- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
これを聞いて、「私が買っているファンドはこれじゃないよ…。」という人も安心してください。
S&P500に連動する低コストのインデックスファンドや、全世界株指数に連動する低コストのインデックスファンドであれば、必ずしも上記のファンドでなくても問題ありません。
「SBI・V・S&P500」や「楽天VT」などがその一例です。
「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は投資家からの評価が非常に高く、買い付けランキングでもかなり上位にいます。
下図のように、SBI証券では2位・3位、楽天証券では1位・3位となっています。
一方、「実のところ、中身はそれほど良く分かっていない」「何となく分かっているけど、自分の言葉では上手く説明できない」という人も少なくないでしょう。
このような人のために、S&P500については過去の記事で詳しく解説しました。
今回の記事は、上記の「オルカン」バージョンです。
オルカンというのは、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の略です。
要するに、皆さんが自分の言葉で説明できるくらいオルカンに詳しくなり、しっかりと長期投資するための記事です。
中身をしっかり理解していないと、暴落や不況が来た時に不安になり売ってしまいます。
インデックス投資における最強のアクション、「何もしない」ができなくなるワケです。
知っていれば正しい行動がとれる(お金を増やせる)一方、知らないと間違った行動をとってしまう(お金を失う)という意味で、今回の記事は100万円以上の価値があるかもしれません。
そこで今回の記事では、以下の2点について解説します。
絶対に覚えておきたいオルカンの特徴7選
オルカンの補強法3選
投資初心者が絶対に知っておくべきオルカンの基本から、オルカンの「穴」を埋めるための補強法(中・上級者向け)まで1粒で二度おいしい内容です。
以下の図解を見てから記事を読み進めると理解しやすくなるので、参考にしてください。
▼図解:今さら聞けない オルカンって何?
目次
解説動画:【初心者向け】全世界株ファンド・オルカンの「中身」と「補強法」について解説
このブログの内容は以下の動画でも解説しています!
絶対に覚えておきたいオルカンの特徴7選
① ベンチマークはMSCI ACWI
② (全世界株のくせに)小型株は含まない
③ (全世界株のくせに)フロンティア市場は含まない
④ (全世界株のくせに)スタンドアローン市場は含まない
⑤ 1987年以来のリターンは年率約7.6%
⑥ 現在の投資先の比率
⑦ コスト最安級で指数との乖離も小さい
特徴①:ベンチマークはMSCI ACWI
オルカンは、インデックスファンドです。
投資の世界には、ざっくり以下の2種類のファンドがあります。
- インデックスファンド
→ 日経平均株価やS&P500など、「指数」への連動を目指したファンド。
- アクティブファンド
→ 「指数」を上回る成績を目指したファンド。
しかし、「長期的には、7割~9割のアクティブファンドがインデックスファンドに負ける」「インデックス投資の方が再現性が高く、万人向け」というのは、今まで散々お伝えした通りです。
さて、オルカンは「どのような指数」への連動を目指しているのでしょうか?
その指数の名は、MSCI ACWIです。
「MSCI」は、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社の略で、「ACWI」はオール・カントリー・ワールド・インデックスの略です。
つまり、「モルガンスタンレーが作っている、ACWIという指数」になります。
この会社が作成・公表している指数(=MSCI指数)は非常に有名です。
MSCI指数は、多くの機関投資家や投資信託のベンチマークとして採用されているので、ぜひ押さえておきましょう。
日本中、どこを歩いていても見かけるのがコンビニですが、投資の世界のどこを歩いていても見かけるのがMSCI指数です。
「ここにもいたのか!」というように、本当によく見かけます。
そして、そのMSCIが作った指数の一つがACWIというワケです。
この指数は、すでに触れている通りオール・カントリー・ワールド・インデックスの頭文字をとったもので、日本では「アクウィ」と呼ばれることもあります。
- 投資対象になっている国: 先進国23カ国と新興国24カ国の計47カ国
- 投資銘柄数: 上記の国に上場する約2,900銘柄
- 株式市場の時価総額のうち85%をカバー
上記のような数字は、必ず頭に入れておきましょう。
ココが分かっていないと、要は「何も分かっていない」ことになります。
唐揚げ弁当を買っているのに、「あなたのお弁当の中身は?」と聞かれて、「分からない…。」と答えているような状態です。
さらに指数の特徴として絶対に押さえておきたいのは、この指数が「時価加重型」である点です。
正確に言うと、「浮動株調整後 時価総額加重平均」です。
前半と後半に分解して、ざっくりした意味だけ解説していきます。
浮動株調整後とは?
