![【最後はどうする?】つみたて投資で増えたお金の取り崩し方を解説します!](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/09/f69975376e8ed813d4a11f7abdf951e6.png)
著者のカン・チュンド氏はFP歴20年以上、インデックス投資アドバイザーの大ベテランであり、投資信託クリニックの代表も務められています。
本書最大のセールスポイントは、「お金を減らすことをメインテーマにしている」という点です。
現在、本屋には大量の投資本が並んでいますが、お金の減らし方、つまりファンドの取り崩し方をテーマにしている本は皆無です。
これまで市場に無かった本が出たという点で、非常に意義深いと言えるでしょう。
今回の記事のテーマに対して、「お金の減らし方よりも、増やし方を教えて欲しい!」と感じる人がほとんどかもしれません。
しかし、お金の増やす方法がより重要であるという考えは大きな勘違いです。
なぜなら、出口を考えずに資産運用をするということは、出口のない迷路に挑戦するようなものだからです。
本来、お金は使うことに意味があります。
資産運用では増やし方と同じくらい、使い方、つまり減らし方が重要なのです。
ここで一度、以下の内容を考えてみてください。
- 一生懸命節約して、一生懸命貯めた100万円を資産運用に回す。
- その後20年の長期投資で、300万円まで増やした。
- しかし、50万円しか使わないうちに寿命を迎えてしまった。
上記のような状況になった時、後悔しないと言い切れるでしょうか。
100万円貯金できた人が、なぜお金を投資に回すのかと言うと、「投資に回した方が一生の内に使えるお金が増えるから」が基本的な答えのはずです。
100万円の貯金は、使ってしまえば無くなってしまいます。
一方、投資で300万円に増やすことができれば、300万円分楽しむことができます。
しかし、投資でお金を増やすだけ増やしても、上手にお金を使えずに人生が終わってしまったらどうでしょうか。
投資なんてしない方がドキドキすることもなく、手間もかからなかったはずです。
「好きなことに時間とお金を使えて、もっと楽しい人生を送れるはずだったのでは?」ということになるかもしれません。
結局、投資は増やすことと、使うことのセットで完成するということです。
つまり今回の記事で紹介する書籍「つみたて投資の終わり方」は、資産運用後半戦について考える良書と言えるのです。
今回の記事では書籍を参考に、以下の3つについて解説していきます。
- インデックス投資家が知っておくべき3つのこと
- つみたて投資の終わり方4ステップ
- 本書に対するリベ大の感想
珍しい切り口のテーマですので、最後まで楽しめるかと思います。
以下の図解を見てから記事を読み進めると理解しやすくなるので、参考にしてください。
▼図解:つみたて投資 終わらせよう
▼図解:つみたて投資 終わらせよう(実践編)
目次
関連動画:【最後はどうする?】つみたて投資で増えたお金の取り崩し方
このブログの内容は以下の動画でも解説しています!
インデックス投資家が知っておくべき3つのこと
まずは以下の3点について、それぞれ解説してきます。
- リタイア近辺で起こる2つの症例
- 取り組むべき3つの宿題
- 老後は投資が侵食しやすくなる
①:リタイア近辺で起こる2つの症例
![リタイア近辺で起こる2つの症例](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/10/2d4dd87cf93f94d19a41a7b1c27e17f4.png)
リタイアが近づいてきた人にありがちな症例として、2つのパターンが存在しています。
1つ目は「投資を早くフィニッシュさせたい症」です。
積み立ててきた資産を売却し、現金化して利益を確定しない限り、投資の利益は絵に描いた餅です。
そのため、以下のような人がいることも当然でしょう。
- リタイアを前に投資を終え、分かりやすくゴールしたくなる。
- 株価の上げ下げを気にしない人生に入りたくなる。
そして2つ目の症例は、「投資のスピードが落とせない症」です。
投資をすれば資産が増えることを実感し、楽しんできた人ほど以下のような状況に陥りがちでしょう。
- 積み立ててきた資産を、いつまでも取り崩さない。
- 資産を使うこと無く、積み上げ続ける。
- リタイア前と変わらないリスクを取り続ける。
上記の2つの症例のように、投資から完全離脱したい人と、ガンガン投資を続けたい人に大きく分かれます。
どちらにも課題があるのだとすれば、リタイア後はどのようなスタンスを取るべきなのでしょうか。
答えは、2つの症例の中間にあります。
- ある程度の投資を続けて、資産の寿命を延ばす。
- スピードを落として、使うことに焦点を当てる。
リタイア直前には上記2つの症例があることを理解した上で、自分なりの最適なバランスを模索する必要があります。
②:取り組むべき3つの宿題
![取り組むべき3つの宿題](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/10/0d5032b43f6ea12609561a7a1b3ccbf7.png)
現役からリタイアした老後生活へ移るにあたっての宿題は、以下の3つがあげられます。
- 果たして、リタイア時に積み立てを止められるか?
