こんにちは、こぱんです!
インフレが進み過ぎてしまった国(=ハイパーインフレに陥ってしまった国)は「30年で40か国」もあり、中には紙幣が「ただの紙切れ」になった国もあります。
リベ大で解説している「お金にまつわる5つの力」でも、「5つの力」のうちの「守る力(=貯めた資産を失わない力)」では、インフレを主要な「敵」の一人として認識しています。
▼図解でわかるお金にまつわる5つの力
▼図解でわかる「守る力」
「守る力」にとってのインフレは
- ルフィにとってのカイドウ(ワンピース)
- 悟空にとってのフリーザ(ドラゴンボール)
というレベルのポジションの敵です。
資産形成をするうえで、インフレリスクの話は避けられません。
そして、インフレリスクや「財政破綻」の話をすると、以下のようなコメントをよく頂きます。
※デフォルト…債務不履行のこと 。ここでは国が借金を返済できなくなること。
あひるくんみたいな人が9割だと思うよ^^;
そこで今回は、MMTに触れつつ、インフレ事例とゴールドの相場状況について解説します。
- MMT(現代貨幣理論)の基本
- 2020年の世界のインフレ事例
- ゴールドの相場状況
目次
解説動画:【最新】レバノンのハイパーインフレと「ゴールド」の相場環境について解説
このブログの内容は下記の動画でも解説しています!
MMT(現代貨幣理論)の基本
まずは、MMTの基本について触れておきます。
MMTは「現代貨幣理論」と呼ばれている理論です。
MMTという言葉を知ってるだけで、かなり金融リテラシーの高い人だと思います。
9割の国民は
「聞いたこともない」
「ましてや中身なんて知らない」
という状況なのではないでしょうか。
MMTは新しい経済理論で、概要は以下の通りです。
- 自国通貨を発行できる政府には「予算制約」がない
- いくらでも自由に紙幣を刷れるのだから、どんどん国債を発行して、財政政策(公共工事等)をやれば良い
- いくら財政赤字が拡大しても、無限にお金を刷れるので財政破綻はありえない
- 紙幣を刷りすぎてインフレになったら、増税等で皆からお金を回収すれば良い
簡単に言うと、
- 振ればお金が出る「打ち出の小づち」を持っている政府は、お金を刷って景気を良くする
- もしお金を刷りすぎてお金の価値が減ってしまったら(=不適切なレベルのインフレになりそうなら)、世の中のお金を回収する
- お金を回収するのでインフレが収まる
という理屈ですね。
ここで簡単にインフレ・デフレの解説をしておきます。
インフレ:物の価値が上がって、お金の価値が下がること
デフレ:物の価値が下がって、お金の価値が上がること
▼図解でわかるインフレとデフレ
極端な例ですが、リンゴが100個と1万円札が100枚しかない世界では、リンゴ1個の値段は1万円です。
ですが、そこに1万円札をさらに100枚(100万円)追加したら、リンゴ1個の値段は2万円になるのです。
2020年現在の日本では、まるでMMTを実践しているかのようにバンバン国債を発行しています。
紙幣を刷り続けて財政赤字を拡大させた結果、今や日本の債務残高(対GDP比)は、世界で最高水準です。
「財政赤字を拡大しても大丈夫」というのがMMTの主張ですし、理屈も分からなくはありません。
しかしリベ大としては、MMTの理論的な正しさは別問題として、「政府がMMTを上手にコントロールできるのか?」と少し懐疑的です。
MMTが有効な経済理論だったとしても、それを上手に使えなければ成立しないからです。
例えば、チキンレースで崖に使って突き進むスポーツカーを想像してください。
スポーツカーは超優秀な性能で、ブレーキを踏めば30m先できっちりストップできます。
ですがドライバーが下手で、ブレーキを踏んだのが崖の手前20mになってしまったら、結局崖から転落してしまいます。
リベ大が懸念するのは、このようなシナリオです。
学者たちの「研究室内の議論」から学びを得るのも重要ですが、私たち一般人としては「現実世界」の不合理さも考慮したいところです。
不合理さを考慮した上で、あらゆる事態に備えられるようにできる限りの準備をしていきましょう。
お金に強いユダヤ人の成功の土台となっている聖典「タルムード」の中にもあるのですが、ユダヤ人は「想定外」という言葉を嫌うそうです。
なぜなら想定外という言葉は、自分の無能さアピールに過ぎないからです。
- 自分を守れるのは自分だけ
- 「想定外だった」といくら言い訳しても、失った資産は戻らない
という意識は常に持っておきましょう。
▼ ユダヤ人の教えはこちらの書籍や関連記事でくわしく学べます
レバノンのインフレについて
2020年9月現在、直近の世界のインフレ事例としてレバノンを紹介します。
日産自動車の前会長であるカルロス・ゴーン氏の逃亡先で、一時頻繁に名前が出ていた中東の国です。
レバノンのインフレ率は、2020年7月に112%を記録しました。
特に、インフレ率が激しかったのは以下の3種です。
