リベ大は情報発信を始めて以来、簿記を学ぶ大切さを伝え続けてきました。
なぜなら、簿記3級の知識は全員が身につけるべき「お金の基礎・教養」と言えるからです。
▼図解:FPと簿記を学ぶべき5つの理由
簿記の大切さを発信し続けてきた結果、以下のような報告をしてくれる人が増えました。
簿記3級に合格しました!
簿記を勉強中です!
簿記を学んだおかげで、経済ニュースがよく分かるようになりました!
そこで今回の記事では、簿記を学んだ人だからこそピンとくるバランスシートにまつわる金言5選を解説します。
バランスシートとは、個人事業主や会社が作っている資産と負債の一覧です。
幸せなお金持ちは、例外なく良いバランスシートを持っています。
今回の記事を読めば、良いバランスシートとはどのようなものか学べ、幸せなお金持ちに近づけるでしょう。
「簿記なんて全然知らないよ!」という人にもできる限り面白く、分かりやすく解説しています。
多くの人が今回の記事をきっかけに簿記への興味を持ってくれると嬉しいです。
目次
解説動画:【5選】経営者・幸せなお金持ちだけが知っている「バランスシートにまつわる金言」を徹底解説
このブログの内容は下記の動画でも解説しています!
バランスシートにまつわる金言5選
バランスシートにまつわる金言5選は、以下の通りです。
- ①バランスシートは豊かさを映す鏡である
- ②バランスシートは小さいほうがいい
- ③バランスシートを見ると社長の性格が分かる
- ④バランスシートは複数の顔を持つ
- ⑤バランスシートは他人に見せるな
金言①:バランスシートは豊かさを映す鏡である
金言1つ目は、「バランスシートは豊かさを映す鏡である」です。
皆さんはバランスシートと損益計算書では、どちらがより大切だと思いますか。
- バランスシート:資産と負債を一覧にしたもの
- 損益計算書:1年間の売上や利益といった経営成績を示したもの
会計士や税理士、コンサルタント、銀行員などお金の専門家に上記の質問をすると、口をそろえて「大切なのは、バランスシートだ」と答えるでしょう。
なぜなら、バランスシートこそが豊かさを映す鏡だからです。
では、具体例を交えて詳しく見てみましょう。
以下は、蔵王産業のバランスシート(2021年3月期)から解説に必要な数字だけピックアップした要約版です。
バランスシートの左側に記載されているのが蔵王産業が持つ資産の一覧、右上に記載されているのが負債の一覧です。
上記の蔵王産業のバランスシートを見てみると、以下のことが分かります。
- 31億円の「現金及び預金」がある
- 36億円の「有価証券」がある
- 8.5億円の「流動負債(=短期間で支払期限がくる負債)」がある
- 商品の仕入れ代金
- 未支払いの備品購入費用
- 未払いの税金
皆さんの生活で例えるなら「クレジットカード払いをして、まだ引き落としされていない代金」が負債になるイメージです。
蔵王産業は流動負債の合計が8.5億円あるものの、その約7.9倍である67億円もの現預金や有価証券を保有しています。
このことからも、蔵王産業は資金繰りに大きな余裕があるのが分かるでしょう。
上記の状態を皆さんの家計で例えると「引き落としされていないクレジットカード払いが10万円残っているけれど、預金口座にはその7.9倍の79万円が入っている」状態と言えます。
ちなみに、蔵王産業の損益計算書(2021年3月期)によると、年間の売上高は約71億円で、税金を払った後に会社に残る利益は約8億円です。
上記の損益計算書の情報だけで、皆さんは蔵王産業が優良企業かどうか判断できますか?
