
2020年の電気料金を100とすると、2022年9月現在の電気料金はすでに120オーバーとなっています。

(出典:e-Stat 政府統計の総合窓口「2020年基準消費者物価指数 全国2022年(令和4年)9月分」)
総務省家計調査によると、電気料金の平均額は以下のようになっています。
- 1人世帯:年間約66,000円
- 2人世帯:年間約110,000円
- 3人世帯:年間約128,000円
- 4人世帯:年間約137,000円
(出典:エネチェンジ「平均的な電気代について世帯人数や季節別に徹底解説!」)
- 1人世帯:年間約79,200円
- 2人世帯:年間約132,000円
- 3人世帯:年間約153,600円
- 4人世帯:年間約164,400円
比べると、年間13,200円~27,400円の負担増になることが分かります。
しかも電気料金はまだまだ上がりそうです。
もし、5年10年と高騰が続けば、家計に与えるダメージは数十万円規模になりえます。
電気料金の最新事情や、電気料金節約のための対策を知らないままで良いワケはなさそうです。
そこで今回の記事では、以下の4点について解説します。
電気関連の最新ニュース解説
そもそも電気料金の仕組みとは?
電気料金値上げの3つの原因
家計防衛策4選
資産5,000万円超の小金持ちを目指す道には、今回のテーマのように、やるべきことが数多くあります。
世界は常に変化し続けています。
以下の図解を見てから記事を読み進めると理解しやすくなるので、参考にしてください。
▼図解:電気料金 値上げツライ
目次
解説動画:【最新情報アリ】電気料金値上げの「原因3つ」と「家計防衛策4選」について解説
このブログの内容は以下の動画でも解説しています!
電気関連の最新ニュース解説
今世界の国々で、電気料金はどのようになっているのでしょうか?
国ごとに分けて、いくつかのニュースを紹介します。
イギリスのニュース

はじめに紹介するニュースは、2022年8月29日のBBC NEWS JAPANから、「「命に危険が」 イギリスで光熱費上限を80%引き上げ」です。
イギリスにおいても、光熱費が高騰しているというニュースです。
標準世帯の年間光熱費は、引き落とし支払いの場合で以下のようになっています。(未来分は予測の数値)

(出典:BBC NEWS JAPAN「「命に危険が」 イギリスで光熱費上限を80%引き上げ」)
- 2022年8月:1,971ポンド(約32万円)
- 2022年10月:3,549ポンド(約57万円)
- 2023年1月:5,400ポンド(約87万円)
- 2023年4月:6,600ポンド超(約107万円超)
また、2022年10月13日のFNNプライムオンラインの、「【独自取材】イギリス光熱費高騰 来年は「年間100万円超」」というニュースでは、現地の人の実感を伴うコメントも掲載されています。
【コメント①】
どんなに寒くてもすごいお金がかかってしまうので、一人の時には絶対にヒーターを使わないって決めてます。寒いんですけど、家の中でコートとか着て。【コメント②】
イギリスも貧富の差が結構激しくなっていて、「ヒーティングorイーティング」って言われてるんですけども、ヒーターを付けるか、食べるかどちらかを選ばなければいけない家庭もたくさんあって。その人たちが困ることによって起こる「社会の不安定さ」がすごく心配だと。
ドイツのニュース

続いて紹介するドイツのニュースは、2022年9月13日のBUSINESS INSIDERから、「水シャワー、ドライヤーなし、暖房制限… エネルギー危機で電気代が高騰、ドイツで広がる「節約」の数々」です。
現地の状況を記事から引用します。
「ドライヤーも使っていないし、クーラーも使っていないし、シャワーを浴びる時は短時間にして… この冬、自宅では暖房を2つの部屋でしか使わないつもりです」と39歳のベルリン市民はThe Localが行った最新調査の中で答えている。
ハノーファー市は7月下旬、プリンターなどオフィス機器の利用制限や公共施設(病院と学校を除く)の流し台のお湯の停止、公共の噴水の停止、市庁舎の室温を20度以下に抑えるといった具体的な規制内容をまとめたリストを発表した。
この他にも、2022年9月のエネルギー部門のインフレ率が43.9%という情報や、 年明けには毎月3万円を電気だけに支払うことになるというデータもあるそうです。
(参考:現代ビジネス「ドイツのガス代高騰救済策「2000億ユーロ投入」がEU各国の猛反発で撃沈寸前」)
(参考:SUSTAINABLE BRANDS「欧州を襲うエネルギー費高騰の嵐 原因と緊急対応の実際と日本への影響」)
冷たいシャワーを浴びたり、洗濯物は空気乾燥にしたりなど、日々の生活を工夫せざるを得ないのも納得の価格高騰です。
アメリカのニュース

