こんにちは、こぱんです!
2020年3月に入って「原油価格」の暴落が話題になっているのはご存知でしょうか?
今、原油をめぐって世界では何が起こっているのか?
株価だけでなく、原油価格まで気にするようになると、世界経済への理解がまた1つ深まります。
というわけで今回は、なかなか馴染みのない原油について
- 原油の基本
- 原油価格ってそもそも何?
- なぜ原油が値下がりしているの?
- 原油が値下がりするとどうなるの?
について、分かりやすく解説します!
目次
解説動画:【18年ぶり安値】原油価格が暴落した理由とその影響を解説
このブログの内容は下記の動画でも解説しています!
はじめに:原油界隈で何が起きているのか?
冒頭でも話題に上がりましたが、最近は投資家の中でも
- 原油が値下がりしている!
- 石油会社が潰れてしまう!
と、ちょっとした騒ぎが起こっています。
(後ほど詳しく説明します)
現在、原油が値下がりしている理由は下記です。
- ロシアとサウジアラビアが原油の増産を宣言して
- 原油の供給が増え過ぎる懸念が強くなっているため
そして原油が値下がりすると、アメリカの「シェール企業」が潰れる可能性があります。
原油(初級編)
さて、皆さんは「原油」と「石油」の違いは分かりますか?
- 原油を精製すると→ 石油(ガソリン・軽油など)になる
- 原油は「油田(ゆでん)」から採掘することができる
- 油田は、陸上・海上問わず地球上に数万ヶ所存在している
(出典:東洋経済ONLINE)
(出典:Sustainable Japan)
油田では、このような巨大な設備を使って原油を採掘しています。
そして、採掘した原油は製油所に運ばれていきます。
製油所に運ばれてきた原油は蒸留装置や分解装置によって、さまざまな「石油製品」に生まれ変わります。
- LPガス(ガスレンジやタクシーの燃料)
- ガソリン(乗用車の燃料)
- 灯油・ジェット燃料(石油ストーブ・ジェット機の燃料)
- 軽油(トラックの燃料)
- 重油(船の燃料) etc...
▼絵にするとこんな感じです
(出典:岡地株式会社)
そして、「1日あたりの原油生産量産ランキング」は下記のようになっています。
「原油=中東」のイメージが強いですが、実はここでもアメリカがNo.1なのです。
原油(中級編)
産油国同士の喧嘩によって原油価格が大暴落
まず、原油について絶対に知っておきたいのが
「原油の生産量は、意図的にコントロールされている」
ということです。
もし原油を生産しすぎると、大量の石油製品が精製されます。
すると、どんどん石油製品の市場価格が下がっていきます。
これは「ガソリンが欲しい!」という市場のニーズより供給が過多になり、値崩れしてしまうからです。
そうすると原油の販売価格よりも、原油の採掘コストの方が高くなり赤字になります。
値崩れを避けるため、産油国(さんゆこく)は話し合って
「あんまり原油を作りすぎないようにしようぜ!」
という相談しています。
そんな原油の生産量に大きな影響力を持っている組織があります。
それが「石油輸出国機構(OPEC:オペック)」です。
- イラン
- イラク
- クウェート
- サウジアラビア
最近ではロシアなども一緒になり「OPECプラス」として協調減産に取り組んでいます。
2020年3月6日には、OPECプラスの会合も行われました。
そしてOPECは、世界経済の後退・石油の需要減少を懸念して
「私たち(OPEC)は、減産します」
「あなたたち(非OPEC加盟国)も、減産してください」
と、「OPECの非加盟国」にも協調減産を提案しました。
すんなりと協議が通ると思ったのですが…
なんとサウジアラビアに次ぐ"世界第3位の産油国であるロシア"が、まさかの大反対!
7時間にも及ぶ協議も実らず、決裂となってしまいました。
ロシアは
「減産なんてイヤだね!俺は増産するぜ!」
と言い張っています。
ところが、サウジアラビアは
「オーケーイ!それじゃあ俺も増産するぜ!」
と、まさかの応戦し、全力の殴り合いを開始しました。
とにもかくにも、ロシアとサウジアラビアの喧嘩が勃発!
そして、2017年から続いていた"なかよし協調減産"は終了してしまいました。
これを受けて「WTI原油先物」は大・暴・落!!!