皆さんの中には「売上に対して10%以上の税引き後利益が残っているのだから、蔵王産業は優良企業だ」と考える人もいるでしょう。
しかし、損益計算書の数字だけを見ても、蔵王産業が優良企業かどうかは分かりません。
なぜなら、バランスシートを見ると財務状況がボロボロかもしれないからです。
- 現預金がほとんどない。
- 売れ残った大量の在庫を抱えており、今後も売れる見込みがない。
- 建物や機械設備が古くなっている。
- 取引先へのツケがたまっている。
- 銀行から多額の借金をしている。
バランスシートは、ストックの情報です。
創業50年の企業の場合、1枚のバランスシートには50年分のデータが蓄積されていきます。
そして、強固なバランスシートは3匹の子豚で言うレンガの家のような安定感があり、基本的にずっと引き継がれていきます。
だからこそ、バランスシートは「豊かさを映す鏡」になりうるのです。
一方で、損益計算書はフローの情報です。
損益計算書には1年分の売上と利益のデータしか記載されません。
つまり、今年に過去最高益を達成しても、来年にその利益のデータは持ち越せないのです。
そのため、損益計算書に記載されている数字には、達成感や充実感はあっても、心地良さは感じられないでしょう。
損益計算書が良くない状態でも、豊かな人はたくさんいます。
実際、日本の富裕層が持つ「プライベートカンパニー」は、以下のようなケースが多いです。
- 損益計算書:毎年-100万円~+100万円の利益しかなく、決して良い状態ではない。
- バランスシート:5億円の純資産(資産から負債を引いたもの)がある。
金言②:バランスシートは小さい方がいい
金言2つ目は「バランスシートは小さい方がいい」です。
金言①「バランスシートは豊かさを映す鏡である」を読んで、以下のように思った人も多いでしょう。
しかし、上記は大きな勘違いであり、むしろバランスシートは小さいほうが良いのです。
なぜ、バランスシートは小さいほうが良いのかというと、バランスシートには維持費がかかるからです。
実際、「会社の総資産額は少ないほうがいい」という本も出版されています。
では、具体例を見てみましょう。
以下は、トヨタ自動車のバランスシート(2021年12月期)から解説に必要な数字だけピックアップした要約版です。
バランスシートによると、トヨタ自動車は以下の資産を保有しているのが分かります。
- 在庫(販売する目的で保有している車や部品など):3.5兆円
- 土地:1.3兆円
- 本社や工場などの建物:5.1兆円
- 自動車などを作るための機械装置:13.3兆円
上記のトヨタ自動車の資産を見て、「すごい!たくさん財産がある!」と思った人もいるでしょう。
しかし、これらの資産には莫大な維持費がかかるのを認識しなければいけません。
- 3.5兆円もの在庫を保管するための費用や保険料。
- 1.3兆円もの土地に毎年かかる固定資産税。
- 5.1兆円もの建物にかかる固定資産税や電気代、修繕費。
- 13.3兆円もの機械装置にかかる部品交換費や修理等の保守料。
上記のような有形資産だけでなく、売掛金(モノ・サービスを販売したものの、取引先から受け取っていないお金)のような金銭債権も、多ければ多いほど維持費がかかります。
なぜなら、多くの売掛金があるということは、多くの取引先があると言え、多くの取引先に対応するには多くの従業員が必要となるからです。
このように、会社の資産や取引先、従業員が増えれば増えるほど、社長の責任は重くなっていくのです。
そのため「適正なサイズのバランスシート」を作れる人は、以下のことを理解していると言えるでしょう。
- バランスシートは、維持費がかかる。
- バランスシートの大きさが社長の器を越えた時、会社は崩壊し始める。
ちなみに「バランスシートは小さい方がいい」という金言は、家計管理にも応用できます。
なぜなら家計においても、多くのモノを持つと様々な維持費や管理のための時間が必要になるからです。
家計管理で維持費に負けないためにも、以下のことを念頭においてください。
収益性の低い資産は、できる限り持たない。
現金化できない資産は、できる限り持たない。
管理対象となる資産の種類は、できる限り増やさない。
金言③:バランスシートを見ると社長の性格が分かる
金言3つ目は「バランスシートを見ると社長の性格が分かる」です。
バランスシートを見ると、社長がどのような性格かはっきりと分かります。
- ミニマリスト
- 見栄っ張り
- リスクテイカー
- 安全志向
- だらしない
では、だらしない社長が使う勘定科目3選を紹介しましょう。
- 1位:仮払金
- 2位:役員貸付金
- 3位:立替金
仮払金とは、使途が不明だったり、金額が未確定だったりする時に使う仮勘定(帳簿整理のため一時的に記帳しておく勘定科目)です。
仮勘定である仮払金がバランスシートに残り続けるのは、以下のような事例があげられます。
→ 経理担当者は領収書をもらうまで正確な使途と金額が分からないため、出金した30万円をいったん仮払金として処理する。
【後日】
「社長、先日の接待で使った領収書をください。」 (あ、違うモノに使ったんだ…。)「先方が領収書くれなかったから、交際費にしておいて。」 「どこのお店に行かれたのですか?取引先の人は何人おられましたか?」 「もう忘れちゃったな。あ、もう打合せの時間だ。」 「あ、社長!」→ 接待費としての領収書がないため、経理担当者は仮払金の振替ができない。
「仮払金が残っている社長はだらしない」っていうのも、良く分かったよ。
また、2位の「役員貸付金」と3位の「立替金」は、以下のようなケースで使われます。
- 役員貸付金:社長が会社のお金を借りる。
- 立替金:会社の通帳から清算されるカードで、社長の個人的なものを購入する。
役員貸付金や立替金が多いと、銀行や税務署から「この社長は公私混同している」「会社のお金と自分のお金を一緒にしている」と判断されます。
当然、お金にキッチリしている社長は、役員貸付金や立替金は基本的に使いません。
では、バランスシートの資産の欄に、以下のような固定資産がたくさん記載されている会社の社長はどのような性格だと思いますか?