続いて紹介するアメリカのニュースは、2022年10月14日の日本経済新聞から、「米の家庭、今冬は電気代20万円」です。
記事によると、この冬に米国の家庭が支払う電気料金は、前年同期比10%増の、平均1,359ドル(約20万円)となる見込みとのことです。
また、2022年8月24日のBloomberg「米で6分の1の世帯が公共料金を滞納-電気代高騰で過去最悪の危機か」では、現地の人の声を以下のように伝えています。
45歳のナイスさんはハウスクリーニング業者だ。特に電気代がここ1 年でほぼ倍増したため、公共料金の支払いを十分に確保するのが不可能であることに気付いた。
ナイスさんの家庭では電気の使用量は減っているものの、月々の料金はほぼ同じで、平均244ドルだ。「どうして電気代がそんなに高くなるのか分からない」と話す。
ナイスさんの世帯は、公共料金を滞納している米国の約2000万世帯の一つだ。この数字は同国の全世帯の約6分の1に相当する。
全米エネルギー支援協会(NEADA)によれば、これは同協会の記録上で最悪の危機だ。これらの数字の背景には、 天然ガス価格上昇に伴う電気料金の高騰がある。
結局のところ、エネルギー価格は世界的に高騰している最中というワケです。
各国において、一般家庭の生活にまで影響が出始めています。
日本のニュース

ニュースの最後は、日本の状況を解説します。
2022年10月14日の日本経済新聞「電気代支援1月にも ガス代も軽減、与党合意」によると、日本の光熱費は以下のような状況になっています。
- 2人以上世帯のエネルギーへの支出は、4月~8月平均で前年同期より月2,800円増加。
- 電気料金は、すでに前年より2割~3割値上がり。
- 2023年春以降、さらに2割~3割値上がりするとの見方も。
冒頭で解説した通り、日本の家庭もしっかりダメージを受けています。
この影響を特に大きく受けているのが、収入の低い世帯です。
以下のグラフは、消費支出に占めるエネルギー代の割合を示しています。

(出典:日本経済新聞「電気代支援1月にも ガス代も軽減、与党合意」)
- 高収入世帯:4.4%
→ 前年同期より0.5%高い
- 低収入世帯:8.1%
→ 前年同期より1.1%高い
低収入世帯においては、エネルギー代の割合が10%に近づいており、生活を圧迫している様子が分かります。
そこで政府も、現在支援策を検討しているとのことです。
詳細はまだ不明ですが、「来年春に想定される、電気料金の上昇による平均的な負担増に対応する額」について、2023年1月にも軽減策を始めようとしています。
まさに電気料金の高騰が、国難になっているというワケです。
そもそも電気料金の仕組みとは?

世界中で電気料金が高騰していますが、ここで一旦基本に立ち返りましょう。
値上げだと騒がれているものの、「そもそも電気料金の仕組みはどうなっているの?」という人も多いでしょう。
そこで次は、電気料金の決まり方について解説します。
- 基本料金
- 電力量料金
- 燃料費調整額
- 再生可能エネルギー発電促進賦課金
電力料金算出の式は、シンプルに上記1~4の合計です。
①基本料金

基本料金というのは、電力会社が契約プランごとに設定した固定料金のことです。
基本料金は、電気を一切使わなかった場合も発生します。
要するに、必ず支払わなければいけないコストです。
なお、基本料金は電力会社の発電設備費や人件費などを賄う目的で設定されています。