- 家事用品・家事家電製品:517%
- 衣服・履物:409%
- 食品・飲料:336%
レバノンではとんでもないインフレが起こり、お金の価値が下がってしまったことがわかります。
レバノンのインフレのきっかけは為替レートの暴落です。
2006年:1ドル=1507.5レバノン・ポンド(固定レート)
2020年7月:1ドル=9,700レバノン・ポンド(闇市場)
2006年に固定レートで「1ドル=1507.5レバノン・ポンド」と定められたにもかかわらず、2020年7月には闇市場で「1ドル=9,700レバノン・ポンド」で取引されていました。
いくら、国が公式に「1ドル=1,507.5レバノン・ポンドだよ」と言っても、国民たちは
「こんな国の通貨にそんな価値ないだろ!」
「今のうちにレバノン・ポンドを売って、もっとドル買っておこう!」
と考え、自分の持っている資産を外貨建て資産に変えて海外に逃がしたのです。
闇市場での取引によりレバノン・ポンドの価値が暴落した結果、輸入品の価格が高騰して激しいインフレが起きたというわけです。
- 1ドル=100円の時:300万円(100円×3万ドル)の支払い
- 1ドル=200円の時:600万円(200円×3万ドル)の支払い
例のように、円安になると輸入製品が高くなる一方で、円高になると逆に輸入は有利になります。
円高の時に企業が「円高還元セール」をやっているのは、「円高で安く仕入れることができたから、その分お客様にも還元しよう」ということですね。
ここまで解説した通り、レバノンのインフレは
- 為替レートが暴落
- 輸入品が高騰
- 激しいインフレが発生
という流れです。
でも、そもそもレバノン・ポンドが安くなったのはなんで?
レバノン政府の債務残高(対GDP比)は、約155%です。
自国通貨建ての借金を重ねて金をバラまき、経済を支えようとしましたが
「財政破綻がありうるのでは?」
「レバノン・ポンドの価値は怪しい」
と国民の不信感を煽る結果となり、見放されつつあります。
- 日本(先進国トップ)…約250%
- ドイツ・イギリス…100%未満
日本に住んでいるとピンとこないですが、国民が自国の通貨を信用していない国もあります。
そのような国では自国の通貨ではなく、ドルが流通していることもよくあるのです。
自国通貨建て国債を乱発した結果、財政破綻して自国通貨の廃止に追い込まれている国もあります。
- エクアドル(2000年)
- ジンバブエ(2009年)
日本は大きな財政赤字を抱える一方で、29年連続で「世界一の純債権国」でもあります。
つまり、世界中の国々に対しては「お金を貸している側」なのです。
日本が「世界一の純債権国」であるという側面を考えると、レバノン・エクアドル・ジンバブエなどの国々を引き合いに出して、必要以上に大声で叫ぶのはナンセンスかもしれません。
ですが、過去30年の間に約40もの国々で「財政を誤った結果、為替レートが暴落してインフレ率が100%を超えた」というのは事実です。
この事実は、認識しておきましょう。
ゴールドの取引状況について
お金を刷り過ぎて為替レートの暴落を招き、激しいインフレが起こった事例として、レバノンを紹介しました。
では、その他の国で激しいインフレは起きないのでしょうか。
コロナ禍における2020年現在の世界を眺めてみると、主要通貨で大きな為替レートの変動は起きていません。
それは、世界中の政府が「協調して、紙幣を刷っているから」です。
もし日本だけが円を刷っていたら、世界で流通している円の量がひたすら増え続けます。
その場合は相対的に「ドル」や「ユーロ」の価値が上がる(=円安になる)はずです。
世界中で
- 100万円
- 1万ドル
- 1万ユーロ
しかない世界があったとします。
その世界で日本円を刷り続けて
- 500万円
- 1万ドル
- 1万ユーロ
という状態になったら、ドルやユーロの価値が上がり、円の価値が下がるはずです。
ですがコロナ禍においては、どの通貨も同じように刷っているため、大きな為替レートの変動は起きていないのです。
ちょっと考えれば分かりますが、日本中の国民の預金口座の中に突然1億円ふりこまれたら、日本人は一瞬でみんな金持ちになります。
そして、円を外貨に替えて世界中で旅をすれば、世界中に円がバラまかれることになります。
世界中に円がバラまかれれば、円の価値は暴落しかねません。
今はアメリカもユーロ圏の国も、各国でお金を刷っていて、ある程度のバランスが保たれています。
ですが、もしこのバランスが崩れたらどうなるでしょうか。
今、世界中の投資家が懸念しているのは、以下のことです。
バランスが崩れ、特定の通貨が暴落すること
通貨そのものの価値が暴落すること
実際に2020年9月現在、インフレ懸念を背景にゴールドに投資する富裕層や機関投資家が増えています。
ゴールドに投資する有名ファンド「GLD」のチャートは、以下の通りです。
- 2016年:約100ドル
- 2020年:約180ドル