前半の「浮動株調整後」についてですが、「浮動株」というのは、実際に市場で売買される可能性の高い株式のことです。
この反対は「固定株」で、親会社が持っている株式、政府が持っている株式、企業間の持ち合い株式のような、市場で売買される可能性が低い株式のことです。
例えば、政府が持っている株を皆さんが「売ってくれ!」と言っても、簡単に「ハイそうですか」と売ってくれることは無いでしょう。
「浮動株調整後」というのは、各銘柄へいくら投資するか決める時は、「固定株」は除いて「市場で取引可能な株式」をベースに考えるという意味です。
固定株が多い銘柄には、いずれにせよたくさん投資できません。
時価総額加重平均とは?
次に、後半の「時価総額加重平均」ですが、ACWIは「約2,900の銘柄に同じ金額ずつ投資している」ワケでも、「47カ国に同じ金額ずつ投資している」ワケでもありません。
ACWIは、以下のような仕組みになっています。
- 時価総額が大きい銘柄には、たくさん投資する。
- 時価総額が小さい銘柄には、少しだけ投資する。
時価総額というのは「株価 × 株式数」で計算できます。
つまり、時価総額が大きい企業というのは、株価が高い人気企業というワケです。
ざっくり言うと、人気のある大企業ほど、たくさん組み込むというのが、「時価総額加重平均」です。
上図1900年の時点では、世界の株式時価総額に占める割合は、アメリカがたったの15%で、イギリスはトップの25%でした。
しかし現在の状況は以下のようになっています。
現在は、アメリカが全体の半分以上を占めており、イギリスは数%程度となっています。
世界の情勢は、刻々と変化するというワケです。
「時価総額加重平均」の強みは、勝つ国を、わざわざ予想して選ばなくて良いという点にあります。
強い国には多く投資して、弱い国には少なく投資するというように、効率的なバランスにポートフォリオを自動調整してくれるのがACWIの特徴です。
特徴②:(全世界株のくせに)小型株は含まない
「全世界株(オルカン)」と聞くと、世界中のあらゆる企業が投資対象に含まれるように感じるかもしれません。
しかし、そもそもオルカンの投資対象に入るのは「上場企業」だけです。
例えば、リベ大両学長が経営している会社は、全世界株には含まれていません。
さらに、上場企業のすべてに投資しているかというと、そうでも無いのです。
上場企業を時価総額の大きい順に並べた時に、「上位70%に入る大型株」と「中位15%に入る中型株」の2つだけを投資対象にしています。
上図の大型株・中型株部分に該当する銘柄が、全部で約2,900あるワケです。
そして、下位15%にあたる小型株部分はオルカンには含まれません。
有名な全世界株指数に、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスというものがあります。
これはバンガードが運用する、全世界株ファンド「VT」のベンチマークです。
「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」や「SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド」も、こちらの指数をベンチマークとしています。
FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスという全世界株指数は、ACWIとは異なり小型株を含みます。
投資銘柄数は約9,000銘柄で、株式市場の時価総額のうち98%をカバーしているように、より広範囲に投資ができる指数です。
ここまでの話で、以下のように疑問を持つ人もいるでしょう。
2つの指数に連動するETFの成績を、比較可能な2009年から見比べてみましょう。
- ACWI連動のETF:年利9.19%
- VT:年利9.33%
10年以上の期間を比較して、その差は0.14%しかありません。
この期間では小型株が優位だったためかVTに軍配が上がりましたが、中型・大型株が優位な場合はACWIに軍配が上がるでしょう。
いずれにせよ、「大差無い」という事実は変わりません。
特徴③:(全世界株のくせに)フロンティア市場は含まない
「全世界株」と聞くと、世界中のあらゆる国が投資対象に含まれるように感じるかもしれません。
しかし実のところ投資対象になっている国は、先進国23カ国、新興国24カ国の合計47カ国しかありません。
「あれ?今、地球上には190以上の国・地域が無かった?47カ国は少なすぎない?」という疑問を持った人は冴えています。
- 先進国
- 新興国
- フロンティア
フロンティア市場というのは、新興国に比べてさらに国が小さく、株式市場が未成熟で株式取引の流動性が低い(売買高が少なく、取引が成立しづらい)市場です。
歪みも伸びしろもある市場と言えます。
皆さんの中には、新興国への投資と聞くと「ハイリスク・ヤバい」という印象を抱く人もいるかもしれません。
それよりさらにトガっているのが、フロンティアです。
