こんにちは、こぱんです!
リベ大では、正しい節約と節税で支出のバランスをコントロールする「貯める力」に関する情報を発信しています。
▼図解:貯める力
誰もが経済的自由を目指せると伝えているリベ大には、色々な質問や相談が届きます。
その中で今回は、賃貸物件の退去費用に関する質問を見ていきましょう。
例えば、クロス全面張り替えを要求されました。退去者が新品価格で負担する義務があるのでしょうか?」
「退去立ち会いでサインしないと退去は完了しない、と立ち会いを強制させられました。退去立ち会いは本当に必要ですか?」退去費用は、賃貸物件で特に多いトラブルの一つです。
今回届いた質問のように、本当は負担の必要がない費用を請求されたり、不利な状況にさせられたりといったケースも多々あります。
また、知らぬ間に損していたこともあり得ます。
今回の記事では、退去費用に関する情報を以下のようにまとめました。
- 退去費用とは何か?
- 退去費用でぼったくりが起こりやすい理由
- 退去費用を安くできる5つの理由
- 退去費用を安くする手続きの具体的な手順と注意点
知識をしっかり身につけておけば、退去時のトラブルを減らせて退去費用は低く抑えられるでしょう。
また入居中に火災保険を活用すれば、退去費用をゼロにできる可能性もあります。
今回の記事では、支払う必要のない費用を請求することで儲けようとする、悪質な不動産業者(管理会社や立ち会い業者)が少なからず存在していることをお伝えします。
全ての業者が悪質というわけではなく、健全な不動産業者も数多くいるという点、ご承知おきください。
目次
解説動画:【ほぼ無料に出来る】賃貸物件の退去費用をとことん安くする方法
このブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
退去費用とは何か?
退去費用とは「退去時に自分の過失で発生した傷みや汚れを元に戻して返す費用」、つまり原状回復費用のことです。
原状回復について、「借りた当時の状態に戻すために新品にする」と勘違いしている人も多いでしょう。
しかし、正しくは「普通に生活して発生する傷みや汚れ以外の消耗を現在の価値まで復旧すること」です。
普通に使って汚れたり擦れたりする分は、基本的に退去者が負担する必要はありません。
原状回復義務は賃貸契約書に記載されていることが多く、この原状回復の範囲をめぐってトラブルが起きがちです。
全て新品に直す必要があるので〇万円払ってください。」
フローリングの傷は元々ついてましたし、私が全額負担するなんて聞いてません。
まずは敷金を返してください!」
国民生活センターに寄せられた賃貸物件トラブルの相談でも、年間12,048件(2020年度)と多いです。
(参考:独立行政法人国民生活センター「賃貸住宅の敷金・原状回復トラブル」より)
賃貸物件から退去した経験がある人は、退去費用が高いと感じたことも多いのではないでしょうか?
