その名も、「家計の金融行動に関する世論調査 2022年」です。
ひとり暮らしの全国2,500世帯、2人以上で暮らしている全国5,000世帯を対象に、以下のような内容を聞く世論調査です。
- 貯金はいくら持っていますか?
- 借金はいくらありますか?
- 収入・資産は去年と比べて増えましたか?
この調査は、日本銀行の内部に事務局を持つ「金融広報中央委員会」が行っています。
歴史も古く、比較的信頼性の高い調査と言っても良いでしょう。
この世論調査の結果は、マネー系のメディアでも頻繁に取り上げられます。
「日本人の〇%は貯金ナシ!」「日本人の平均資産額は〇万円!」のようなイメージです。
今回の記事では、この最新調査の結果を一部ピックアップして解説します。
金融資産の状況
借入金の状況
家計について
家計のパートでは、「家計運営の評価」「老後不安の有無」「年金についての考え方」も紹介します。
今回のように、年に1度、日本の家計トレンドを定点観測することで、皆さんの蓄財戦略を見直すヒントが見つかるはずです。
記事の最後には、「この調査結果を受けての、リベ大の感想」も紹介します。
以下の図解を見てから記事を読み進めると理解しやすくなるので、参考にしてください。
▼図解:最新調査!日本人の平均資産は?
目次
解説動画:【貯金額の平均はいくら?】日本国民の「2022年のお金事情」を振り返る!
このブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
金融資産の状況
このパートでは、以下の3点をピックアップして解説します。
- 保有する金融資産額
- 金融資産ゼロ世帯の割合
- 金融資産の増減及び増減理由
テーマ①:保有する金融資産額
保有する金融資産額の平均値は、以下のような結果となっています。
2022年は、全体として「家計が苦しい年だった」というワケです。
ここで2点補足しておきます。
補足①:平均値と中央値
1つ目の補足は、先ほど紹介した数値が「平均値」だという点です。
より実感に近いと言われる中央値の結果は、以下のようになっています。
平均額は、調査対象者の中に多額の金融資産(1億円など)を持っている人がいると、一気に引き上げられます。
中央値の方がより実態を表すと言われているので、中央値で見ると「まぁそんなものか」と感じる人は多いでしょう。
補足②:カウントされる金融資産の範囲
2つ目の補足は、この統計調査でカウントされる金融資産の範囲についてです。
この調査では、金融資産の範囲は以下のように定義されています。
- 預貯金
- 積立型保険商品
- 個人年金保険
- 債券
- 株式
- 投資信託
- 財形貯蓄
商売や農業のために保有している事業用の金融資産。
土地、住宅、貴金属などの実物資産。
現金・預金で、日常的な出し入れ・引き落としに備えている分の資産。
アンケート調査を紐解くと、「単身者世帯:平均約267万円、2人以上世帯:平均約406万円」が、日常使いのお金として計上されています。
つまりこれだけの金額が、統計調査上は「金融資産」としてカウントされていないワケです。
ここを勘違いすると、統計調査の結果を誤読する可能性があるので、注意してください。
金融資産の保有割合は、ざっくり以下のイメージになります。
- 預貯金:全体の40%強
- 保険:全体の20%弱
- 株・投資信託などのリスク資産:残りの部分
引き続き、「預貯金 + 保険」が資産の半分以上を占めているのが現状です。
アメリカなどとの比較において、「日本人は投資をしない」と言われる通りの結果になっています。
アメリカでは、資産の約55%が投資関連と言われるので、日本は投資後進国と言われても仕方のない状況です。
データを、もう少し深堀りしてみましょう。
ちなみに貯蓄率というのは、「年間の手取り収入(税引き後)のうち、何%を預金や株式などの金融資産に回したか」という指標です。
貯蓄率はとても重要な指標なので、その重要性については過去記事で復習してください。
貯蓄率が50%くらいある人は、いずれFIREを達成することでしょう。
前置きが長くなりましたが、調査対象になった人たちの貯蓄率は以下の通りです。
なお上記の数字は、金融資産を保有している人たち(全体の約6割~7割)の平均値です。
全体で見た場合の中央値は、ひょっとすると5%以下ということも十分に考えられるでしょう。