GLDの取引値は、5年弱で約1.8倍になっています。
特に、2019年以降の2年間で急騰しています。
今までゴールドは、株や債券と比較して「不要」と考えられがちでした。
利子・配当を生まない
割高な保有コストがかかる
現物は、盗難・紛失リスクがある
それでもゴールドの価値が上昇しているのは「貨幣よりゴールドの方が信頼できる」と考える人が増えているためです。
本屋の「投資」関連のコーナーに行ってみるとわかりますが、「今こそゴールドを買え!」という本がたくさん並んでます。
これは、少し前には見られなかった光景です。
主要な経済誌でもゴールドの特集が増えています。
- 日経新聞
- 東洋経済
- 週間ダイヤモンド
- 週刊エコノミスト etc…
ゴールド投資を誘うCMもよく目にします。
今、ゴールドに関して知っておきたい情報は以下の3つです。
- ウォーレン・バフェット氏が金鉱山株を買っている
- 米実質金利と金価格は逆相関
- 財政赤字が増加すれば金価格も上昇
ウォーレン・バフェット氏が金鉱山株を買っている
バフェット氏は「金利が付かない」ことを主な理由に、金への投資に否定的でした。
しかし、そんなバフェット氏が金との相関性が高い金鉱株を買ったことは、市場関係者に大きな影響を与えました。
バフェット氏が購入した金鉱株は、もちろん高騰しました。
米実質金利と金価格は逆相関
金利が下がると、ゴールド価格は上昇します。
米国の金利は、いまやマイナスです。
利回り5%の債券は欲しい人は多いですが、
利回りマイナス1%の債券を欲しい人はいません。
同じ理屈で、機関投資家も「今は債券を買いたくない」と考えて、運用が厳しい債券ではなくゴールドに投資したいと考えています。
コロナ禍において、しばらく金利は上げられないはずなので、ゴールド優位の相場は続くと予想されています。
財政赤字が増加すれば金価格も上昇
アメリカの財政赤字が拡大すると、金価格は上昇する傾向にあります。
レバノンの財政赤字が拡大して、レバノン・ポンドの信頼が揺らいだように、ドルへの信頼が揺らぐからです。
新型コロナ対策で、アメリカの財政赤字は急拡大しています。
財政赤字拡大につられて、金価格はまだまだ上昇すると見られています。
「今後は、機関投資家がゴールドを“中核資産”としてとらえ、長期的にポーフォリオに組み入れる動きが高まるだろう」と予想をしているアナリストもいます。
MMTの理論的な正しさや有効性はさておき「ドルや円などの通貨よりも、現物であるゴールドの人気が高まっている」というのは事実です。
この事実が「市場関係者が“政府が紙幣を刷り過ぎるリスク”をどう捉えているか?」測る1つのツールになるかもしれません。
まとめ:守る力の重要性を再認識し、行動しよう
今回はMMTに触れつつ、インフレ事例とゴールドの相場状況について解説しました。
- 「日本は長期間デフレに苦しんでいる国。激しいインフレなんて起きない」
- 「MMT(現代貨幣理論)に基づけば、お金はいくらでも刷れる」
- 「自国通貨を発行できる政府の、自国通貨建ての国債はデフォルトしない」
と言われていて、確かに一定の説得力はあります。
その一方でMMT論者も認識している通り、「お金を刷り過ぎる」という行為には
為替レートの変動リスク
ハイパーインフレのリスク
が常につきまといます。
政府が
- 世界の経済状況・自国の経済状況をしっかり把握する
- 金利操作や増税によって「出回りすぎたお金を回収」する
ことができれば良いですが、もしコントロールを間違えば、良い結果にはなりません。
レバノンでは通貨をたくさん刷り、自国通貨建ての債務を増やし続けました。
その結果、レバノン・ポンドの信頼が揺らぎ、為替相場が暴落。
輸入品の価格が高騰し、100%を超えるインフレを招きました。
世界のゴールドの取引状況のまとめは以下の通りです。
- この2年で、金価格は急騰
- バフェット氏すら金鉱株に投資
- マイナス金利を反映してか、金への投資はさらに加速
- 米政府の債務増大に伴って、機関投資家も金への投資方針を見直しつつある
インフレ対策は「守る力(=貯めた資産を失わない力)」の重要なポイントです。
▼図解でわかる「守る力」
もし自分の資産を守っていきたいと思うのなら、資産が「円預金」だけという状態はナンセンスだと言っても過言ではないでしょう。
外貨建ての株式や債券
ゴールドや不動産ファンド
に投資して、自分の資産を守りましょう。
“円以外”の資産やゴールドの保有は、お金持ちなら誰もがやっています。
価格変動による元本割れや為替リスクはありますが、「様々な通貨・資産への分散投資」こそが資産防衛なのです。
「何もしないことにもリスクがある」と考えるのが、金融リテラシーのある人の考え方です。
実際に過去のデータでは「15年以上の期間をとった長期投資なら、株式投資の元本割れリスクは消失する」ことがわかっています。
もし資産防衛に興味があるなら、リベ大では楽天証券とSBI証券をオススメしています。