2022年3月28日の外国為替市場で、一時6年7カ月ぶりとなる1ドル = 125円台を付けました。
2021年1月頃は1ドル = 102円前後だったことからも、急激なスピードで円安が進行していることが分かります。
なんだか難しいし、僕にはあまり関係ない話だな。
だから、ちゃんと意識しておかないとダメだよ。
あひるくんと同じように、「為替って良く分からないし、自分には関係ない」と思っている人も多いでしょう。
しかし、為替を意識し対策しなければ、気づかないうちに生活が苦しくなってしまうかもしれません。
為替を意識するのとしないのでは、未来の生活が大きく変わります。
そこで今回の記事では、今まさに進行している円安について解説します。
2022年4月時点の円安になっている理由
- アメリカの利上げに伴って日米金利差が拡大しているから
- 有事のドル買いが起こっているから
- 「日米の実質金利の差が縮小する」と市場が予想しているから
円安のメリット
- 輸出で儲かる
- 外国からの旅行者が増えやすくなる
- 外貨建ての収入や資産額が増える
円安のデメリット
- 輸入品の価格が高くなる
- 海外旅行のコストが高くなる
- 海外資産の購入コストが高くなる
円安から資産と生活を守るために必要なこと
- 外貨建ての資産を持つ
以下の図解を見てから記事を読み進めると理解しやすくなるので、参考にしてください。
▼図解:悪い円安 生活を直撃?
目次
解説動画:【6年ぶり】警告!貯金オンリーの人が知っておくべき「円安の現状」
このブログの内容は下記の動画でも解説しています!
2022年4月時点の円安になっている理由
なぜ2022年4月現在、円安になっているのでしょうか。
NHKのネットニュースに、為替に関する記事が掲載されていました。
この記事から、今の円安の原因は以下の2つと読み取れます。
- ①アメリカの利上げに伴う日米金利差の拡大
- ②有事のドル買い
円安の原因①:アメリカの利上げに伴う日米金利差の拡大
NHKのネットニュースには、以下のような記載があります。
アメリカのFRB=連邦準備制度理事会による利上げのペースが速まるとの見方から円を売ってドルを買う動きが強まりました。
NHKニュース「円相場 一時1ドル=121円台に値下がり 6年1か月ぶりの円安水準」より
上記の記載におけるキーワードは、利上げです。
2022年3月3日、アメリカの中央銀行にあたるFRBのパウエル議長は、ゼロ金利政策を解除する方針を示しました。
そして、現在0%の金利を計7回にわたり0.25%ずつ上げると言及したのです。
あひるくんは、以下の2つだったらどちらにお金を預けたい?
- 預金金利が0.02%のメガバンク
- 預金金利が1.0%のリベ大銀行
皆さんも当然、金利の高いリベ大銀行に預けたいと思うはずです。
そして、メガバンクに預金している人の中には「リベ大銀行のほうが多くの利息をもらえるから、解約してリベ大銀行に預けよう」と考える人もいるでしょう。
今のドルと円においても上記と同じことが起きており、「高い金利がつくドルの方が、ほとんど金利がつかない円よりも良い」と考える人が、円を売ってドルを買っているのです。
アメリカの利上げのペースは、0.25% × 7回程度と見込まれています。
しかし、1度に0.5%引き上げるかもしれませんし、7回以上引き上げを行うかもしれません。
もし利上げのペースが速まり、回数が多くなれば、さらに「高金利通貨としてのドル」の魅力は高まります。
皆さんの中には「日本も利上げしたら、金利の差は広がらないんじゃないの?」と思う人もいるかもしれません。
しかし現状では、残念ながら日本銀行(日銀)は利上げする予定はないようです。
NHKのニュース記事には、以下のように記載されています。
円安が進んでいる背景には日銀が大規模な金融緩和策を維持する一方、先週、利上げに踏み切ったFRBがさらに利上げのペースを速めることで、日本とアメリカの間の金利差が一段と拡大すると見られていることがあります。
NHKニュース「円相場 一時1ドル=121円台に値下がり 6年1か月ぶりの円安水準」より
円安の原因②:有事のドル買い
さらにNHKのニュース記事を見ていきましょう。
市場関係者は「ウクライナ情勢を背景に基軸通貨であるドルが買われやすい状況が続いていることも円安につながっている」と話しています。
NHKニュース「円相場 一時1ドル=121円台に値下がり 6年1か月ぶりの円安水準」より
相場参加者は、戦争や大災害といった非常事態(=有事)が起こると「売り買いがしやすく信頼性の高いドルを買っておこう」と考える傾向にあります。
なぜなら、有事では為替がどう変動するか分からないからです。
この傾向は「有事のドル買い」という相場格言でも示されています。
円安の原因③:「日米の実質金利の差が縮小する」と市場が予想しているから
ここまで、NHKのネットニュースから円安の原因を2つ読み取ってきました。
- ①アメリカの利上げに伴う日米金利差の拡大
- ②有事のドル買い
しかし、上記にある円安の原因には疑問も残ります。
もし、金利差が円安の原因の1つなら、ドルよりはるかに高金利の通貨では、もっと円安が進んでいるはずです。
- トルコリラ(トルコの通貨)
→ 政策金利:14%
- ブラジルレアル(ブラジルの通貨)
→ 政策金利:11.75%
※2022年4月現在の政策金利
では実際、上記の通貨の為替はどうなっているでしょうか。
トルコリラの為替レートは以下の通りです。
▼為替レート(トルコリラ/円)
- 2013年:1トルコリラ = 約50円
- 2022年:1トルコリラ = 約10円
円の価値が上がっているから「円高」だね!