(出典:Looopでんき「電気料金の「基本料金」と「電力量料金」とは?仕組みについても解説」)
- 最低料金制
- アンペア制
最低料金制
最低料金に、一定の電気使用量の料金が含まれています。
最低料金に含まれている以上の電力を使った場合、その分は上乗せして払うという仕組みです。
関西電力、中国電力、四国電力、沖縄電力などは最低料金制を採用しています。
アンペア制
アンペア制は以下のような仕組みです。
→ 低いアンペアで契約し、安い基本料金を払う。
→ 高いアンペアで契約し、高い基本料金を払う。
北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力などはアンペア制を採用しています。
②電力量料金

電力量料金は、使用した電力量に応じて発生する料金のことです。
電気を使えば使うほど、請求金額が増えるという仕組みになります。
電力量料金は、次の計算式で計算できます。
ちなみに、1kWhあたりの単価が3段階で設定されている場合もあります。
下図のように、使えば使うほど単価がアップしていく仕組みです。

(出典:Looopでんき「電気料金の「基本料金」と「電力量料金」とは?仕組みについても解説」)
- 120kWhまで(第一段階料金)
→ 1kWhあたり19.88円
- 120kWh~300kWh(第二段階料金)
→ 1kWhあたり26.48円
- 300kWh以上(第三段階料金)
→ 1kWhあたり30.57円
(出典:東京電力エナジーパートナー「料金単価表‐電灯(従来からの料金プラン)」)2022年11月13日時点
一般家庭の電力消費量は、1ヵ月で約180kWhです。
上記単価を適用すると、電気をたくさん使う人はあまり使わない人の約1.3~1.5倍の単価になります。
逆に言えば、電気を使いすぎている人は、少しの節約でも効果が高いということです。
③燃料費調整額

燃料費調整額というのは、燃料価格の変動を電気料金に反映させるための仕組みです。
電力会社は、LNG(天然ガス)や石炭といった燃料をもとに発電しています。
LNGや石炭の値段が上がれば燃料費調整額は高くなり、LNGや石炭の値段が下がれば燃料費調整額は安くなります。
つまり燃料費調整額は、電気料金請求額を減らす方向(=マイナス)になることもあるワケです。
企業努力だけではどうにもならないので、「燃料価格の変動については、電力会社と消費者で良いバランスで負担しあいましょう」という仕組みになっています。
旅行好きな人には「燃油サーチャージのようなもの」と言えば伝わるでしょう。
なお燃料費調整額は、消費者保護の観点から上限が設けられています。
いくら燃料価格が高騰しているからといって、それをすべて電気料金に反映させていたら生活がどんどん苦しくなります。
そこで、「上限を超えた分は、電力会社がかぶる」というルールになっているワケです。
しかし最近では経営が苦しくなり、上限撤廃をする電力会社も出てきています。
上限が撤廃された電力会社で契約していると、電気料金がとんでもなく高くなるリスクがあります。
④再生可能エネルギー発電促進賦課金

再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)は、2012年に開始した「再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度」とともに導入された料金です。
太陽光などの再生可能エネルギーによる発電を普及させる目的で、電力会社が一定期間・固定価格で再生可能エネルギーを買い取ることを義務付けた制度。
世の中には、太陽光発電の投資をしている人が結構います。
太陽光発電の投資家は、ソーラーパネルを設置して発電させ、作った電気を電力会社に売ることで利益を得ます。
この流れの中で、電力会社が再生可能エネルギーの買い取りにかかった費用の一部は、再エネ賦課金として消費者が負担することになっているのです。
一度ここまでの話を整理しましょう。
電気料金には、以下の4つの内訳があります。
→ 電気を使っても使わなくてもかかる最低料金。
→ 電気を使ったら使った分だけかかる従量課金。
→ 燃料価格の変動分のうち、消費者が負担する分。(マイナスになることもある)
→ 電力会社の再生可能エネルギー買い取りにかかった費用のうち、消費者が負担する分。
皆さんが電気料金として請求されるのは、上記の①~④を足し合わせた額です。
税金や社会保険料と同じで、「請求額しか見ておらず、どう計算されているか知らなかった!」という人は意外に多いはずです。
内訳が分からないことには、原因分析も対策もしようがないので、ぜひこれを機に覚えてください。
電気料金値上げの3つの原因
電気料金値上げの原因には、大きく以下の3つがあります。
- 供給力不足
- 再エネ賦課金値上げ
- LNG(天然ガス)と石炭の価格高騰
原因①:供給力不足