- 果たして、リタイア時に資産の取り崩し(ファンドの解約)を始められるか?
- 果たして、積み立てたお金を使えるのか?
著者であるカン・チュンド氏の言葉を借りれば、「それまで上ることに適応してきた人が、真逆の下りに合わせて歩き直す」ということになります。
![資産の上りと下り](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/10/57c0cbfb8c9ccd9d2ee236ec6d857355-1.png)
出典:Kindle版「つみたて投資の終わり方」より
これまでしっかり積み立てを続けてきた優等生ほど、難しく感じる宿題となるかもしれません。
実際、FIREした人の中には、未だにこれら3つの宿題に向き合っている人も見受けられます。
結局、大きな資産を持っているにもかかわらず、いつまで経っても大きな資産に見合うお金の使い方が出来ずにいるワケなのです。
冒頭にもお伝えしたように、お金は使うことに意味があります。
リタイアを境に資産額を増やすことから、お金を上手に使うことに焦点をずらして、習慣を変えていく必要があるのです。
③:老後は投資が侵食しやすくなる
![老後は資産が侵食しやすくなる](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/10/8f97b8c3acac6a04389d897846f0ac3e.png)
3点目については、以下のような状況を意味しています。
- 現役時代は勤労収入があったが、リタイア後は無くなる。
- 勤労収入がないので、保有資産の増減が暮らしに直接影響する。
- 資産の価格変動によって、感情の起伏が起こりやすくなる。
例えば、株価が下がって30万円損したとしても、現役時代なら給料という慰めがあります。
そのため、一時的に損をしても「減ってもまたコツコツ投資して入金を続ければ良いか」と考えることができるでしょう。
安定した収入である給料があるということは、投資で損をしても大きく焦らずにいられるという側面があるのです。
しかし、老後は給料がなくなりますので、資産の増減が直接生活に影響するワケです。
つまり、現役時代よりもリスクに耐えにくくなるということです。
安定した収入が無くなるという点を意識して、老後の資産配分を考える必要があります。
つみたて投資の終わり方4ステップ
インデックス投資で資産を増やすフェーズと、作った資産を使っているフェーズでは状況が全く異なります。
登山において、登りと下りのテクニックが違うように、資産運用においても下りならではのテクニックを学ぶ必要があります。
ここからは、資産運用の下りと言えるつみたて投資の終わり方について4ステップに分けて解説していきます。
まずは全体像を確認しておきましょう。
- 投資のリスク量を落とす。
- リスク資産のスリム化を図る。
- ファンド解約の練習をする。
- リタイア後、年に1回全資産(安全資産+リスク資産)を定率で取り崩す。
ステップ①:投資のリスク量を落とす
![投資のリスク量を落とす](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/10/0a845daef312e0a39030187dee0759cf-1.png)
ステップ①〜③については、退職前5年間の準備期間中に行うものです。
イメージとしては、以下の図解のようになります。
![投資のリスク量を落とす](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/10/0a845daef312e0a39030187dee0759cf.png)
出典:Kindle版「つみたて投資の終わり方」より
- 35歳から投資を始める(積立期)。
- 60~65歳が、退職前5年間の準備期間。←ここからステップ①がスタート
- 65~90歳で資産を取り崩す(取り崩し期)。
上記のように、60〜65歳という退職5年前の準備期間に、まず最初にやるべきことが「投資のリスク量を落とす」ことです。
資産は、一般的に以下の2種類に分けることができます。
- 安全資産
→ 預貯金、個人向け国債など、元本が確保されている資産。
- リスク資産
→ 元本が確保されておらず、変動する全ての資産。
若いうちは、リスクを取れるでしょう。
なぜなら収入もどんどん増えることが期待できる上、万が一仕事を失ったとしても次の働き口も見つけやすいからです。
そのため、多くの人は65歳に向けて以下の図解のようにリスクを落としていくべきです。
リスク資産に重きを置いていた構成から、安全資産である預金の比率を重視したものにするといったイメージです。
![預金4:株式ファンド6](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/10/bc12eeb744f4a8bf6fe96b960b2cca82.png)
出典:Kindle版「つみたて投資の終わり方」より
また、以下のようなリスクの落とし方も考えられるでしょう。
安全資産とリスク資産の比率はそのままにして、リスク資産の中身をより低リスクなバランスファンドに変えるというイメージです。
![安全資産3:リスク資産7](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/10/42939d35db91596898702ea017554f0a.png)
出典:Kindle版「つみたて投資の終わり方」より
結局、リスクを落とすということは以下のようなこととなります。
- 安全資産(預金など)の割合を増やす。
- リスク資産を、より低リスクなものへ置き換える。
つまり、時速50kmで走っている車を時速20〜30km程度まで落とすワケです。
ステップ②:リスク資産のスリム化を図る
![リスク資産のスリム化を図る](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/10/b89e01e6c2f039474ae1c201165b245d.png)
60〜65歳(退職前5年間の準備期間)に、2番目にすべきことは「リスク資産のスリム化」です。
つまり、保有しているリスク資産の数を減らそうということです。
もし10本のファンドを持っているのであれば、思い切って1本に集約しようというワケです。
なぜ、リスク資産のスリム化をすべきなのか、その大きな理由は資産の取り崩しが楽になるからです。
- No.1〜No.10のファンドが100万円ずつ、総額1,000万円ある。
→ 生活費として50万円のお金が必要になった時、どのファンドから取り崩す?
