その書籍とは、日本におけるFIREの先駆けともいえる穂高 唯希氏(旧:三菱サラリーマンさん)の「#シンFIRE論」です。
穂高氏にとっては、2冊目の著書になります。
ちなみにFIREというのは、「Financial Independence Retire Early(ファイナンシャル・インディペンデンス・リタイア・アーリー)」の頭文字を取った言葉です。
穂高氏の1冊目の著書『本気でFIREをめざす人のための資産形成入門』は、8万部を超えるベストセラーになっています。
そして今回の記事では、穂高氏の新刊「#シンFIRE論」を紹介します。
この本のテーマは、ズバり「新しいFIRE論」です。
FIREを実現するために最も大切なことは何でしょうか?
実はこの答えが、「#シンFIRE論」という書籍の中にあります。
そこで今回の記事では、以下の2点について解説します。
FIREを実現するために「本当に大切な」たった1つのこと
穂高氏のFIRE関連エピソード8選
記事を最後まで読んでもらうと、皆さんがFIREを実現できる確率は高まるでしょう。
目次
解説動画:FIREを実現するために「本当に大切な」たった1つのこと【書籍紹介】
このブログの内容は、以下の動画でも解説しています!
FIREを実現するために「本当に大切な」たった1つのこと
早速結論からお伝えすると、FIREを実現するために大切なものは「主体性」です。
つまり、自分のアタマで考えて自分から積極的に動く姿勢です。
この結論を見て、次のように思った人も多いかもしれません。
しかし、少し冷静になって考えてみましょう。
リベ大では、「お金にまつわる5つの力」をいろいろな角度から紹介しています。
▼図解:お金にまつわる5つの力
上記のうち、資産形成のエンジンになるのは次の3つの力です。
- 貯める力:生活満足度を維持したまま支出を下げる力
- 稼ぐ力:働いて稼ぐ力
- 増やす力:お金を運用して増やす力
→ 富は、「収入から支出を引いたもの」と「資産に利回りをかけたもの」を足すことで算出できる。
支出を減らして(=貯める力)、高い収入を稼ぎ(=稼ぐ力)、利回りを高めていけば(=増やす力)、お金は嫌でも増えていきます。
お金の貯め方・稼ぎ方・増やし方に関する方法は、このブログやリベ大YouTubeなどのコンテンツでお伝えし続けています。
つまり皆さんは、テクニックや方法を知らないワケではありません。
にもかかわらず、お金を増やせる人と増やせない人の2種類の人に分かれてしまうワケです。
先ほどもお伝えした通り、主体性というのは自分のアタマで考え、自分から積極的に動く姿勢を指します。
「自分の身に起きることを自己責任と考える」、つまり自分の人生に自分で責任を持つという姿勢です。
世の中には、星の数ほどお金に関するテクニックがありますが、もし主体性がなければ以下のような状態になります。
自分に合った手法を見つけることができない
→ 「インデックス投資」「高配当株投資」「不動産投資」など、どの投資が良いか決められない。
自分に合った形にカスタマイズできない
→ 人のやり方は、あくまで他人のやり方。
うまくいかなかったら人の責任にして終わり
→ 反省・改善は生まれない。
「世の中はビュッフェのようなものだ」と表現していた人がいます。
取ろうと思えば、いくらでも美味しい料理(=情報)はあるワケです。
しかし世の中には、取りに行かない人や、取りに行っても上手に選んだり味わったりできない人がいます。
おそらくこの点において、リベ大両学長と穂高氏は同じ意見なのでしょう。
世の中にすでに十分なテクニック・ノウハウがあるのであれば、差がつく部分は情報ではなく主体性です。
- 何を考えるのか
- どの選択肢を選ぶのか
- それをどう成功に結び付けていくのか
だからこそ穂高氏は、この2冊目の著書のテーマに主体性をあげ、「主体性を鍛えるための26の方法(修練法)」という書籍構成にしたのでしょう。
この書籍において、投資の話はコラムで一部触れられているだけです。
書籍の本題は以下のように、「主体性を高める思考法」に絞られています。
- 第1章:選択の思考法
- 第2章:遮断の思考法
- 第3章:対人の思考法
- 第4章:目標の思考法
- 第5章:集中の思考法
- 第6章:常識の思考法
- 第7章:価値観の思考法
どこを探しても、「資産を5年で10倍にする方法」のような内容は書かれていません。
人によっては、「もっと投資について知りたい!」「もっとお金を増やすノウハウを知りたい!」という感想を抱くかもしれません。