以下のような、大富豪が唱える貯蓄率を達成するのは、なかなか難易度が高いことが分かります。
- 「バビロンの大富豪の教え」にあるような10%の貯蓄率。
- 日本の富豪、本多静六氏が書いた「私の財産告白」にあるような25%の貯蓄率。
上記の書籍については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
ちなみに、各世帯の「目標金融資産額」は以下のような結果になっています。
テーマ②:金融資産ゼロ世帯の割合
金融資産ゼロ世帯の割合は、以下の通りです。
こちらの数字には、「日常的な出し入れ・引き落としに備えている現金預金」が含まれます。
つまり金融資産ゼロ世帯というのは、言葉通り「宵越しの金は持たない」人の割合です。
テーマ③:金融資産の増減及び増減理由
金融資産の増減及び増減理由については、単身世帯と2人以上世帯に分けて見ていきましょう。
単身世帯
単身世帯における金融資産のトータルの動きは、前年比で以下のような結果となりました。
- 増えた:32.9%
- 変わらない:40.1%
- 減った:27.1%
2021年と比較して、資産を減らした人が数%増えました。
資産を減らした人の割合は、2017年以降最も多い水準です。
- 定例的な収入が減り、金融資産を取り崩したから:41.5%
- 株式・債券価格の低下により、評価額が減少したから:33.9%
投資関係で資産を減らした人の割合は、前年調査の2倍近くになりました。
2022年は、資産運用がうまくいかなかった人が多かったというワケです。
米国株が弱気相場入りしたことも、大きく関係しているでしょう。
2人以上世帯
2人以上世帯の金融資産のトータルの動きは、前年比で以下のような結果となりました。
- 増えた:33.1%
- 変わらない:41.6%
- 減った:25.3%
- 定例的な収入が減り、金融資産を取り崩したから:41.1%
- 株式・債券価格の低下により、評価額が減少したから:26.6%
コロナ後のリベンジ消費で、旅行・レジャー費用が増えたことも影響していそうです。
2021年の調査では、日本国民の金融資産は結構増えていました。
その理由は、コロナショック後の株価が大きく伸びたからです。
リベ大では当時、株価上昇を喜ぶ人たちに、以下のように注意を促していました。
投資にはリスクがあります。増える年もあれば減る年もあります。
コインに裏表があるように、投資にも裏表があります。
資産運用すれば毎年お金が増えるワケではないので、くれぐれもご注意ください。
この注意を聞いていた人は、2022年も平常心で乗り切れたのではないでしょうか。
とにもかくにも、今回のような調査結果から分かることは、「資産を右肩上がりで増やし続けるのは難しい」という現実です。
資産の増減要因には、「給料の増減」「資産運用益の増減」「生活費の増減(インフレによる物価上昇、家族構成の変化など)」といった、さまざまな要素があるからです。
- 本業の給料カットに備えて、副業で収入を得られるようにする。
- 暴落に備えて、現金をしっかり確保する。
→ リスクを取りすぎない - 収入の増減に合わせて、柔軟に生活スタイルを変えられるようにする。
→ すぐに引っ越しできるように賃貸にする。売りやすい家を買う。
「景気が悪くなったので、資産も減って当然です」というように、対策せず景気に流されてしまうのは、お金の神様に愛される姿勢ではありません。
さまざまなケースを想定し、盤石な財務基盤を築いていきましょう。
単身世帯
- 金融資産平均額:871万円(中央値:100万円)
- 平均貯蓄率:13%
- 目標金融資産額の平均:2,496万円
- 金融資産ゼロ世帯(日常使いのお金含む)の割合:4.9%
- 去年よりお金を増やせた割合:32.9%(減らした割合:27.1%)
2人以上世帯
- 金融資産平均額:1,291万円(中央値:400万円)
- 平均貯蓄率:11%
- 目標金融資産額の平均:2,976万円
- 金融資産ゼロ世帯(日常使いのお金含む)の割合:2.6%
- 去年よりお金を増やせた割合:33.1%(減らした割合:25.3%)
上記が、「2022年版:日本人の金融資産のリアル」です。
皆さんの実感に合う結果だったでしょうか。