そもそも、フロンティアという言葉の意味は「開拓地と未開拓地の境界」や「未開拓の分野」です。
「夢」と「ロマン」と「リスク」がぎっしり詰まっていそうなエリアというワケです。
現在、フロンティア市場に区分されている国は以下の例を含めた約20カ国です。
- ヨーロッパ:クロアチア、アイスランド
- アフリカ:ケニア、ナイジェリア
- 中東:オマーン、ヨルダン
- アジア:パキスタン、ベトナム
これらの国々にある上場企業がとてつもなく成長しても、その果実は手にすることができないワケです。
特徴④:(全世界株のくせに)スタンドアローン市場は含まない
ココから先の話は、意外に知っている人は少ないかもしれません。
実は投資の世界には、先ほど紹介した「先進国・新興国・フロンティア」という区分の他に、もう1つ禁断のエリアがあります。
スタンドアローンというのは、「孤立」という意味です。
スタンドアローン市場に分類されている国の株式市場は、資本規制が厳しく(例:海外投資家は投資できない)、流動性が著しく低いといった特徴を持っています。
貧困や内戦・紛争など、何かしらの大きな問題を抱えている国ばかりなので、カントリーリスクが非常に高く、「投資不適格」の市場と言えるでしょう。
もともと、オルカンの投資対象には「ロシア株」が含まれていました。
それは、ロシアが新興国扱いだったからです。
しかし、現在のロシアは「スタンドアローン市場」に格下げされています。
現在、以下のような国がスタンドアローン市場に分類されています。
- 南米・中南米:アルゼンチン、ジャマイカ
- ヨーロッパ:ロシア、ウクライナ
- アフリカ:ボツワナ、ジンバブエ
- 中東:レバノン、パレスチナ
株式投資という観点では、安心して投資できそうにないエリアです。
いかに「全世界株ファンド」と言えど、スタンドアローン市場は含まれません。
「含んで欲しい」というニーズもほとんどないでしょう。
そもそも法規制などで含めることはできず、含めたところで爆弾を抱えるようなものです。
事情が変われば、フロンティアから新興国への格上げや、新興国からスタンドアローンへの格下げもあります。
このように、投資先は自動的にメンテナンスされていきます。
つまり、皆さんは何もしなくても「適切な投資対象」に投資できるというワケです。
この点を知るだけでも、ファンドのグリップ力がかなり上がるでしょう。
ちなみに、市場分類の全体図は下図の通りです。
先進国、新興国、フロンティア、スタンドアローン、どの国がどこに分類されているのか知りたい人は、じっくりと見ておいてください。
特徴⑤:1987年以来のリターンは年率約7.6%
ここまで見てきたように、オルカンのベンチマークであるACWIには、以下のような特徴があります。
- 先進国23カ国・新興国24カ国の、大型・中型株2,900銘柄に投資している。
- 小型株は含まない。
- フロンティア市場は含まない。
- スタンドアローン市場は含まない。
つまり、存在感の大きい投資適格な銘柄だけを集めて投資しているワケです。
実態として、まさに「全世界株」という名にふさわしい指数になっています。
いかに美しい設計でも、実力が伴わなければ仕方ありません。
ACWIのこれまでのリターンや、どのくらいのリスクがあるのかを簡単にまとめると、以下のようになります。
- 過去10年のリターン:年率8.54%。
→ 元本が10年で2倍以上になる高利回り。
- 1987年以来のリターン:年率7.64%。
- 最大損失:2007年10月末~2009年3月で、高値から58%のマイナス。
→ リーマンショックが起きた時期で、100年に1度レベルの大暴落。
- リスク:おおよそ15%~20%程度。
投資した1年後に一番良いケースでは約40%儲かり、一番悪いケースでは約30%損失が出るイメージです。
約95%の確率で、運用成績がこの範囲に収まるようになります。
短期で見るとかなりの値動きがあるものの、10年15年と投資を続けると、振り返ってみた時に年利5%~8%くらいで運用できるイメージです。
もちろん、上記はあくまで過去のデータに基づく話です。
ちなみに、ACWIの配当利回りは2022年11月時点で約2.3%です。
オルカンは分配金を出さないので、ファンド内の配当金はすべて再投資されます。
指数の利回りがどの程度かも、参考までに知っておくと良いでしょう。
特徴⑥:現在の投資先の比率
先ほど紹介した数字は、あくまでも過去のデータです。
ファンドの未来を決めるのは、現在何に投資しているかです。
というワケで、オルカンの投資先を見てみましょう。
オルカンの投資先を見るということは、ACWIの中身を見るということです。
- アメリカ:61.6%
- 日本:5.1%
- イギリス:3.5%
- カナダ:3.1%
- フランス:2.7%
アメリカ1カ国で、なんと全体の6割を超えるシェアを誇ります。
アメリカは以下のような特徴から、過去がそうであったように、将来も最も有力な投資先の1つであり続けるでしょう。
