
2022年12月22日、新しい全世界株ファンドが誕生しました。
その名も「楽天・全世界株式(除く米国)インデックス・ファンド」、愛称は「楽天・VXUS」です。
特徴的なのは、このファンドが「米国株を投資対象から外している」ことです。
このファンドは、S&P500や全米株ファンドをメインで投資している人が、リスク分散のためにトッピングするためのファンドです。
このファンドをトッピングすれば、以下のようなポートフォリオが作れます。
現状、米国株を含む全世界株ファンドの内訳は、ざっくり「米国株60%:その他全世界株40%」になっています。
つまり、全世界株の詰め合わせパックを買ったとしても、米国株が60%を占めているワケです。
もちろん現状では、アメリカがステーキという状態になっています。
もし、皆さんがこれよりも米国株を多くしたり、少なくしたりしたければ、「S&P500(or 全米株)+ 楽天・VXUS」で調整すれば良いというワケです。
要は、ステーキ定食を注文していた人が野菜定食を合わせて注文することで、良い感じのバランスになるイメージです。
ちなみにこのファンドは、つみたてNISAの対象ファンドにもなっています。
金融庁が「これは良いものだ」と認める優良ファンドということです。
そこで今回の記事では、以下の2点について解説します。
楽天・VXUSの基本5選
ぶっちゃけ、おすすめできる?判断ポイント5選
アメリカの投資家は、世の中を「俺(アメリカ)か、俺(アメリカ)以外か」のように見ています。
「米国株 + 楽天・VXUS」の投資は、「世界標準 = アメリカ標準」という目線での投資です。
現時点では、グローバルで考えるというのは、アメリカを基準として考えるということです。
今回の記事を読んでもらうと、間違いなく皆さんの金融リテラシーはアップします。
目次
解説動画:【これはアリ】S&P500や全米株集中投資の人が検討すべき「楽天・VXUS」について解説
このブログの内容は以下の動画でも解説しています!
楽天・VXUSの基本5選

楽天・VXUSの基本として、次の5点を解説します。
- 連動指数
- 運用総額
- 資産構成
- 運用コスト
- 過去の成績
基本①:連動指数

楽天・VXUSというファンドは、インデックスファンドです。
つまり、特定の指数(インデックス)に連動した成績を目指すファンドになっています。
どのような指数に連動するかは、まさにインデックスファンドの心臓部分です。
日経平均に連動するインデックスファンドや、アメリカのS&P500に連動するインデックスファンドなど、世界中にはさまざまな指数に連動するファンドがあります。
楽天・VXUSは「FTSE グローバル・オールキャップ(除く米国)インデックス」という指数をベンチマークにしています。
- 大型株、中型株および小型株まで網羅している。
- アメリカを除く全世界の株式市場の動向を表している。
- 時価総額加重平均型である。
時価総額加重平均型というのは、時価の大きい銘柄は多く、時価の小さい銘柄は少なく買うというものです。
このようにして「市場そのもの」を再現しているという特徴があります。
構成銘柄は、アメリカを除く北米、欧州および日本などの先進国株に加えて、中国やインドなどの新興国株を含みます。
世界中の株式に投資する有名な指数を、2つ紹介します。
リベ大でもたびたび紹介している優良ファンド、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、いわゆる「オルカン」のベンチマークです。
オルカンは、この指数に連動するように作られたファンドです。
小型株を含まない指数で、投資銘柄数は約2,900となっています。
こちらも、リベ大でたびたび紹介している優良ファンド、「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(=VT)」や「楽天・全世界株式インデックス・ファンド(=楽天VT)」のベンチマークです。
こちらは小型株を含む指数で、投資銘柄数は約9,500となっています。
世界の株式市場時価総額の、約98%をカバーしている指数です。
なお上記で紹介した2つの指数は、投資する銘柄数にずいぶん差がありますが、指数の成績差はほとんどありません。
今回は詳しく解説しませんが、「どちらが良いか?」ということは、それほど気にしなくても良いということです。
繰り返しになりますが、楽天・VXUSは「FTSE グローバル・オールキャップ(除く米国)インデックス」という指数をベンチマークにしています。
つまりこの指数は、小型株を含む、より広範な世界株指数「FTSE グローバル・オールキャップインデックス」から、米国株を抜いた指数というワケです。
全世界株詰め合わせパックから、米国株だけを抜いた指数です。
すでに存在している、この指数に連動しているファンドなどに投資するスタイルを採用しています。
その「すでに存在しているファンド」の名前が、「VXUS」です。
少しややこしいですが、本家VXUSというETFがあり、そのVXUSと同じように連動するように作られた投資信託が、「楽天・VXUS」になります。
本家VXUSが「ETF」で、楽天・VXUSは「投資信託」です。
ETFと投資信託はかなり似ていますが、少しだけ違います。
両者の違いについては、以下の過去記事も確認してください。
ややこしいのは、ETFの形で本家VXUSを直接買える一方、投資信託の形で楽天・VXUSも買える点です。
楽天・VXUSを買うと、本家VXUSを直接買うのに比べ、小分けにできたり、簡単に買えたりするイメージになります。
正式名称は、「バンガード・トータル・インターナショナル・ストックETF」という非常に有名なETFです。
とにかく、VXUSという野菜詰め合わせパックが売っているとイメージしてください。
基本②:運用総額