- 土地や建物
→ 例:本業と無関係の賃貸用不動産
- 投資有価証券
→ 例:長期で運用する株式や債券
- 投資その他の資産
→ 例:ゴールドや宝石、絵画、骨董品などの投資商品
- 会社以上に個人資産を大切にしている。
- 「お金持ちになりたい」という蓄財欲求が強い。
- 「貯めたお金を失いたくない」という防衛本能が強い。
- 見栄っ張りで押しに弱く、銀行におだてられてお金を借りてしまったり、社長仲間の投資話につい乗ったりしてしまう。
一方、本業だけに集中している社長は、不動産や絵画といった経営に関係ない資産は一切持ちません。
なぜなら、以下のように考えるからです。
- 「最も良い投資先は、自分のビジネスである。」
- 「最も大きく育てたいのは、自分のビジネスである。」
- 「最も経営に必要なのは現金であって、お金に換えにくい固定資産ではない。」
金言④:バランスシートは複数の顔を持つ
金言4つ目は「バランスシートは複数の顔を持つ」です。
先ほどから「バランスシート」と一口で解説してきましたが、実はバランスシートには複数の顔があります。
- 会計
- 税務
- 清算価値
では、具体例を見てみましょう。
以下は、任天堂のバランスシート(2021年3月期)から解説に必要な数字だけピックアップした要約版です。
左側の資産を見ると、「土地:348億円」と記載されています。
さて、ここで皆さんに問題です。
記載されている「土地:348億円」とは何の金額でしょうか?
- ①バランスシートの基準日時点での市場価格(時価)
- ②購入した時の価格(簿価)
- ③国の基準で評価された土地の価格(路線価や公示価格など)
正解は「購入した時の価格」なんだ。
つまり、バランスシートに記載されている「土地:348億円」は、購入した時の価格になるので、2022年5月現在の土地の価値は400億円かもしれないし、300億円かもしれないのです。
では、「投資有価証券:2,148億円」はどうでしょうか。
「購入時の値段」でしょ!
日本のルールでは、バランスシートに載せる金額は「基本的に簿価(購入時の価格)、一部が時価(市場価格)」となっています。
つまり、実際にはバランスシートに記載されている通りの価値があるかどうか分からないのです。
そのため、銀行が融資判断する際には、以下のような視点でバランスシートを確認します。
→ この会社は資産より負債の方が多いから融資できない。
以下のバランスシートの顔は、すべて違うものと言えます。
- 決算で作ったバランスシートの顔
- 時価評価されたバランスシートの顔
- 税金を申告するために作ったバランスシートの顔
このようにバランスシートには複数の顔があると理解している人は、「本当の実態はどうなんだ?」という視点を持ち、注意深く確認します。
では、皆さんの家計の純資産を時価(市場価格)で評価すると、現時点で一体いくらになるでしょうか?
- マイホームの土地および建物
- マイカー
- 保有している貴金属や宝石などのアクセサリー
金言⑤:バランスシートは他人に見せるな
金言5つ目は「バランスシートは他人に見せるな」です。
バランスシートは、決して赤の他人に見せてはいけません。
なぜなら、バランスシートを見せるのは自分の手の内をすべて晒すようなものであり、とても危険だからです。
実際、以下の場面では真っ先にバランスシートが確認されます。
- 監査法人による会計監査
- 税務署による税務調査
- 相手先企業を買収するかどうかの検討時
- 豊かさのレベル
- 社長の性格
- 抱えている問題
だからこそ、バランスシートは本当に信頼している人にしか見せてはいけません。
迂闊に信頼できない人にまで見せてしまうと、高確率で「トラブルの種」になるでしょう。
バランスシートは皆さん全員が持っているものです。
これから先「私のバランスシートを良くして!」と誰かに頼りたくなる時もあるかもしれません。
しかし、先ほどもお伝えした通り、赤の他人に自分のバランスシートを見せるのは高確率でトラブルの元になります。
皆さんが自分のバランスシートを良くするには、基本的に自分でマネーリテラシーを高めるしかないのです。
まとめ:簿記を学んで美しいバランスシートを作ろう
今回の記事では、「バランスシートの金言5選」を紹介しました。
- バランスシートは豊かさを映す鏡である
- バランスシートは小さいほうがいい
- バランスシートを見ると社長の性格が分かる
- バランスシートは複数の顔を持つ
- バランスシートは他人に見せるな
損益計算書よりバランスシートの方が、より重要性が高いと言えます。
なぜなら、バランスシートには創業からのデータが蓄積されており、豊かさを映す鏡になるからです。
実際、損益計算書では赤字であるにも関わらず、バランスシートでは莫大な純資産があるお金持ちはたくさんいます。
会社の資産や取引先、従業員が増えれば増えるほど、維持費がかかります。
そのため、バランスシートは小さい方が良いのです。
バランスシートを見れば、「だらしがない」や「見栄っ張り」といった社長の性格が分かります。
成功する社長と失敗する社長のバランスシートでは、それぞれ明確な共通点があります。
バランスシートは会計用や税務用など、複数の顔を持っています。
その中でも、リベ大が最も重要度が高いと考えるのは、解散価値を示すバランスシートです。
なぜなら、資産をすべて時価評価して売り払い、負債をすべて返済した時に手元に残る現金こそが、今の会社財産を表すリアルな数字だからです。
バランスシートは、門外不出の極秘事項です。
他人に見せると、あらゆるトラブルを招く可能性があります。