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ガチャン
ツーツーツー...
目次
ワンルーム投資で儲かるのは誰か?
長谷工総合研究所が公表したレポートによると、ここ数年、投資用ワンルームマンションの供給戸数は高水準を維持しています。
首都圏では、2010年~2016年の間に供給量が1.53倍になりました。よく売れているということです。
- 2010年 4,583戸
- 2016年 7,028戸
いったい、この状況で儲かっているのは誰なのでしょうか?
ワンルーム投資に関わる登場人物達を見てみましょう。
登場人物紹介
主な登場人物はこの4人です。
- 販売会社・・・投資用ワンルームを作って、投資家に売っている人
- 管理会社・・・入居者の募集や建物の清掃などの管理を行っている人
- 銀行・・・・・投資家達にお金を貸している人
- 投資家・・・・投資用ワンルームを買って、人に貸して収入を得ている人
彼らのおサイフ事情をのぞいてみることにします。
1.販売会社の業績
こちらをご覧ください。営業マン4人合わせて年収8,000万円だそうです。
2014年頃、この挑発的なキャッチコピーで話題を呼んだのは日本エスリードというマンション販売会社です。大阪府ではトップクラスの供給戸数を誇る上場企業です。
2008年のリーマンショックをきっかけに、投資用マンションの販売は低迷していました。しかし、2012年以降のアベノミクスで徐々に持ち直してきたのです。
この広告が出た2014年は、業績が回復して調子に乗り始めた頃というわけです。
この勢いはとどまるところを知らず、最近の決算では過去最高の売上高を記録しています。6年前と比較すると、2倍以上の売上です。
※グラフ中の19.3Eは予測数値
では、他の大手販売会社(いずれも上場企業)の業績を見てみましょう。
ガーラマンションシリーズで有名な、エフ・ジェー・ネクスト[8935]。綺麗な右肩上がりです。売上高250億円から、3倍の750億円を目指す勢いです。
(出典:バフェット・コード)
お次はシノケングループ[8909]です。こちらも物凄い成長です。200億円程度しかなかった売上高が、たった数年で1,200億円になっています。
(出典:バフェット・コード)
上場して間もない、新参者のグッドコムアセット[3475]。女性公務員が主要顧客です。面白いところ狙ってますよね。
こちらも破竹の勢いで成長中です。
(出典:バフェット・コード)
2.管理会社の業績
その通りです。
管理会社の業績ということで、まずは日本管財[9728]の売上推移をみてみましょう。
「建てものを、ずっと、健やかに。」をキャッチフレーズに、ビル・マンション・公共施設などの管理業務を行っている会社です。
同じく、マンション管理事業・ビル管理事業・不動産管理事業などを行っている日本ハウズイング[4781]の売上推移もチェックしてみましょう。
これらの企業は投資用賃貸マンションの管理だけをやっているわけではありませんが、事業環境に追い風が吹いていることはお分かり頂けると思います。
ちなみに、非上場会社である日本財託についても、連結売上高は右肩上がりです。ここは投資用ワンルームマンションの管理でとても有名な会社です。社長さんが何冊も本を出しています。
(出典:日本財託HPより)
※今は夏です。
3.銀行の業績
まずは、「個人による貸家業」に対する銀行の貸出金残高の推移をみてみましょう。要するに、アパマンローンの残高推移です。
(日本銀行「時系列統計データ 検索サイト」より。
系列設定は「個人による貸家業/残高/銀行勘定、信託勘定、海外店勘定の合計/国内銀行」)
アパマンローンは、4%とか5%とか高い金利が取れますからね。現在は、マイナス金利になるほどの超低金利時代です。
地方銀行などは、高い金利がとれるアパマンローンでもやらないと、収益が苦しいというわけです。攻めなければ、死ぬ...!
そんなわけで、過剰融資を懸念した関係者達はこのようなコメントを出しています。
- 金融庁:
こうした動きが、経済・市場環境が変化した際に、金融機関の健全性に悪影響を及ぼさないか検証する - 全国地方銀行協会会長:
あまりに集中すればリスクがあるし、それによって不動産の価格が上がりすぎれば、リスクがあると思う - 日銀・金融機構局:
金融機関の信用リスク面の課題の一つ
(REUTERS「金融庁・日銀、アパートローンの監視強化 過剰供給リスクで」より)
まぁそういうことになります。銀行の時代が終わる、みたいな話がちらほら目立つようになってきました。生き残りをかけて、銀行も必死です。
個人投資家は儲かっているのか?