ブラジルレアルにおいても、トルコリラと同様に円高トレンドです。
▼為替レート(ブラジルレアル/円)
皆さんの中には「なんでトルコリラやブラジルレアルは金利が高いのに、円高になっているの?」と疑問に思う人も多いでしょう。
その疑問を解くカギの1つがインフレ率です。
▼図解でわかるインフレとデフレ
仮にトルコリラを買って預金し、14%の利息を受け取ったとしても、毎年14%物価が上がれば実質的に意味はありません。
なぜなら、皆さんの「モノを買う力」は、今年も来年も同じだからです。
政策金利とインフレ率が同じならまだしも、トルコのインフレ率は20%~50%です。
これでは、物価が上がるペースの方が早いので、通貨は文字通り「紙切れ」になっていきます。
つまり、長期的な観点で大切なのは、名目金利ではなく実質金利なのです。
- 名目金利:預金金利といった見かけ上の金利
- 実質金利:名目金利からインフレ率を引いたもの
例えば、 名目金利が2.0%、インフレ率が1.2%の場合の実質金利は、「2.0% - 1.2% = 0.8%」になります。
為替レートを考える上では、実質金利が非常に重要となります。
なぜなら、実質金利の高い通貨が買われて、実質金利の低い通貨が売られる傾向にあるからです。
ここで一つのグラフを見てみましょう。
このグラフは、以下の2つを並べたグラフです。
日米の為替レート
→ 濃い緑色の線(右軸)
日米の実質短期金利差
→ 薄い緑色の線(左軸)
- 線が0より上にある時:アメリカの実質金利の方が高い
- 線が0より下にある時:日本の実質金利の方が高い
ではまず、1998年頃のグラフを見てみましょう。
1998年頃は、アメリカの実質金利が6ポイント高くなっています。
この場合、円預金よりもドル預金の方が実質的に有利となるため、多くの人が円を売ってドルを買います。
そのため、円の価値が下がり、円安になります。
次に、2010年頃のグラフを見てみましょう。
2010年頃は、日本の実質金利が4ポイント高くなっています。
この場合、ドル預金よりも円預金の方が実質的に有利となるため、多くの人がドルを売って円を買います。
そのため、円の価値が上がり、円高になります。
上記のように日米の実質金利差は、円とドルの為替レートに大きな影響を与えてきたのです。
では、今の状況はどうでしょうか。
日本の方が実質金利が6ポイント高いにも関わらず、買われているのはドルです。
今までのセオリーと違い、「円安」に振れています。
- 今の為替レートに不具合が起きている
- 実質金利差が実態と合っていない
結論から言うと、実質金利差が実態と合っていないのが原因とリベ大は考えています。
実質金利の計算式は「名目金利 - インフレ率」というのは、先ほど解説した通りです。
では、今の日米の実質金利を表で比べてみましょう。
日本 | アメリカ | 金利差 | |
名目金利 | 0.0% | 0.5% | |
インフレ率 | 0.5% | 7.0% | |
実質金利 | -0.5% | -6.5% | -6.0% |
しかし今後、以下のように変われば、実質金利はアメリカの方が高くなります。
日本 | アメリカ | 金利差 | |
名目金利 | 0.0% | 2.5% | |
インフレ率 | 1.5% | 2.5% | |
実質金利 | -1.5% | 0% | 1.5% |
(※上記の数字は、すべて解説上の架空の数字です。)
- ①アメリカの名目金利
→ 利上げで0.5%から2.5%にアップ
- ②アメリカのインフレ率
→ 7.0%から2.5%にダウン
- ③日本のインフレ率
→ 0.5%から1.5%にアップ
上記のような未来になり、実質金利がアメリカの方が高くなるなら、今ドルが買われるのも納得できるのではないでしょうか?