今後、世の中に大量の原油が出回る事になるので、原油の先物価格は見事に暴落したのです。
原油価格の推移を2020年の初めから比べると
【1バレル60ドル台 → 1バレル30ドル割れ】
→ 50%OFFのバーゲン価格になってしまいました。
元々、昔は樽で原油を運んでいたのが由来だそうです。
最近のチャートも、このありさまです。
ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されている、アメリカの代表的な原油の先物商品のこと。
「WTI=West Texas Intermediate(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)」の意味。(暗記しなくてOKです^^)
「WTI原油先物」については、取引量と市場参加者が多いことから、原油価格の代表的な指標のひとつになっています。
ロシアとサウジアラビアの溝が深まるにつれ、「WTI原油先物」は下落を続けています。
2020年3月18日には、まさかの20ドル付近に到達しました。
「WTI原油先物」が20ドル前半の価格で推移するのは、なんと2002年2月以来のことです。
ロングチャートを見ても、2000年以来の原油安になっていることが分かります。
(出典:楽天証券「NY原油ロングチャート」)
原油価格が値下がりするとどうなるの?
では、原油価格が値下がっていくと、この後どうなるのでしょうか?
最大の懸念は、アメリカのシェール企業の倒産です。
まず、シェール企業とは
- シェールオイルやシェールガスの石油・天然ガス生産会社
- シェールガスの技術・サービスを提供している会社
などのことを指します。
アメリカは「シェール層」から原油を採掘する技術を発展させ、2018年に世界1位の産油国になりました。
頁岩(けつがん)と読みます。
(出典:Wikipedia「頁岩」)
- 油分を含む頁岩を「オイルシェール」という
- 2000m超の深い地層にあるので、今まで採掘コストが合わなかった
- 2006年以降の技術革新により安価に採掘できるようになった(シェール革命)
アメリカのシェール企業は、原油の採掘設備を購入するために数百億ドル規模の社債(借金のようなもの)を発行しています。
もし原油価格がこのまま低迷を続けると…
↓
原油が売れなくなると、業績が悪くなる
↓
業績が悪くなると、借金が返せなくなる
↓
借金が返せなくなると、倒産!
こうなると、社債を持っている金融機関やファンドも大打撃を受けます。
連鎖的に資金繰りが悪化し、経営破綻が起こります。
そして、世界の金融危機に発展してしまうのです。
原油価格の低迷を受けて、新興のシェール企業だけでなく、石油会社の株価も大暴落しています。
米国はシェール企業の社債デフォルト(破産)を非常に警戒し、全力でそれを止めにかかっている状況です。
ちなみに、殴り合いをしている当の本人たちはというと…
「原油価格が低迷しても、最大10年は耐えられる」
「ロシアは、サウジほど原油依存の国じゃない。余裕」
「(アメリカのシェール企業潰れたら嬉しいしな…ニヤリ)」
「1バレル40ドルあればOK、30ドル割れが長く続くのはちょっと勘弁」
「ロシアが憎くて、増産するって言っちゃったけど…」
「実は1バレル80ドルを割ると、財政がキツイんだよね」
「防衛費予算がかさんでるし、王室の政治力低下にも繋がるし」
「あんまりこの状態が長く続くのはイヤだなぁ…」
ちなみにアメリカはというと…
「30ドル台が3ヵ月~半年続くと、シェール企業の倒産もありうる」
「マジで殴り合いやめれ!!!」
そして2020年3月には「1バレル20ドル台」となり、みんなにとって地獄の状況です。
しかし、原油が安くなると、石油製品が安くなるので
- 車社会で生活する皆さんは嬉しいし
- コスト安になって嬉しい企業達も出てきます
まとめ:WTI石油先物という指標もチェックしてみよう!
では、最後にここまでの話をまとめていきましょう!
原油とは「石油製品の原料」になるものです。
原油の生産量は「OPEC」を中心とした産油国によって、ある程度コントロールされています。
これを「協調減産」と言い、市場に出回る原油の量が多くなりすぎないようルールを決めて調整をしています。
そして情勢の変化で「世界の景気後退&原油需要への懸念」が高まる中、2020年3月6日に「OPEC」がロシア等に協調減産を持ちかけました。
しかし、ロシアがこれを拒否して協調減産は決裂しました。
原油価格は【60ドル台→20ドル台】という"2002年以来の低水準"となりました。
原油価格の低迷が続くと、アメリカのシェール企業が採算割れになり、いずれ倒産します。
シェール企業にお金を貸していた人たちも、連鎖倒産する可能性が出てきます。
これが、株式市場の株価暴落にも大きく影響しています。
原油価格が値下がるなか、
- 30ドル台が続くと苦しい、アメリカ
- 30ドル~40ドルぐらいなら耐えられる、ロシア
- 実は80ドルないとキツイ、サウジアラビア
といった原油国、石油関連企業はいつまで持つか分かりません。
しかし結果として、原油国同士で非常に苦しい価格競争・消耗戦を始めてしまいました。
今後どうなるか、要注意していく必要があります。
この記事を読んだ皆さんも、ぜひ「WTI石油先物」という指標を覚えておいて下さい。
そして時々、この値段をチラ見して欲しいと思います。
以上、こぱんでした!
\リベ大Youtubeでは「人生を豊かにする生き方・考え方・お金の知識」を配信中!/