- 人口動態のバランスが良い(若い人が多い)
- 先進国では数少ない人口増加国
- 政治が安定しており、地政学リスクも小さい(本土が攻められにくい)
- 金融法制が整備されている
- イノベーションが起きやすい文化がある
- 日本:5.2%
- 先進国(日本除く):84.5%
- 新興国:10.0%
上記のように、新興国が1割程度しかない点も、知っておくべきでしょう。
次に、組入上位10業種は以下の通りです。
- 情報技術(ハイテク):20.4%
- 金融:14.3%
- ヘルスケア:12.8%
上位3業種で、全体の約半分を占めています。
時代のトレンドを、そのまま反映している状況です。
組入上位10銘柄は、以下のようになります。
- アップル:4.5%
- マイクロソフト:3.0%
- アマゾン:1.7%
- テスラ:1.1%
- Google(アルファベット):2.0%
- ユナイテッドヘルス:0.9%
- エクソン・モービル:0.8%
- ジョンソン・エンド・ジョンソン:0.8%
- バークシャー・ハサウェイ:0.7%
上記のように、地球代表クラスの優良企業が並んでいます。
GAFAM(ガーファム)という言葉があるように、昔は上位にフェイスブックが入っていました。
フェイスブックの例のように、時価総額の低い企業に対する投資比率が自然と下がっていくのが、時価加重のメリットです。
このようにオルカンは、「国別」「地域別」「業種別」「企業別」で見ても、未来を託すのに妥当なポートフォリオを維持していくでしょう。
それぞれの国・エリア・産業・企業の成長率を見る限り、長期で見て年率5%くらいの成長率は、十分に期待して良いはずです。
特徴⑦:コスト最安級で指数との乖離も小さい
ここまで見てきたように、ACWIは非常に良くできた指数です。
しかし、指数が優れていることと、その指数をベンチマークとするインデックスファンドが優れていることは、イコールではありません。
指数の成績が年率5%だったにも関わらず、インデックスファンドの成績が年率4%に過ぎなかったということは、平気で起こります。
その主な原因が「コスト」です。
指数を再現する過程では、以下のように様々なコストがかかります。
- 人件費
- 売買手数料
- 監査報酬(第三者が、ファンドの運用状況や不正が行われていないかを確認する)
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
→ コスト:0.1144%
つみたて全世界株式
→ コスト:0.22%(オルカンとの差は年率0.1056%)
全世界株式インデックス・ファンド
→ コスト:0.528%(オルカンとの差は年率0.4136%)
まったく同じ指数に連動するにも関わらず、ずいぶんとコスト差があります。
0.4%というコストは、投資の世界では決して小さくはありません。
このコストが、どんどん「もとの指数」との乖離に繋がっていくワケです。
ACWIに連動する投資信託としては、オルカンは最安級になっています。
またコストの安さに加えて運用の上手さもあり、乖離も小さいです。
きちんとしたインデックスファンドを選ぶことで、「指数」の成績を本当に自分のものとできます。
全世界株の指数として、小型株を含まないACWIを選ぶか、小型株も含むFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスを選ぶかで悩む人もいるかもしれません。
しかし、どちらの指数を選ぶかよりも、きちんとしたインデックスファンドを選べるかどうかの方が重要かもしれません。
指数の差はそれほどありませんが、ファンドのクオリティ差の方がかなりあるからです。
目指すものは同じでも、作り手によって大分差が出るというワケです。
オルカンの補強法3選
オマケとして「オルカンの補強法」について触れておきます。
補強法は以下の3つです。
- 小型株への投資
- フロンティア市場への投資
- 債券への投資
補強法①:小型株への投資
先ほど解説した通り、オルカンは先進国23カ国、新興国24カ国の合計47カ国の大型・中型株をカバーしたファンドです。
そしてオルカンは、株式市場の85%を押さえています。
これを限りなく100%に引き上げたい場合は、小型株への投資が有効な方法です。
実は、小型株というのは長期的に見てパフォーマンスが良いことで知られています。
そのような意味では、ポートフォリオにぜひ組み入れておきたいところです。
しかし小型株というのは時価総額が小さいので、時価加重型のインデックスファンドに組み入れられても、超少額になりがちです。
だからこそ、小型株を含まないACWI(約2,900銘柄)と、小型株も含むFTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(約9,000銘柄)の2つには、結果的に大きな差が生まれていないワケです。
お弁当パックのおかずとしては入っているものの、量がとても少ないようなイメージです。