つまり、ドルと円の為替レートが大きく動いている本当の背景は「米国の金利上昇」や「有事のドル買い」だけでなく、市場参加者が以下の未来を予想していることにあるとリベ大は考えています。
→ アメリカの実質金利は上昇し、日本の実質金利は低下する。
上記のシナリオ通りになるのであれば、6年ぶりの円安も説明がつきます。
このように、為替はとても多くの要素が複雑に絡み合って決まるため誰にも読めませんし、今回の解説内容が真実かも分かりません。
しかし、長期的な時代の変化に対応しないと財産を守れないのは事実です。
そこで記事の後半では、円安から資産と生活を守るために必要なことを解説していきます。
円安のメリット・デメリット
では、もし先ほどのシナリオが現実化して「円安トレンド」が続いた場合、どうなるのでしょうか。
メリットとデメリットを簡単に押さえていきましょう。
円安のメリット
では、まずは円安のメリットからです。
- ①輸出で儲かる
- ②外国からの旅行者が増えやすくなる
- ③外貨建ての収入や資産額が増える
円安のメリット①:輸出で儲かる
円安のメリット1つ目は、輸出で儲かることです。
なぜ輸出で儲かるかというと、同じ価格の商品でも円安の時に売った方が、円ベースでの売上は大きくなるからです。
価格が100ドルの商品の場合
- 1ドル80円の時
→ 売上金:8,000円(100ドル × 80円)
- 1ドル120円の時
→ 売上金:12,000円(100ドル × 120円)
1ドル120円の時の方が4,000円売り上げが多くなる
円安のメリット②:外国からの旅行者が増えやすくなる
円安のメリット2つ目は、外国からの旅行者が増えやすくなることです。
皆さんの中にも「東南アジアは物価が安いから、旅行したらお得に買い物ができる」と思ったことのある人もいるのではないでしょうか。
円安になると、日本も世界中の人から「物価が安くてお得な国」と考えられる立場になるのです。
100ドルで使える金額
- 1ドル80円の場合
→ 日本で使える金額:8,000円(100ドル × 80円)
- 1ドル120円の場合
→ 日本で使える金額:12,000円(100ドル × 120円)
1ドル120円の方が4,000円多く使える
円安のメリット③:外貨建ての収入や資産額が増える
円安のメリット3つ目は、外貨建ての収入や資産額が増えることです。
リベ大で学び投資を始めた人は、全世界株式やS&P500連動ファンド、米国の高配当株式に投資している人が多いでしょう。
そのようなドル建ての株式やファンドを持っている人は、今の円安で配当金や利息、時価が増え、メリットを実感しているはずです。
円安のデメリット
一方、円安のデメリットは以下の通りとなります。
- ①輸入品の価格が高くなる
- ②海外旅行のコストが高くなる
- ③海外資産の購入コストが高くなる
円安のデメリット①:輸入品の価格が高くなる
円安のデメリット1つ目は、輸入品の価格が高くなることです。
輸入品が値上がりすると、皆さんの生活コストが上がる可能性が高くなります。
そうなると、「生活水準は上げていないのに、生活費が年間15万円も上がってしまった」ということになりかねません。
円安のデメリット②:海外旅行のコストが高くなる
円安のデメリット2つ目は、海外旅行のコストが高くなることです。
円安になると、海外の人は日本に来やすくなりますが、日本人は海外に行きにくくなります。
今はコロナウィルスの影響で旅行需要は小さいです。
しかし、状況が落ち着き、海外旅行の需要が増えた時に、円安による海外旅行の値上がりに驚くかもしれません。
円安のデメリット③:海外資産の購入コストが高くなる
円安のデメリット3つ目は、海外資産の購入コストが高くなることです。
例えば、1株100円で買えていた株が、130円出さないと買えなくなります。
以上、円安のメリットとデメリットを見てきましたが、今の円安はデメリットの方が大きいとリベ大は考えています。
その主な理由は、以下の2つです。