例えば、クロス代やフローリング補修費用、鍵交換費用という名目で支払っていれば、知らずに損している可能性があります。
退去費用でぼったくりが起こる理由
不動産業界には「入居者と管理会社・立ち会い業者」の間で情報格差があり、ぼったくりが起きやすい業界構造となっています。
情報格差を利用して、退去費用を必要以上に多く請求することで儲けている人たちも存在するのです。
- オーナー
- 仲介業者(管理会社や立ち会い業者)
オーナーは、退去後にリフォームやクリーニングが必要なため、かかる費用を退去者に負担をさせたいと考えます。
もちろん退去者である皆さんは、なるべく退去費用を安くしたいと考えるので、意見が分かれること自体はやむを得ないでしょう。
ただ、より重要なポイントは、仲介業者が退去費用をぼったくるケースがあることです。
悪質な業者の場合、退去者が支払う必要のない費用を請求することで儲けようとするのです。
中には退去者にもらった費用を、オーナーに連絡もせずに自分たちのものにする業者もいます。
理由のひとつとして、管理会社が儲けを出しにくいことがあげられるでしょう。
→ 10万円の家賃でも毎月5,000円の儲けのみで、家賃管理や入居者とやり取りをする。
まともな業者なら、健全な企業努力の中で利益を出すでしょう。
しかし、悪質な業者の場合、本来支払う必要のない各種費用を退去者に負担させて儲けようとします。
また、あえて相場より高い金額で、リフォーム費用やクリーニング費用を得意先に頼んでキックバックを受け取ることもあります。
中には退去費用をノルマにしている会社もあるんだよ^^;
ちなみに、管理会社が立ち会いを別の業者に委託している場合があります。
委託業者が国土交通省の賃貸借契約のガイドラインを無視して、修繕費の上乗せや必要のない修繕項目をでっちあげて請求する場合もあるのです。
例えば、何かと理由をつけて全面リフォームが必要と主張して、ワンルームの退去費用で30万円~40万円を請求するような事例も少なくありません。
退去費用を安くできる5つの理由
退去費用や原状回復費用を安くできる理由は次の5つです。
- ①原状回復は借りた当時の状態に戻すことではない
- ②故意・過失で傷つけた箇所の負担は原則残存価格のみ
- ③故意・過失によるものでも、壊れた個所を負担するだけでいい
- ④自分の過失でつけた傷は火災保険で回復できる
- ⑤特約に記載されていても無効な契約が多い
理由①:原状回復は借りた当時の状態に戻すことではない
原状回復は借りた当時の状態に戻すことではありません。
入居者が修繕するべきかを考える損耗には、2種類あります。
- 自然損耗:入居者が負担しなくてよい
- 入居者の故意・過失による損耗:入居者が負担する必要がある
自然損耗
自然消耗とは、日常生活を送っていて、自然に減っていく価値の部分となります。
この修繕費用は家賃に含まれており、オーナーが負担するものです。
- 経年による壁紙の黄ばみ
- 家具設置によるフローリングのへこみ
- 畳の日焼けやすり減り
借り主の故意・過失による損耗
故意や過失による損耗は、入居者が負担(原状回復)すべき部分となります。
- タバコのヤニの汚れや焦げ跡
- ものをぶつけてできた破損
- 子供の落書き
裁判所の見解も、原状回復は建物の通常損耗分を元の状態への回復ではなく、賃借人の故意・過失等による劣化の回復となっています。
また、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも以下のように掲載されています。
原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化
(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドラインについて」より抜粋)
理由②:故意・過失で傷つけた箇所の負担は原則残存価格のみ
残存価格とは、ものに残っている現在の価値です。
例えば、オーナーが6年前に新品10万円でクロスを購入した場合、減価償却によって現在の残存価格は1円になります。
1円のものには価値がほぼないので、退去者が傷をつけても、原則費用を負担する必要はありません。
※張替えにかかる人件費等は別途負担が必要です。
3年前に新品だったクロスを傷つけたときの負担は、残存価格である5万円となります。
床や壁なども全て同じ考え方で、残存価格のみ払えばよく、新品の価格を払う必要はありません。