両者の差になっている約6,000銘柄をかき集めても、大したボリュームではありません。
せっかく10倍になる小型株に投資していても、1円分しか買っていない場合は10円にしかならないイメージです。
そこで、小型株を自分で「もう少し重い比率で」買うワケです。
- VSS:バンガード・ FTSE・オールワールド(除く米国)スモールキャップ ETF
→ 全世界(米国除く)の小型株をかき集めたファンド
- VB: バンガード・ スモールキャップ ETF
→ 米国の小型株をかき集めたファンド
上記のようなファンドを組み合わせることで、オルカンで投資できていない小型株をカバーできるというワケです。
仕組み上、オルカンのような時価加重型のインデックスファンドというのは、人気のある銘柄にさらに投資して(順張り)、人気の無い銘柄には投資しないという形になりがちです。
現状オルカンに対して、ナスダックなどのファンドをトッピングするのは、もともとたくさん持っているものを、さらにたくさん買うイメージです。
一方、オルカンに対して小型株などのファンドをトッピングするのは、もともと持っていないものを買って、「分散」を効かせながら「逆張り」をするイメージです。
小型株はハイリスクなので、リスク低減という観点ではイマイチですが、オルカンだけの場合とは違った値動きを楽しめるでしょう。
このように自分が持っているファンドの理解を深めることで、違った投資の形が見えてくるのです。
注意してもらいたいのは、リベ大としては決して小型株ファンドへの投資を推奨しているワケではありません。
オルカンの大きな魅力の1つは、それ1本で投資が完結することです。
自分がやっている「コア部分」の投資の特徴をよく理解し、新たな投資を検討する際は、コア部分との補完関係を十分に見極めるという「流れ」を参考にしてください。
補強法②:フロンティア市場への投資
そもそも、オルカンはフロンティア市場を投資対象としていません。
つまり、フロンティア市場はまるまる「取り逃している」ことになります。
フロンティア市場は歪みが大きいだけに、ハマった時のリターンも大きいというハイリスクな市場です。
このような「ロマン」のある市場が好きな人は、少なくないかもしれません。
例えば、iシェアーズ MSCI フロンティア & セレクトEM ETF(ティッカー:FM)というファンドがあります。
このファンドは、フロンティア市場・新興国市場の中からセレクトされた一部の企業に投資をしています。
国別の構成比率としては、上から順に以下のようになっています。
- ベトナム:21.08%
- ナイジェリア:7.26%
- バーレーン:6.48%
- ルーマニア:6.18%
上記のように、フロンティア市場ど真ん中の国に投資できます。
ファンドの成績は、以下の通りです。
10年のトータル・リターンは2.96%ですが、ベンチマークは4.79%です。
「指数」と「実際のリターン」にかなりの差があることが分かります。
これは、ファンドの信託報酬が0.79%と、高めであることなどが理由です。
流動性が著しく低い、不正が起きやすいなど、運用上の課題も多いです。
「過去10年の米国株ブームの反動で、次は新興国ブームがくるかも」などもささやかれ始めました。
リベ大としては決して強くはおすすめしませんが、このようなファンドがあることは知っておいても良いでしょう。
フロンティア市場の中には、ベトナムやナイジェリアといった、将来有望な国も少なくありません。
「コスト」「カントリーリスク」を考えると気軽には投資できませんが、ロマンはあります。
補強法③:債券への投資
オルカンの補強方法というのは、要は「手が届いていないところへの投資」です。
小型株やフロンティア市場など、「取りこぼしており」かつ「将来有望そうなところ」には手を出しても良いかも…という発想です。
株式に関して言えば、これらを押さえれば、ほぼ網羅できることになります。
しかし、小型株・フロンティア市場というのは、どちらの選択肢も「ハイリスク」です。
「リスクを押さえてより保守的に…」という人がとる選択肢ではありません。
「株式はオルカンで十分とはいえ、オルカンだけだとリスクが高すぎるので、もう少しマイルドに…」という人は、債券で補強することをおすすめします。
2022年の債券市場は、債券投資家にとって「地獄」と呼べる惨状でした。
しばらく「要らない子」扱いされていた債券ですが、注目度は高まっています。
リベ大としては「オルカン + 日本円」のシンプルポートフォリオをすすめますが、「オルカンだけだとリスクが高いと感じる」「とはいえ現金が多すぎるともったいない」と感じる人は、債券投資を検討しても良いでしょう。
株式60%:債券40%のような伝統的ポートフォリオも、しっかりと機能するはずです。
「BND」や「AGG」といったメジャーな総合債券ETFは、引き続き監視する価値があるでしょう。
まとめ:オルカンの特徴を理解して自分に合った投資をしていこう!