あぁ無情!中古ワンルームで失敗した個人投資家たち
ワンルーム投資に関しては、時折こういう記事が話題に上がります。
ある病院に医師として勤務するBさん夫妻は、2人で7戸の投資用マンションを所有していた。Bさん夫婦はいずれも30代半ばで、物件は節税を主な目的と称してそれぞれ独身の時と結婚後に購入した。
厳密な収支計算をしてみると、Bさん自身が年間35万円、奥さまは同72万円の持ち出し、つまり赤字になっていた。
年間100万円以上の赤字です。受け取った家賃からローンの支払い、管理手数料などの諸経費を差し引くと、マイナスになるということです。
ローン残債>売却額になっており、身動きがとれなくなってしまう人もいます。
地方でのセミナーで参加者から相談された中に、ある一家のご主人が、家族に黙って東京のワンルームマンションに投資していた事例があった。
一家で自宅の建て替え話を進めていたところ、問題の投資のローンが残っていたせいで新しいローンの審査が通らず、発覚したらしい。ご主人はそれこそ「老後の足しに」と思ったのかもしれない。
だが、遠隔地だからと物件を見もせずに投資を決めただけあり、立地も収益性もいまひとつ。しかもその時点での売り値はローンの残債分にも満たず、老後資金を取り崩して穴埋めしなければ売ることもできない状況だった。
不動産投資には「儲かっているか儲かっていないか計算するのが難しい」という側面があります。
知らぬうちに赤字を垂れ流しながら、気がついたらローン残債を下回る値段でしか売れなくなっている。そういうケースはままあります。
筆者の知り合いにも、そういう状態で身動きできなくなっている人がいます。幸い、すぐにキャッシュが回らなくなるほどではないですが、どこかで2~3百万円レベルの損切りが必要になるでしょう。
失敗事例があるのは、何もワンルーム投資に限った話ではありません。
しかし、
- 一棟モノのアパート・マンションの不動産投資
- 株式投資
この2つと違って、ワンルーム投資でめっちゃ儲けてる!とか、億万長者になった!という人をほとんど見かけないのがこの投資方法の特徴です。
つまり、そういうことです。
芦沢晃さんのような成功者もいる
とはいえ、バランスをとるために、成功者も紹介しておきましょう。
ワンルーム投資の第一人者と言えば、芦沢晃さんです。
- ワンルーム投資一筋で大家歴20年以上
- 無借金で50室を越えるワンルームを所有
- 家賃収入は3,000万円超
サラリーマン歴は30年を越えており、長く兼業で成功をおさめてきました。戦略的にやればここまで事業拡大できるという貴重なモデルケースです(なお、芦沢氏がワンルーム投資を始めたのは1990年代)。
さて、販売会社によって分譲された新築ワンルームは、その後『中古ワンルーム』となり投資家たちの間で売買されることになります。
アベノミクス以降の中古ワンルーム市場を、芦沢さんの目線で見てみましょう。
- 明らかな売り時(熟練の投資家は皆売りサイド)
- 満額買い付けが当たり前(値引き交渉の余地なし)
- キャピタルゲイン(購入後の値上がり)を見込めないならペイできない価格水準
こういった事情なので、2012年以降、あまり積極的に新規物件を購入していないようです(簡単な資産組み換えはやっているようですが...)
今後どうなるかは誰にも分かりません。
買った人が勝つのか?売った人が勝つのか?
どうしてもワンルーム投資に興味にある方は、最低限、芦沢さんの著書には目を通しておきましょう。それだけで、ババを引いてしまう可能性は激減すると思います。
彼の本は、まさにワンルーム投資のバイブルです。
\芦沢さんの著書は要チェック/
いちばん大きなリスクを背負うことになるのは個人投資家
ざっくり言うと、ワンルームマンションの賃貸ビジネスは家賃収入をみんなで山分けするシステムです。
イメージとしては、こんな感じですね。
この仕組みのなかで、いち早く利益を確定させるのが建設会社/販売会社です。彼らは、在庫が売れた時点でリスクフリーになります。売れてさえしまえば、あとは野となれ山となれですね。
管理会社は、これから長きに渡り少しずつ利益を獲得していきます。彼らには在庫リスクがありませんし、物件を保有しているわけではないので出口戦略(=物件の売却)を考える必要もありません。比較的、安全な立場で不動産経営に携わることができます。
銀行は、今後金利というかたちで収益を獲得していきます。債権を回収できなかった時のために担保をとっていますから、リスクはある程度コントロールされています。
国や地方公共団体は、何もせずに所得税、消費税、固定資産税などの税金を得られます。完全にリスクフリーです。
しかし...
個人投資家は、空室リスク、災害リスク、金利リスク、修繕リスク、家賃滞納リスク、これでもかというほどあらゆるリスクに晒されながら、10数年、時に数十年に及ぶ長い戦いを続けることになるのです。
あるマンションが、その寿命のなかで生み出せる利益の総額はだいたい決まっています。
そのなかで自分が一番大きな利益を得ようと思うのなら、販売会社など他のプレイヤーに泣いてもらうしかありません。しかし、今は他のプレイヤーが笑いに笑っている時期です。
個人投資家が参入するのに、良いタイミングと言えるでしょうか?
まとめ:どのポジションにいる人が一番儲かるのか考えよう
結局、この数年間、ワンルーム投資界隈で一番儲けの大きい投資は何だったのでしょうか?
答えは「販売会社の株を買う」です。
異次元の金融緩和 → 金が余る → 余ったお金は株と不動産へ向かう
ワンルームマンションは売れに売れ、金余りもあいまって不動産会社の株価は右肩上がりを続けました。このシナリオが見えていた人は、大きく稼げたということです。
この記事で紹介した上場企業の株価は、たった数年で2~3倍以上の株価になっています。年利換算で数十%の儲けですから、ワンルームマンションの利益とは比較になりません。
逆に考えれば、投資用ワンルームの買い時は、彼らの株価が暴落した時なのかもしれません。誰かの泣きは、誰かの利益。投資の世界は残酷ですね。
おしまい!