東京都住宅政策本部のガイドラインにも、下図のように価値の変化が明記されています。
なお、価値がなくなる年数は、設備ごとに耐用年数で決まっています。
- 流し台:5年
- 畳床やカーペット、クッションフロア:6年
- 便座や洗面台などの給排水・衛生設備:15年
理由③:故意・過失によるものでも壊れた箇所を負担するだけで良い
残存価格が残っているものを傷つけてしまったら、全体ではなく、傷がついた箇所の修繕費用を負担することになります。
- フローリングの1枚単位で張り替えれるものなら1枚のみ
- クロスは最大で1面まで
- クッションフロアなら1面まで
基本は壊れた箇所を平米単位で確認しますが、境目はケース・バイ・ケースです。
しかし、1面であればさほど高額にはならないでしょう。
もちろん、負担金額は先ほど解説した通り、新品価格でなく残存価格となります。
壁1面張り替えるのに2万円かかったとしても、3年住んでいたら半分の1万円の負担です。
理由④:自分の過失でつけた傷は火災保険で回復できる可能性がある
自分の過失でつけた傷を補償する火災保険とは
火災保険の補償内容に「借家人(しゃっかにん)賠償」の「不測かつ突発的な事故(破損・汚損)」がついていれば、過失による傷も補償してくれます。
ほとんどの火災保険には「借家人賠償責任補償」もしくは「個人賠償責任補償」がついています。
- 借家人賠償責任補償:オーナーに対して損害を与えてしまったときの費用を補償
- 個人賠償責任補償:日常生活で自分や家族が他人にケガを負わせたり、他人の物を壊したりしたときの費用を補償
他の保険やクレジットカードの特約などで重複加入していないか確認しましょう。
ただし、借家人賠償責任補償がついていても、必ずしも過失でつけた傷を補償してくれるとは限りません。
貸主に対する賠償責任補償のみで、オーナーへの補償を狭くして不慮の事故を補償しない保険もあるのです。
- オーナーへの補償は対象外
- 破損は1万円までの免責
- 火災や風災、水害のみ対応
なお、不動産会社(仲介業者や管理会社)の指定で加入した火災保険は、破損・汚損の補償がないなど、補償が薄いケースもあります。
さらに、不動産業者への紹介料が含まれていることから、同程度の補償内容の火災保険よりも割高になりやすいのです。
契約書の特約で記載されない限り、指定の火災保険の加入は強要できません。
ぜひ加入している火災保険の内容を確認しましょう。
ちなみに、破損・汚損の補償の有無によって、年間で保険料に5,000円~8,000円ほど差があります。
火災保険の補償を活用する
皆さんが加入している火災保険に「借家人賠償」の「不測かつ突発的な事故(破損・汚損)」がついていれば、オーナーに損害を与えたときの費用を保険会社が負担してくれます。
▼図解:無料で賃貸物件を直す方法
- 子供が目を離した際に、壁に落書きをしてしまった
- 物を落として洗面台を壊してしまった
- 意図せず物が倒れて設備が壊れてしまった
火災保険は何回使っても保険料が上がりません。
ただし、入居中しか使えず退去時には使えないので、傷をつけたときにその都度連絡しなくてはいけません。
理由⑤:特約に記載されていても無効な契約が多い
きれいに使っていて修繕箇所はないのに、以下の内容で10万円近く請求されてしまうケースがあります。
- ハウスクリーニング代
- エアコンクリーニング代
- 退去時の鍵交換代
納得いかないことを伝えても「特約に記載されてますし、入居時に説明してサインしましたよね?」と言われて泣き寝入りする人も少なくありません。
実はその特約のほとんどは無効である可能性が高いです。
▼図解:特約は無効?!賃貸の退去費用を下げる方法
あくまで原状回復は、借りていた人が故意・過失で壊してしまった箇所を負担するものとなります。
次に住む人のための費用は、基本的にオーナーが負担すべきものです。
しかし、特約でお互いが合意すれば問題ないことを逆手に、特約に何でもかんでも記載して、不利な条件で契約させるケースもあるのが不動産業界の現状です。
例えば、美装費用も特約に書いてあっても認められません。
- 具体的な金額が書かれていること
- 契約者がきちんと内容を認識していること
- 論点となる特約のページに記名押印があること
3つの条件すべてが揃っていない項目は、法律上無効になる可能性が高いです。
特に論点となる特約のページに記名押印があることは大きなポイントです。