結論としてこの書籍は、「答えを知りたい人のために作られた本ではない」とも言えるでしょう。
逆に、「お金にまつわる5つの力」+「主体性」が、FIRE実現への普遍の真理かもしれないと考える人にとっては、読む価値がある本というワケです。
しかしこの点をさらに深く考えると、「高い給料を稼ぐことができたマインド」「軸をブラさずに自分の投資を続けられたマインド」にこそ、財宝に繋がるヒントがあると言えるでしょう。
自分で財宝を見つけ出し、つかむためのヒントというワケです。
給料や投資成績は目には見えやすいものですが、そこにとらわれ過ぎると本質を見誤ります。
もしこの書籍で紹介されている「主体性を鍛える26の修練方法」のうち、3つだけでも実行できれば、「貯める力」や「稼ぐ力」を高めることに直結していくはずです。
- 決断疲れを減らす「意志力の最適化」をせよ
- 「苦手な生きもの図鑑」をファイリングせよ
- 大きな課題は「場数」をこなせ
ちなみに2つ目の「苦手な生きもの図鑑」について補足すると、穂高氏は苦手な人を「苦手な生きもの」と命名しているそうです。
そして動物図鑑のようにその人の特徴を整理して、脳内ファイリングしているとのこと。
ここで紹介した修練方法は、蓄財する上で一見遠回りの方法にも見えますが、「急がば回れ」という言葉もあります。
短期で効果のある即効性のある方法と、長期で効果の見込めるジワジワ効く方法を上手に組み合わせるバランスこそが重要です。
穂高氏のFIRE関連エピソード8選
前のパートで何度もお伝えした通り、この書籍のテーマは「主体性」です。
このパートでは、主体性に関する穂高氏のエピソード8選を、大きく3種類に分類してみました。
- どこから生まれたのか?
- FIRE達成にどう貢献したのか?
- FIRE後の生活にどう影響しているのか?
なお書籍のネタバレになる内容を含むため、ネタバレが嫌な人は、先に書籍「#シンFIRE論」を読んでみてください。
穂高氏の主体性はどこから生まれたのか?
そもそも穂高氏の主体性はどこから生まれたのでしょうか。
ここでは、主体性が生まれることになったエピソードを2つ紹介します。
エピソード①:家族の不幸
書籍には、以下のような内容が書かれています。
私はときに、焦燥感におそわれます。死を感じるからです。
父という身近な人を、幼い頃に突然亡くしたことで、「明日、死ぬかもしれない」という厳然たる事実に対して、言葉以上の切迫感におそわれます。
彼は、裕福とはいえない母子家庭で育ちました。
高校や大学には、奨学金を3つ得ながら通っていたそうです。
大勢の生徒の前で奨学金の獲得者を発表され、「家にお金がないのがバレる。恥ずかしいからやめてくれ」と感じることもあったそうです。
そして働き詰めの母親を見て、穂高氏は「どうやったら、母がここまで身を粉にして働かずに済むのか」と考えます。
ココに、まさに穂高氏のFIREの原点があります。
- 母親に経済的に不自由な思いをさせない
- 自分も経済的に不自由な思いをしない
このためには、「お金」について正面から向き合っていく必要があります。
つまり主体性こそが、現状打破のエンジンだったワケです。
ちなみにこの話は、両学長にも通じるところがあるそうです。
両学長の家も、学長が幼少期の時からお金には苦労していました。
そこで両学長は小さい時から、「なんとか親に楽をさせてあげたい」「毎月父に100万円渡してあげたい」と思っていたそうです。
エピソード②:北京大学への留学
再び穂高氏のエピソードに戻ります。
穂高氏はその後、中国最高峰の北京大学に留学します。
その時、「中国、韓国、ベトナムなどの人々は、自分の人生に対して真剣だ」と衝撃を受けたようです。
まさに主体性を発揮しなければ、自分はどんどん埋もれてしまうような環境です。
この環境の中で穂高氏は周りの人に触発され、半年でHSK(中国語検定)の最高級を取得します。
結果、問題なく中国語で読み書きできるようになりました。
ちなみに就職した後、仕事で中国語を使っていると、会社の同僚に「中国語を使うな!皆が分かるように、中国人相手でも英語を使え!」と言われたそうです。
まとめると、穂高氏の主体性を生んだ要因として、以下のようなものが挙げられます。
幼少期における、親族の不幸
若くから、世界の若者に触れたこと
ここからハッキリ言えることは、ただ1つです。
それは、「きっと皆さんにも似たような経験があるはず」ということです。
- 家族の不幸
- 「この人には敵わない!」という人との出会い
- 上司や友人に言われた、絶対に言われたくなかった一言