というワケで、「本当に有名なのか?」「本当に人気なのか?」本家VXUSの運用総額を確認しておきましょう。
2022年12月時点で、VXUSの運用総額は約6.6兆円です。
この数字からは、ハンパない規模のファンドと分かります。

(出典:日本経済新聞「純資産総額ランキング」)
- 1位:A・バーンスタイン・米国成長株投信D
→ 約1.67兆円
- 2位:eMAXIS Slim米国株S&P500
→ 約1.66兆円
- 3位:ピクテグローバルインカム株式F(毎月分配)
→ 約1.03兆円
上図のランキング10位以下の規模は、6,000億円くらいになっています。
このように比較すると、VXUSの6.6兆円という規模の大きさが分かるでしょう。
アメリカのETF全体で見ても、トップ30くらいに入る規模です。
世界最大級の資産運用会社、バンガードが推奨するだけあり、世界トップレベルの優良ファンドと言えるでしょう。
基本③:資産構成

VXUSの資産構成を見ていきましょう。
まず、投資先の国別割合は以下のようになっています。

(出典:バンガード「VXUS」)
- 日本:15.30%
→ アメリカを除けば、日本の株式市場時価総額は世界トップ。 - イギリス:10.20%
- カナダ:8.10%
- 中国:7.10%
- フランス:6.50%
- スイス:6.00%
- オーストラリア:5.30%
現状全世界株ファンドを買うと、その約6割はアメリカになります。
一方アメリカを除く世界では、各国の差はそれほど大きくないという結果です。

(出典:バンガード「VXUS」)
- 新興国市場:25.00%
- ヨーロッパ:39.60%
- パシフィック:26.70%
- 中東:0.60%
- 北米:8.10%(米国を除く北米 = カナダ)
分散投資の観点からは、バランス良く見えます。

(出典:Seeking Alpha「VXUS」)
- 金融:19.01%
- 資本財:13.22%
- 情報技術:10.72%
- 一般消費財:10.41%
- ヘルスケア:9.36%
ちなみにS&P500のセクタートップ2は、「情報技術:26%」「ヘルスケア:15%」です。
アメリカが抜けると、情報技術(IT)とヘルスケアの割合が落ちることが分かります。
- 1位:ネスレ 1.21%(スイス 世界最大の食品会社)
- 2位:TSMC 1.19%(台湾 半導体企業)
- 3位:ロシュHD 0.95%(スイス 世界的な製薬企業)
- 4位:シェル 0.84%(イギリス 石油・天然ガスなどを扱うエネルギー会社)
- 5位:サムスン 0.81%(韓国 世界最大の総合家電・電子製品メーカー)
ちなみに、9位には日本のトヨタ自動車(0.70%)も入っています。
VXUSの総投資銘柄数は、約8,000です。
ちなみにVXUSの上位5銘柄がファンド全体に占める割合は、約5%となっています。
上位5社の、お弁当詰め合わせパックに占める割合が5%と言うワケです。
つまり上位銘柄について、1つ1つの企業が大きいということです。
S&P500は「唐揚げも入っているし、ハンバーグも入っている」というように、1つ1つが主役級ということです。
このあたりの違いも、ざっくりと押さえておきましょう。
成長企業にベットしている強さや、分散度合いなどの点が、全く違うというワケです。
基本④:運用コスト