この記事では、以下の2点について解説しました。
絶対に覚えておきたいオルカンの特徴7選
オルカンの補強法3選
ACWIは、オール・カントリー・ワールド・インデックスの略です。
先進国23カ国・新興国24カ国の約2,900銘柄に投資しています。
株式市場の時価総額のうち、85%をカバーしているという特徴があります。
全世界株と言いつつ、各株式市場の時価総額下位15%の小型株は含んでいません。
全世界株と言いつつ、新興国市場よりさらに小さな市場は含んでいません。
例えば、ベトナム、ナイジェリア、バーレーン、ルーマニアなどは含まれていません。
全世界株と言いつつ、スタンドアローン市場(=孤立した市場)は含んでいません。
ロシアやウクライナなどは、現在スタンドアローン扱いとなり、含まれていない状況です。
リスク・リターンのイメージは以下の通りです。
- 過去10年のリターン:年率8.54%。
- 最大損失:2007年10月末~2009年3月の、高値から58%のマイナス。
→ リーマンショックが起きた時期で、100年に1度レベルの大暴落。
- リスク:約15%~20%程度。
おおよそのイメージとしては、投資した1年後に95%の確率で「一番良いケース:プラス40%」「 一番悪いケース:マイナス30%」のレンジに収まります。
浮き沈みがありつつも、長期的に考えると年率5%~8%程度が期待できるでしょう。
- 国:アメリカが約60%
- 地域:日本5%、日本を除く先進国85%、新興国10%
- 業種:ハイテク、金融、ヘルスケアで約半分
競合ファンドと比べると、5分の1~半分程度のコストで運用されています。
下図のように、オルカンの「手の届かないところ」を埋めにいくイメージです。
- VSS:バンガード・ FTSE・オールワールド(除く米国)スモールキャップ ETF
→ 全世界(米国除く)の小型株をかき集めたファンド
- VB: バンガード・ スモールキャップ ETF
→ 米国の小型株をかき集めたファンド
オルカンに上記を組み合わせると、株式市場を99%カバーできるようになります。
小型株はハイリスクですが、成長性には期待が持てます。
「FM」などのETFを通じて、ベトナム、ナイジェリア、バーレーン、ルーマニアといったフロンティア市場に投資できます。
ただし、フロンティア市場への投資はハイリスクかつ高コストで、上級者向けです。
「株式のカバーはもう十分だ」と考えるのであれば、債券にも目を向けてみましょう。
債券市場は、暴落相場を経て投資妙味が増しています。
AGGやBNDといった総合債券ファンドは、引き続きチェックする価値があります。
このように色々見てみると、「面倒くさい!もうオルカン一本でいいよ!」という気分になった人も多いのではないでしょうか。
オルカンは、本当に完成度が高い投資商品です。
とはいえ、今回のようにオルカンの特徴をしっかり押さえて、補強方法のアイデアについても耳を傾けてみるというプロセスは重要です。
このプロセスを経ることで、「自分がやっている投資は、今のままでも十分レベルが高い!」と思えるでしょう。
このような実感が、結果として冒頭でお伝えしたような長期投資の実現に繋がるはずです。
▼「増やす力について詳しく知りたい」という人に読んでほしい記事はこちら!
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