しかし一方で、それが財産になりうることも確かです。
もし皆さんが「自分には主体性がない…」と感じているのであれば、ゆっくり時間を取って過去を振り返ることをおすすめします。
ポジティブな経験でもネガティブな経験でも構いません。
振り返ることで、「自分の人生、これで良いんだろうか?(or これで良いんだ!)」と感じた出来事を思い出しましょう。
このような経験は、向き合えば力を得る一方で、逃げれば力を失います。
両学長が起業したての頃は、「もっと将来のことをちゃんと考えなさい!」と学校の先生にめちゃくちゃ怒られたそうです。
しかしこのような事に負けずに向き合い、「主体的にお金について学んだからこそ今がある」と両学長は言っています。
主体性を取り戻すヒントは、皆さんの「過去 = 原体験」にあります。
仮にそれがネガティブな経験だったとしても、心の中に火を灯して、主体性を取り戻していきましょう。
穂高氏の主体性はFIRE達成にどう貢献したのか?
このようにして育まれてきた穂高氏の主体性ですが、どのような形でFIRE達成に貢献したのかを見ていきましょう。
ここでは、4つのエピソードを紹介します。
エピソード③:給料8割貯蓄法
控えめに言っても尋常ではないレベル、まさに非常識です。
この非常識を「自分の常識」として貫き通せたのも、主体性のなせる業です。
穂高氏(旧:三菱サラリーマンさん)と聞くと、「倹約だらけの仙人のような暮らし」をイメージする人もいるかもしれません。
なぜなら普通に考えると、仙人のように暮らさないと給料の8割を貯蓄に回すことはできないからです。
しかし実のところ、彼は仙人のような暮らしではなく、以下のようにリッチな暮らしもしていたそうです。
- FXで稼ぎ、ブランドもので身を固めて代官山を歩く。
- ハイグレードマンションに住む。
誰かに「贅沢はダメ!節約が大事!」と言われた時、最初のうちはその通りできるかもしれません。
しかし心の片隅では「でも、ちょっとぐらい贅沢しても良いじゃん…」という思いが残り続けることもあるでしょう。
このような時、主体性のある人は実際に経験したり、経験した上で自分なりの価値判断をしたりします。
彼が贅沢な暮らしをしたり、外野の声に惑わされることなく自分の信念を貫き通せたりしたのは、主体性に基づくリアルな経験があったからです。
エピソード④:エリートイギリス人の「やめておけ」をスルー
彼はFIREを目指す過程で、ケンブリッジ大学医学部卒・港区高輪在住の30代半ばのイギリス人に、「株式投資はリスクが高い。配当でまかなうのは無理だから考え直した方が良い」と言われました。
スーパーエリートのイギリス人に、「君のやり方は、やめたほうが良い」と言われたら、皆さんはどのように感じるでしょうか。
エピソード⑤:不動産会社の「値下げしろ」をスルー
また穂高氏には、自分の住居を売りに出した際のエピソードもあります。
不動産会社から、「今は市場が冷え込んでいる」と計4回にわたって値下げを勧められたそうです。
しかし彼は以下のように考えました。
もし主体性のない人であれば、誰かに「その投資はやめた方が良い」と言われたらやめ、誰かに「もっと値下げした方が良い」と言われたら値下げするでしょう。
このエピソードは、数あるものの中のほんの一例にすぎません。
このようなことは、一事が万事です。
流される人はいつも流され、流されない人は常に流されません。
ややもするとFIREした人の話は、その「手法」に目がいきがちです。
しかし実際のところ、手法以上に重要なのがマインドです。
成功をつかみ取る人は、程度の差こそあれ、どんな状況からでも人生を前進させます。
両学長の周りにいる経営者や投資家も、どんな状況からでも人生を前進させていっているそうです。
これこそ、まさに成功のための「普遍の原則」と言えるでしょう。
両学長自身、今この瞬間にお金がゼロになったとしても、どうとでも人生を好転させる自信があるそうです。
おそらく穂高氏のようなタイプの人も、今ゼロからスタートしても、どうせFIREを達成するはずです。
エピソード⑥:「本を読まない子」からのブログ更新
ちなみに穂高氏がFIREを達成する上で追い風となったブログ運営について、彼の母は次のように言っていたそうです。
「あんた日本語書けるんやねぇ(笑)。全然本を読まない子やったのに」文章を書くことが全然得意ではなかったものの、「今これが必要だ!」と自分のアタマで考えて積極的に記事更新を続けたことも、主体性が発揮されたエピソードの1つでしょう。
穂高氏の主体性はFIRE後の生活にどう影響しているのか?