本家VXUSの経費率は、0.07%と激安です。
100万円投資した場合でも、年間700円のコストしかかかりません。
1日あたり約1.9円で、先ほど紹介したような企業に投資できるというワケです。
一方、楽天・VXUSの信託報酬は、年0.132%(税込)となっています。
先ほどもお伝えした通り、楽天・VXUSは、本家VXUSなどへの投資を通じて、「FTSE グローバル・ オールキャップ(除く米国)インデックス」への連動を目指すファンドです。
したがって投資家が負担する実質的なコストは、本家VXUSの経費率0.07%に、楽天・VXUSの信託報酬0.132%を足し合わせた0.202%くらいになるイメージです。
「本家VXUSの方が、コストが低くて良い!」と感じる人もいるでしょうが、投資信託には投資信託の良さもあります。
投資信託のメリットと呼べる点を、いくつか紹介します。
楽天・VXUSは、購入時の手数料が無料です。
一方の本家VXUSは、取引手数料がかかります。
楽天・VXUSの買い付けにあたっては、円をドルに換える必要がありません。
もちろん最終的にはドルに換えて投資されますが、購入時は円が使用できます。
一方の本家VXUSはドルで買う必要があるため、買い付けにあたり、円をドルに換える際の為替手数料がかかります。
楽天・VXUSは、おそらく無分配の投資信託になるでしょう。
つまり、配当金が自動で再投資される形のファンドです。
その際に税金が課される他、再投資する場合、再度取引手数料や為替手数料がかかります。
配当金の再投資は、メリット・デメリットがあるので、一概にどちらが良いと言える話ではありません。
上記のように、ETFと投資信託では差があるので、この差も含めて評価してください。
楽天・VXUSの0.2%という実質コストは、「ギリギリ許容範囲」というイメージです。
「本家ETFと投資信託、どちらが良い?」という質問については、「初心者の人は投資信託の方がお手軽で簡単です」と回答します。
投資信託のお手軽さや、他に対抗馬となる投資信託がないことを考えると、検討候補としては十分なレベルにあると言って良いでしょう。
ちなみに、「バンガードのETFに投資する投資信託」としては、過去にも以下のようなファンドが発売されています。
- 楽天VT(全世界株)
- 楽天VTI(全米株)
- 楽天VYM(全米高配当株)
- SBI・V・S&P500インデックス・ファンド(楽天VTIと同じような、アメリカの詰め合わせパック)
実のところ、これらのファンドは若干コストが嵩みがちという特徴があります。
インデックスファンドは、指数にぴったりくっついていくのが正義です。
コストが高いと、指数とファンドの成績は、どんどん離れていきます。
ベンチマークにしている指数より、高くなっても低くなってもダメです。
もちろん歴の浅い投資信託もあるので、運用年数がもう少し長くならないと、指数との乖離についてはハッキリは分かりません。
基本⑤:過去の成績

実際のところ、VXUSのリターンはどうなのかについて見ていきましょう。
VXUSの成績(配当金は再投資)をチャートで見ると、下図のようになります。

(出典:PORTFOLIO VISUALIZER)
2011年12月末に10,000ドル投資すると、約18,000ドルに成長していることが分かります。(年利5.46%)
- 最も成績の良かった年:+27.45%
- 最も成績の悪かった年:-14.43%
- 最も成績の悪かった瞬間:-27.76%
ちなみに楽天・VXUSは、本家VXUSより0.13%ほどコストがかかるため、この分毎年リターンが悪化すると考えてください。
複利は、マイナスに対しても効きます。
上記の情報だけを見ると悪くないように見えますが、次は同期間で比較対象を追加してみます。

(出典:PORTFOLIO VISUALIZER)
- 緑色:S&P500連動ファンド
→ +13.50%のリターン
- 黄色:VEA(米国除く先進国ファンド)
→ +6.29%のリターン
- 赤色:VWO(新興国ファンド)
→ +3.25%のリターン
このように見ると、2010年代は「米国株に投資していたかどうか」が、リターンを大きく分けたことが分かります。
新興国オンリーだと年利約3.3%、米国除く先進国だけだと年利約6.3%です。
この2つを混ぜるとVXUSになり、年利約5.5%になります。
今回のようなデータを見ると、アメリカ以外の投資先が必要かどうか、悩ましく思える人も多いでしょう。
この状態では、アメリカ人投資家が世の中を「俺(アメリカ)か、俺(アメリカ)以外か」と考えるのも仕方ありません。
実際皆さんも、「楽天・VXUS、本当に投資するかどうか検討の余地があるの?」と気になっているはずです。
というワケで次は、楽天・VXUSが「おすすめできるのか?」「どのような人に向いているのか?」について、判断ポイントがどこにあるのかを解説します。
ぶっちゃけ、おすすめできる?判断ポイント5選

