「適正なリスク」が取れているとは言えないからです。
「年金制度=国家詐欺だから未納にしよう」
「国のすることだから大丈夫、信頼しよう」
このようなゼロか100かのポジションの取り方はリスクの高いポジショニングです。
一歩間違えると崖から落ちかねないやり方とも言えるでしょう。
リベ大の年金制度に対するスタンス
リベ大は、年金制度に対して適切な距離感を保つスタンスを取ります。
イメージとしては、右手で「よろしくね」と握手しながら、左手で別な対策を打つ感じです。
人口1.2億の国にしては「そこそこマトモ」な制度であることを認める
制度をしっかり理解して、行政を監視する
制度がコケた時の「第2、第3の手」を考えておく
数多くの問題が取りざたされる年金制度ですが、多くの人が年金を軸に生活をしている事実も無視できません。
実際に、2020年12月時点の国民年金の受給者数を見てみましょう。
- 老齢給付:3,366万人(平均月額5.5万円)
- 障害給付:201万人(平均月額7.2万円)
- 遺族給付:9万人(平均月額8.4万円)
厚生年金も含めると、令和元年度時点の受給者は約4,040万人に上ります。
(出典:厚生労働省年金局「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より)
不祥事が起きると「すべてが破綻しているように見えがち」ですが、機能している部分はちゃんとあるのです。
電卓を叩けば分かりますが、厚生年金はともかく、国民年金は計算上も非常に有利な制度です。
こんなにお得な制度は、民間では絶対に作れないという事実は理解すべきでしょう。
上記のことから、リベ大が考える皆さんが取るべき6つの行動は以下の6つです。
年金制度についてしっかり理解しておく
年1回送られてくる「年金定期便」の内容に不自然なところがないか確認する
年金がらみのニュースには必ず目を通す
不祥事があった時に、どの政治家が何を言っていたかを覚えておく
iDeCoやつみたてNISAなど、自分の財産を自分で作る努力を続ける
マイクロ法人を設立して、社会保険料を最適化する
行動①:年金制度についてしっかり理解しておく
どのように勉強すれば良いか分からない人は、FP3級などを通じて学ぶのが良いでしょう。
行動②:年1回送られてくる「年金定期便」の内容に不自然なところがないか確認する
「加入期間や納付額に違和感がないか」だけでも見ておくべきです。
行動③:年金がらみのニュースには必ず目を通す
制度改正、不祥事などはしっかりおさえましょう。
「忙しくて新聞読む暇がない」、「内容が理解できない」という人は、リベ大の動画やブログで分かりやすく解説するので、ぜひ見てください。
行動④:不祥事があった時に、どの政治家が何を言っていたかを覚えておく
投票の際の1つの材料にしてください。
自分とは「思考が違う」人が見つかるのは、不祥事への対応で分かります。
行動⑤:iDeCoやつみたてNISAなど、自分の財産を自分で作る努力を続ける
国に頼りきりになるのではなく、自らの手で資産と自由を作りましょう。
関連動画
→ 【2022年からほぼ全員対象】iDeCoは老後資金問題の解決策になるのか?よくある質問6つに回答(アニメ動画)
行動⑥:マイクロ法人を設立して、社会保険料を最適化する
マイクロ法人は、社会保険料を最適化する「最強」の方法です。
詳しくは、過去動画を参照してください。
自分にできる取り組みをしつつ、必要な申請や主張をすれば、自分の年金を守り、「豊かなリタイア生活を送ること」につながるでしょう。
- 自分の年齢や家族構成などに応じて、もっとも有利な制度を自ら申請する
- 万が一、自分の年金に何かがあった時には、年金記録をもとに主張する
まとめ:お金の世界はどこまで行っても自己責任、自分の頭で判断しよう!
今回は、「年金の事務処理ミス問題」に関して、以下の3つを解説しました。
- 年金の「振替加算」とは
- 厚生労働省の「事務処理ミス問題」とは
- どうやって自分の年金を守るべきか
振替加算とは、夫(妻)の「加給年金(厚生年金版の“家族手当”のようなもの)」を配偶者に振り替えて、加算する制度です。
1966年4月2日以降に生まれた人には振替加算はありません。
厚生労働省は2017年に、約598億円もの年金支給漏れを公表しました。
その際、約45,000人は「対象外であり、支給漏れではない」としましたが、訴訟を起こした7人に対しては主張を認めて全額支給しています。
年金制度の不祥事が相次ぐ中、私たちが取れる選択肢は極端な2つだけではなく、適正なリスクを取る第3の選択肢もあるのです。
- ①年金制度から脱退する(保険料を未納にする)
- ②国を信頼して、言われた通りにする
- ③1と2の間で、自分が納得する立ち回りをする
リベ大のスタンスは③ですし、皆さんにも③をおすすめしますが、①や②を選ぶ人がいるのも理解できます。
「こんな制度、信用できるか!不祥事がおきても、誰も責任とらないじゃないか!」
「いちいち調べられない。めんどくさいから言うこと聞いておくよ」
どちらかのスタンスを支持する人がいるのも不思議なことではありません。
ちなみに今回は、朝日新聞の記事をもとに解説をしました。
本来であれば、他の新聞でどう報じられたかを、比較対象として見ておきたかったところです。
新聞社にはカラーがあるので「事実部分が、本当に事実なのか」「取材内容は、本当に公平なのか」など、情報はいくつか見比べて判断するようにしましょう。
「年金制度は終わってる!」と叫ぶ人についていき、もし自分が無保険で地獄を見ることになっても、責任をとるのは自分です。
その一方で「年金制度は大丈夫だ!」と叫ぶ人についていき、もし年金制度が破綻することになっても、責任をとるのは自分です。
お金の世界は、どこまでいっても自己責任の残酷な世界なので、自分で情報を集めて、自分の頭で考えていきましょう。
リベ大では信頼できる情報を集めて、リベ大の意見として発信していますが、決してこれが正解というワケではありません。
以上、こぱんでした!
「お金にまつわる5つの力」を磨くための実践の場として、オンラインコミュニティ「リベシティ」をご活用ください♪
同じ志を持った仲間と一緒に成長していきましょう!
140万部発行された、「お金の大学」。
情報を最新化・新規コンテンツ追加して【改訂版】としてパワーアップ!(なんと52ページ増量!)
貯める・増やす・稼ぐ・使う・守る…一生お金に困らない「5つの力」の基本をまとめた一冊!
▼「老後対策についてもっと知りたい!」という方に読んで欲しい記事がこちら!