以外と難しい問題なのではないでしょうか。
上記の例のように、持っているファンドが多いほど管理は複雑になります。
- 含み益があるものから取り崩すべきか?
- 含み損があるものから取り崩すべきか?
- すべてのファンドから均等に取り崩すべきか?
どのファンドから取り崩すか迷っているうちに、取り崩すこと自体が面倒になってしまったり、ポートフォリオバランスが崩れてしまったりするワケです。
そして、本書で紹介されているポートフォリオ例は、「預金とeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」です。
- 預金とオール・カントリーの比率を一定に保つことは容易。
→ 例えば預金4割:オール・カントリー6割など。
- 時代が変化しても、オール・カントリーが上手く分散投資をしてくれる。
→ アメリカが強い時はアメリカに、新興国が強い時は新興国への投資比率が高くなる。
一般的に、人は50歳をすぎると認知機能が低下し始めると言われており、特に遂行力、判断力、記憶力は早期に低下していくのです。
そして、80代前半で10〜15%、後半で15〜20%、そして90歳以上では30%の人が認知症になると言われています。
資産のスリム化を早めに進める必要があると考えるには十分なデータではないでしょうか。
ステップ③:ファンド解約の練習をする
![ファンド解約の練習をする](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/10/0cd2bc72df2b58d8d4d81e27b1825c67.png)
60〜65歳(退職前5年間の準備期間)に、3番目にすべきことは「ファンド解約の練習」です。
本書で特筆すべきところは、ファンド解約についても踏み込んで話題にしている点です。
著者のカン・チュンド氏は、長年のFP経験からインデックス投資家の心理を良く捉えています。
なぜなら、積立投資で資産を築いた人は、資産を積むことが堅牢な習慣となっているからです。
そんな資産家がある日を境に、「ファンドを売って、使いなさい」と言われても難しいはずです。
歯磨きをするなと言われても、歯を磨いてしまうように、習慣は中々抜けませんので当然と言えるでしょう。
ここで、カン・チュンド氏は以下のように提案しています。
リタイア前の準備期間を利用して、ファンドを任意解約してみる。
可能であれば10万円以上、50万円単位の解約でも構わない。
そして、解約がこれからの日常になると自分に言い聞かせる。
解約して生まれた費用は、様々な用途で使用してみる。
- 子供の大学院の入学資金にしてみる。
- 給湯器の取り替え費用にしてみる。
- ソファを買い替えてみる。
- 家族旅行の資金にしてみる。など。
上記の提案を聞いた時、「そんな練習は意味がない!今までの努力が無駄になる!」と考えた人もいるかもしれません。
実は、解約に抵抗感を示す人ほど、任意解約の必要性が高い人だとカン・チュンド氏は伝えています。
なぜなら、増やすマインドセットを解く必要があるからです。
お金を増やす訓練が必要となるように、お金を減らすにも訓練が必要になるということです。
お金の増やし方をマスターしてしまうと、それはそれで後が大変なのです。
ステップ④:リタイア後、年に1回全資産(安全資産+リスク資産)を定率で取り崩す
![リタイア後、年に1回全資産を定率で取り崩す](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/10/2008f16ff0df0fd5466616c95eb4519e.png)
退職前の5年間を準備期間として、以下の3つのステップを実行してきました。
- 投資のリスク量を落とす
- リスク資産のスリム化を図る
- ファンド解約の練習をする
そして、ステップ4からが本格的な「取り崩し期」のアクションとなり、以下の図解における、65〜90歳の期間を指します。
![投資のリスク量を落とす](https://liberaluni.com/wp-content/uploads/2022/10/0a845daef312e0a39030187dee0759cf.png)
出典:Kindle版「つみたて投資の終わり方」より
本書において推奨されている内容は、以下のスタイルです。
- メイン:定率で、年に1度の取り崩し。(図解の3番)
- サブ:必要になった時、必要な額だけ取り崩す。(図解の1番)
なぜ、定額の取り崩しがサブであり、定率の取り崩しがメインなのでしょうか。
その理由は、資産寿命が延びるからです。
定率で取り崩すということは、以下のような関係性となります。
- 株式市場が好調で資産額が増えた時には、取り崩し額が増える。
- 株式市場が不調で資産額が少ない時には、取り崩し額が減る。
例として、以下の図解のように投資元本が1,000万円だとして考えてみましょう。
見ての通り、取り崩し額が大きく変わることが分かるはずです。