判断ポイントは、次の5つです。
- インデックス投資のリスク・リターンに納得しているかどうか
- 米国株の投資比率を自分で調整したいかどうか
- 機動的な取引をしたいかどうか
- インカムが欲しいかどうか
- 競合ファンドと比べてどうか
判断ポイント①:インデックス投資のリスク・リターンに納得しているかどうか

そもそも、ファンドには大きく2つの種類があります。
- インデックスファンド:日経平均株価やS&P500など、「指数」への連動を目指したファンド。
- アクティブファンド:「指数」を上回る成績を目指したファンド。
一見アクティブファンドの方が儲かりそうに見えます。
しかし、「長期的には、7割~9割のアクティブファンドがインデックスファンドに負ける」「インデックス投資の方が再現性が高く、万人向け」というのは、これまで何度もお伝えしてきた通りです。
しかし逆に言うと、短期的に見ればインデックスファンドを上回るアクティブファンドは存在し、長期で見た場合も1割~3割程度のアクティブファンドは、インデックスファンドに勝てるものがあります。
広く分散された株式インデックスファンドの期待リターンは、せいぜい年5%~7%ほどです。
これらを元に考えると、今後一年間のファンド価格は、およそ「-30% ~ +40%」のレンジに収まる計算になります。
外国株のファンドであれば、上記に加え、為替の値動きも影響することを忘れてはいけません。
もし皆さんが、「最悪の場合 -30%になるインデックスファンドよりも、-50%や -60%になっても良いから、もっと伸びしろのあるファンドが良い」と思うのであれば、ハイリスクなアクティブファンドも検討の余地があります。
リスクとリターンは、基本的には表裏一体です。
インデックスファンドのリスク・リターンが物足りないのであれば、アクティブファンドで攻める、という方法も1つの選択肢でしょう。
ちなみに少し違った見方として、事業投資でリスクを取る方が確率が高い、という考え方もできます。
今回紹介している楽天・VXUSは、ゴリゴリのインデックスファンドです。
「より攻めたい人」が積極的に投資するファンドではありません。
何度もお伝えしているように、楽天・VXUSは野菜詰め合わせパックのような投資です。
要する、にインデックス投資のリスク・リターンに納得できる人向けの選択肢になります。
判断ポイント②:米国株の投資比率を自分で調整したいかどうか

「インデックス投資の有効性、リスク・リターンの水準には納得しているものの、全世界株ファンドにはイマイチ納得していない」
「アメリカこそが最強だから、全世界株ファンドに入っている低成長の国には、そこまで投資しなくて良い。とはいえ、最近ちょっと”アメリカ以外”も気になっている…」
楽天・VXUSに投資するか否かの最も重要な判断ポイントは、「米国株の投資比率を自分で調整したいかどうか?」です。
オルカンのような全世界株ファンドに投資すると、現状ではおよそ「米国株60%:その他全世界株40%」のような状態になります。
全部詰め合わせのパックを注文したら、どうしてもアメリカというステーキが60%くらいになるイメージです。
「お肉は70%が良い!」「いや、お肉は40%くらいで大丈夫!」など、この比率を自分で調整したいかどうかです。
「VOO」や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」といったS&P500連動ファンド、「VTI」や「楽天VTI」といった全米株ファンドに投資している米国株投資家の中には、以下のように考える人がいるかもしれません。
しかし、アメリカとその他の国の比率を自分で調整できるとしたらどうでしょうか?
プレートの上に野菜は40%もいらないけど、10%くらいは入れたいというイメージです。
冒頭で解説した通り、楽天・VXUSをトッピングすれば、以下のようなポートフォリオを作れます。
上記のようなアレンジができるところに、楽天・VXUSの価値があります。
過去10年強、米国株のリターンは特に素晴らしいものがありました。
とはいえ、過去に成績の良かったものがこれからも良いとは限りません。
そして実際のところ、大切なのは過去よりも未来です。
- 米国株の期待リターン:4.7%~6.7%
- 全世界株(米国除く)の期待リターン:7.4%~9.4%
要するに、