契約書の最初と最後に記名押印していても、特約のページ自体に記名や押印がなければ、その特約は無効になります。
実際に、3つの条件のうち2つ満たしていても無効とした最高裁の判例(平成17年12月16日)もあるのです。
退去費用を安くする手続きの具体的な手順と注意点
前章「退去費用・原状回復費用を安くできる5つの理由」の知識を身につけたとしても、先に正しく牽制していかないと、悪質な管理会社や立ち会い業者のペースに飲まれてしまうかもしれません。
口が上手かったり、ゴリ押ししたりする交渉相手に対して大切なのは、やり取りを全て記録を残すことです。
そこで、業者とのやり取りは基本的にメールで行い、口頭や対面での会話は避けましょう。
どうしても口頭や対面が必要な場合は、録音することをおすすめします。
それでは、実際に退去手続きの具体的な手順と注意点を見て行きましょう。
- ①火災保険を使って直せる箇所は入居中に直しておく
- ②賃貸契約書を確認する
- ③解約通知(退去届)を送る
- ④退去日までに家具を全て出しておく
- ⑤退去日の立ち会いをする
- ⑥解約日までに鍵は返却する
- ⑦請求が来たら内容確認する
手順①:火災保険を使って直せる箇所は入居中に直しておく
まずは、皆さんが加入している火災保険の補償内容を確認しましょう。
先程も解説しましたが、補償に「借家人賠償」の「不測かつ突発的な事故(破損・汚損)」が含まれていれば、過失でつけた傷を補償してくれます。
ただし、退去時に火災保険を使って直すことはできません。
手順②:賃貸契約書を確認する
解約通知を誰にいつまでに送るのかを、賃貸契約書で確認しましょう。
一般的には管理会社に退去日の1カ月前までに連絡することが多いですが、2カ月前の場合もあるので注意してください。
手順③:解約通知(退去届)を送る
解約通知書は自分に不利な点がないか注意
解約通知書は契約書の最後にあることが多く、退去者にとって不利な内容で記載されやすいです。
- 原状回復費用は言われた通りの金額を支払います。
- 異議申し立ては一切致しません。
- 退去日までに鍵交換代とクリーニング代を事前に支払います。
中には斜線を認めないという立ち会い業者もいますが、嘘かその業者が知らないだけなので問題ありません。
必要ない手続きを立場を利用して強要することは、強迫にあたります。
もし解約通知書の内容を強迫されたら、記録として残しておきましょう。
そもそも解約通知書は、管理会社や立ち会い業者が用意した書式でなくても問題ありません。
解約通知書がない人は、自分が用意した書式で以下の内容を伝えれば良いです。
解約通知と退去日までに鍵の返却をもって、退去は完了することを伝える。
「○○マンション○○号室の〇〇です。
○月○日を持って、○○マンション○号室の契約を解除します。
鍵は○日までに返却致します。」
解約通知書に盛り込む内容
解約通知書に盛り込む内容は以下の6つです。
- 今後のやり取りは全てメールでする
- 入居時からあった傷を事前に指摘する
- 退去立ち会いを避けたい人は退去立ち会いしないと記載する
- 退去費用の請求は「ガイドライン」に沿って行うようにお願いする
- 特約は無効と主張する
- 金額は専門家に確認してから返事する
自分のメールアドレスを記載して、今後のやり取りは全てメールとお願いしましょう。
メールでの記録を残すことで、「言った・言っていない」というトラブルを防止できます。
電話をかけてきて直接やりとりしようとする業者もいますが、無視するか専門家からのアドバイスですと言い切り、断って問題ありません。
入居時からあった傷は事前に指摘しておきましょう。
ここでも記録を残すためにメールで連絡することをおすすめします。
電話で事前に伝えたとしても、退去時に「そのような話は覚えていません」と言われるかもしれないからです。
退去立ち会いを避けたい人は、解約通知書に退去立ち会いはしないと記載できます。
法律やガイドラインにも、退去立ち会いが必須とは記載されていないのです。
また、立ち会い時のトラブルも多いことから、リベ大としてもおすすめしていません。
→ 中には強面の人が来て、サインするまで帰さないと脅されたりする場合がある。
→ 各種費用を認めることになるので、後から変更するのが難しい。
もちろん、退去立ち会いを希望する不動産業者のうち、悪質な業者は一部です。
退去立ち会いを断ることで、健全な不動産業者から不審に思われるリスクもあります。
「退去立ち会いはしない」という選択肢があるこ