主体性は、FIREを達成するために必要なだけではなく、FIREを達成した後の暮らしにも必要です。
最近では、「FIRE卒業」というフレーズも話題になりました。
FIRE卒業について詳しく知りたい人は、以下の過去記事も参考にしてください。
というワケで、最後に穂高氏のFIRE“後”の生活について、2つのエピソードを紹介します。
エピソード⑦:稲作・畑作・果樹栽培
FIRE後に穂高氏は、1年間農家で働き、稲作・畑作・果樹栽培などの農業を学んだそうです。
理由は、「サバイバル能力を身に付けたかったから」とのこと。
近くに湧き水が出る地域で、火と水を確保できるようにしており、有事の際は土地を耕せば良いと考えているそうです。
皆さんは「収入の分散」と聞くと、何をイメージしますか?
- 給料
- 配当金
- 家賃収入
- 副業収入
穂高氏はこれに、「現物収入」という概念を加えています。
要するに、米・野菜などの食料品です。
農林水産省によると、日本の食料自給率は「カロリーベースで38%」「生産額ベースで66%」となっています。
(参考:農林水産省「その1:食料自給率って何?日本はどのくらい?」)
また以下のように品目ごとの食料自給率(重量ベース)は、「米:97%」「牛肉:35%」など、品目によって差があります。
上図のように全体的な食料自給率を考えると、日本は仮に輸入がストップすると、食べていけなくなる国です。
このような意味で、有事の際に必要なのは「お金ではなく現物」とも言えるかもしれません。
有事の食料不足に備えて自給するという考えは、いわゆるカオスヘッジ(混沌回避)の考え方です。
決して「起きる確率が高いだろう」と想定している、メインシナリオではないワケです。
「お金だけで成り立つFIRE生活は、まだ土台が弱い」
「食料を生み出す土地を財産に加えて、土台をより盤石にしたい」
これも、原体験に基づく「自由への強烈な願望」のなせる業です。
両学長も自由への強烈な願望では負けていませんが、このようなカオスヘッジに備える必要性は感じていないそうです。
穂高氏は自然好きとのことなので、「実益を兼ねた趣味」の側面もあるのかもしれません。
この書籍では、以下のエピソードのように、普通のFIRE本ではお目にかかれない話が出てきます。
- 北海道での100㎡の雑草抜きエピソード
- 夜中3時に家を出て、大型特殊機械に乗って除雪したエピソード
エピソード⑧:なんでもアリの運用スタイルへ
最後に、穂高氏の投資手法についても紹介します。
実はFIRE前とFIRE後で、以下のように投資手法はすっかり様変わりしているようです。
- FIRE前:高配当株投資
- FIRE当時:高配当株+増配株投資・グロース株投資
- FIRE後(現在):ルールなし
今や穂高氏は、高配当株投資家というワケではありません。
現在は、「無配株」「ゴールド」「短期投資」「空売り」など、なんでもアリという状態になっているようです。
これも、誰かに言われた通りにFIREを実現した人であれば、あり得ない変わり具合でしょう。
ちなみに両学長も、投資スタイルはガンガン変わっています。
今や最もお金を使っている投資先は、クリニック(=病院)です。
この点に関しては、両学長自身、一年前では想像すらできなかったと言っています。
穂高氏がFIREを達成した時の総資産は、7,000万円でした。
その当時は「7,000万円は少なすぎる。きっと後悔する」といった声も多数聞かれました。
- 実際のところ少なすぎたのか?
- 彼の資産は今いくらになっているのか?(減ったのか?増えたのか?)