普通の人と同じことをやっていたら、普通の人と同じ結果になるだけです。
同じ結果になると、普通の人が抱えるお金の悩みを、皆さんも同じように抱えることになります。
経済的自由を獲得しようと思うのであれば、行動を起こさなければなりません。
リベ大で学ぶ皆さんが「金融資産の中央値:1,000万円」「貯蓄率の中央値:10%(平均値:20%)」くらいになるまで、一緒に頑張っていきましょう。
借入金の状況
借入金のある世帯が全体の何%だったのかは、以下の通りです。
およそ5世帯のうち1世帯くらいは、借金があるイメージです。
どちらも、2021年よりも数字は低くなっています。
まずは単身世帯から、「借金の目的は何か?」という結果を見てみましょう。
- 1位:日常の生活資金(44.8%)
- 2位:耐久消費財(車、家具、家電など)の購入資金(13.4%)
- 3位:旅行・レジャーの資金(10.5%)
上記のうち、「良い借金」になりうるものは残念ながらありません。
良い借金というのは、以下のような借金です。
- 値上がりする資産を買うための借金
→ 将来的に売却益(キャピタルゲイン)が狙える - 収益を生み出す資産を買うための借金
→ 利子・配当金・家賃などのインカムゲインが狙える
上記のような「資産を買うための借金」は良い借金です。
本当の資産は、資産自身が借金を返してくれます。
皆さんが頑張らないと返せない借金は、基本的には良い借金とは言えません。
例外は、人への投資のための借金です。
例えば500万円借りて大学に通い、将来的に(大学に行かなかった場合と比べて)生涯賃金が5,000万円増えるのであれば、これは良い借金と言えるでしょう。
しかし教育費や住宅費のための借り入れは、合計7%強しかないのが現状です。
家計が苦しいことの裏返しとも言えますが、データから分かる「借り入れ」の目的は、あまり良くないと言わざるをえない状況です。
- 1位:住宅の取得や増改築のための資金(47.8%)
- 2位:日常の生活資金(20.3%)
- 3位:耐久消費財(車、家具、家電など)の購入資金(15.3%)
借り入れは、うまく使えば大きく資産を増やすことができます。
一方で下手に使うと、言葉通りがんじがらめになります。
借金しても良いのは「良い借金」だけ、というのは肝に銘じておきましょう。
家計について
- 家計運営の評価
- 老後の心配
- 年金に対する考え方
テーマ①:家計運営の評価
- 6.7%:思ったより、ゆとりのある家計運営ができた。
- 23.6%:思ったような家計運営ができた。
- 30.6%:思ったより、家計運営は苦しかった。
- 39.1%:意識したことがない。
「今の感じで大丈夫!」という人は、全体の約3割という結果です。
少し物足りない数字と言えるでしょう。
- 7.4%:思ったより、ゆとりのある家計運営ができた。
- 29.2%:思ったような家計運営ができた。
- 35.1%:思ったより、家計運営は苦しかった。
- 28.3%:意識したことがない。
「今の感じで大丈夫!」という人は約4割弱と、単身世帯より多い結果となりました。
家族がいる場合、家計について意識する人の割合が増えるようです。
トータルで見ると、単身世帯でも2人以上世帯でも、家計運営の状況は前回調査と比べて若干「悪化」しています。
テーマ②:老後の心配
「老後の暮らしについて、経済面でどのようになると考えていますか?」という質問に対して、「非常に心配!」と答えた人はどのくらいだったのでしょうか?
大きなトレンドとしては、老後を心配する人の割合は減っています。
やはり資産運用の環境が悪くなると、将来を心配する人は増えるようです。
また、以下のような調査結果も発表されています。
老後の生活費として、毎月最低いくら必要ですか?
- 単身世帯:最低33万円
- 2人以上世帯:最低35万円
老後の生活資金として、年金支給時に準備しておけば良い金融資産はいくらですか?
- 単身世帯:1,787万円
- 2人以上世帯:1,934万円
全体として、老後の毎月の収入は月30万円必要で、資産額は2,000万円程度は欲しいという結果になりました。
テーマ③:年金に対する考え方
「年金で、老後の必要資金をまかなえると思いますか?」という質問に対して、どのような回答があったのかを確認しましょう。
※年金の範囲:公的年金・企業年金を含み、個人年金は除く。